将来の売買の権利を購入するオプション取引。FXでもオプション取引が可能だ。オプション取引をすれば、損失を抑えつつ、大きなリターンを狙うことができる。オプションFXの仕組みについて事例をまじえながらわかりやすく解説し、オプション取引の中でもメジャーなバイナリーオプションも紹介する。

FXにおける「オプション取引」とは

FX,オプション取引
(画像=PIXTA)

オプション取引とは、「原資産を将来の期日に、特定の価格で買う/売る権利を売買する取引」のことだ。原資産には、作物や貴金属などの商品、株式、通貨などさまざまなものがある。FXの場合、当然対象となるのは「通貨」だ。

抽象的な説明だけでは、わかりにくいと感じる人がほとんどだろう。次のようなケースを想定してみてほしい。

現在1ドル=100円で、Aさんは「半年後に1ドル=100円で100ドルを買う権利」を権利料400円で買った。半年後に円安になり、1ドル=110円になった場合、Aさんは権利を行使すれば、1ドル=100円で100ドルが手に入る。値上がり分の1,000円から、権利料400円を差し引いた600円分、得をしたことになる。

半年後に円高になり、1ドル=90円になった場合、Aさんは権利を破棄すれば、権利料400円だけの損失ですむ。通常のFX取引なら、1ドル=100円から1ドル=90円になった場合、100ドルだと1,000円分損をすることになる。しかし、オプション取引なら、権利料の分しか損失が生じない。

逆に「売る権利」を購入した場合は、円安になると権利を破棄してプレミアム分損をすることになり、円高になると権利を行使して得をすることができる。

オプション取引の大きなメリットは、損失が権利料に限定されることだ。一方で、権利行使できた場合の利益は無限大だ。

オプション取引で知っておくべき4項目

オプション取引で重要となるのは、「原資産」「コールorプット」「期日」「権利行使価格」の4項目だ。それぞれの意味をわかりやすく解説していこう。

●原資産

取引する資産を指す。FXにおけるオプション取引では、「ドル/円」など通貨が原資産となる。FX取引での為替レートと同じく、オプションFXにおいても原資産価格(スポット価格)は変動する。原資産価格が権利行使価格を上回るか下回るかで、権利の行使・破棄が決められる。

●コールorプット

「買う権利」をコールオプション、「売る権利」をプットオプションと呼ぶ。円安になると予想するならコールオプションを買い、円高になると予想するならプットオプションを買うことになる。

●期日

期日とは、購入した権利を保有できる期限のことだ。期日を迎えた場合、自動的に権利が行使もしくは破棄される。破棄された場合、権利料の分だけ損失が確定する。

●権利行使価格

権利行使価格とは、オプションを売るもしくは買うことのできる特定の価格のことだ。オプション購入時に決めておく。

オプション取引の種類

オプション取引にはいくつかの種類がある。まず、権利行使のタイミングによって、「アメリカンタイプ」と「ヨーロピアンタイプ」がある。また、基本的なオプションか条件が付加されたオプションかという点で「プレーンオプション」と「エキゾチックオプション」に分けられる。

続いて、代表的な4種類のオプション取引の意味を解説する。

●アメリカンタイプ

期日が来るまでの間、いつでも権利行使が可能なオプション。

●ヨーロピアンタイプ

期日にのみ権利行使が可能なオプション。

●プレーンオプション

コールやプットの取引を行う通常のオプション。バニラオプションと呼ばれることもある。

●エキゾチックオプション

プレーンオプションに特殊な条件をつけたオプション。例えば、次のようなオプションがある。

・バイナリーオプション……期日に原資産価格が権利行使価格に達した場合利益を得られる
・レンジオプション……期日に原資産価格が特定の価格帯に収まった場合、利益を得られる
・ワンタッチオプション……期日が来るまでの間に、一度でも原資産価格が権利行使価格に達したら利益を得られる
・ノータッチオプション……期日が来るまでの間に、一度も原資産価格が権利行使価格に達しなかったら利益を得られる
・ノックアウトオプション……為替レートが一定水準に達したら権利が消滅する
・ノックインオプション……為替レートが一定水準に達したら権利が発生する

オプション取引における「プレミアム」とは

オプション取引では、一定の権利料を支払って、「売る権利」「買う権利」を購入する。この権利料のことを、「プレミアム」と呼ぶ。プレミアムはいわば、オプションそのものの価値とも言えるだろう。そのため、オプション価格、オプション料と呼ばれることもある。

