オランダが生んだ天才バロック画家、ヨハネス・フェルメール。彼の代表作の一つ『真珠の耳飾りの少女』は、筆者にとっても思い出深い作品だ。幼い頃、筆者は父親の書斎で遊ぶのが大好きだった。芸大出身の父の書斎はアートの書籍で溢れ返っており、バロック調のデスクの横には父のお気に入りの『真珠の耳飾りの少女』の複製画が飾ってあった。ある日、筆者は「絵の中の少女は真珠よりルビーのほうが似合うはず!」という衝動に駆られ、真珠の耳飾りを真っ赤な油性ペンで塗り潰した。その夜、ほろ酔いで帰宅した父は、母にこっぴどく叱られて号泣している筆者の頭をそっと撫でて微笑んだ。父はご機嫌な様子で筆者に語りかけていたが、何と言われたのか良く覚えていない。ただ、とても優しい笑顔だった。

アートをこよなく愛した父であったが、もし「NFTアート」を知ったらどんな感想を持つだろうか。21世紀の現在、アート投資にもデジタル化の波が押し寄せている。近年はクリスティーズやサザビーズといった老舗オークションハウスもデジタル化の推進に本腰を入れており、つい最近ではデジタルコラージュ作品を「NFT(非代替性トークン)」として約75億円で落札したというニュースも伝えられている。今回はアート投資の新潮流として注目される「NFT(Non-Fungible Token)」についてリポートしたい。

「唯一無二」のデジタル資産 NFTとは?

(画像=Prestige046 / pixta, ZUU online)

近年、ビットコインなど仮想通貨の基盤技術として関心を集めているブロックチェーン。文字通り、取引データをブロックにまとめて検証し、鎖(チェーン)のようにつないで保管する技術だ。優れた改ざん耐性や管理の分散性の高さから、物流や金融など多様な分野での活用が広がっている。