プレミアムは、「本質的価値」と「時間的価値」で構成される。

●本質的価値

本質的価値とは、権利行使した場合の損益を指す。具体的には、原資産価格と権利行使価格との差額だ。

本質的価値は、現在の状況に応じて、「イン・ザ・マネー」「アット・ザ・マネー」「アウト・オブ・ザ・マネー」の3つで表現される。

イン・ザ・マネーとは、権利を行使すると利益が出る、本質的価値がプラスになっている状態のことだ。差額が大きいほどプレミアムは上昇する。

アット・ザ・マネーとは、権利を行使すると損益が0になる状態のことだ。本質的価値もゼロとなる。

アウト・オブ・ザ・マネーとは、権利を行使すると損失が出る、本質的価値がマイナスになっている状態のことだ。差額が大きいほどプレミアムは下落する。

コールオプションかプットオプションかによって、本質的価値の計算式は次のように変わる。

原資産価格 - 権利行使価格 = コールオプションの本質的価値
権利行使価格 - 原資産価格 = プットオプションの本質的価値

●時間的価値

時間的価値とは、将来の価格への期待を表す価値のことだ。時間的価値は「ボラティリティ」「残存期間」「金利」で構成される。

ボラティリティとは、値上がり・値下がりなどの価格変動率のことだ。過去データから価格変動率を平均化して算出するヒストリカル・ボラティリティ(HV)と、実際のプレミアムから逆算するインプライド・ボラティリティ(IV)の2種類がある。

ボラティリティが高く、値動きの幅が大きいほど期待が高まり、プレミアムは上昇する。ボラティリティが低く、値動きの幅が小さいほど期待が薄れ、プレミアムは下落する。

残存期間とは、期日までの期間のことをいう。期日までの期間が長いほどプレミアムは上昇する。期日までの期間が短いほどプレミアムは下落する。

金利も原資産価格の変動に影響する。コールオプションでは、原資産の金利が上がるとプレミアムも上昇する。プットオプションでは、原資産の金利が上がるとプレミアムも下落する。

よく耳にする「バイナリーオプション」とは?

オプション取引の中でもメジャーなのがバイナリーオプションだ。耳にしたことがある人も多いのではないだろうか?

続いて、バイナリーオプションの仕組みや注意点、バイナリーオプションができるFX会社を紹介する。

●FXにおけるオプション取引の一つ

バイナリーオプションは、先ほど説明したエキゾチックオプションの一つだ。通常のオプション取引に、特定の条件を付加したオプションとなる。

「binary(バイナリー)」とは、二進法のことで、0か1かの二者択一を表す。

バイナリーオプションでは、円安になるか円高になるかを二者択一で予想し、オプションを購入する。レート(権利行使価格)を選び、期日に達したとき、選んだレートを上回るか下回るかで、あらかじめ定められたペイアウトを受け取れるかどうかが決まる。

予想通りになればペイアウトを受け取れる。予想が外れたら、オプションの購入金額の分だけ損をする。

●バイナリーオプション取引のトラブルに注意

最近、SNSをきっかけとしたバイナリーオプション取引のトラブルが相次いでいる。

手口はこうだ。SNSを通じて知り合った相手に、「儲かる」とバイナリーオプションをすすめられる。紹介を受け、海外業者と取引を始め、資金を入金する。しかし、入金した資金やバイナリーオプションで得られた利益を出金しようとしたところ、業者が応じてくれないという流れだ。

海外の無登録業者の場合、このようなトラブルになる可能性がある。リスクを理解したうえでバイナリーオプションを始めるとともに、きちんと登録業者で取引することが大切だ。

●バイナリーオプションができるFX会社は?

続いて、バイナリーオプションができるFX会社を3社紹介する。

1社目はGMOクリック証券だ。為替レートの上下を予測する最もシンプルでオーソドックスなバイナリーオプションを取り扱っている。1枚当たり約50~999円と少額から取引を始められるのも初心者にとって魅力的だ。取引ツールの使いやすさにも定評があり、スキマ時間で取引できる。またデモ取引も用意されている。

2社目はIG証券だ。日本で最初にバイナリーオプションの提供を始めた会社でもある。銘柄は1万7,000以上あり、為替以外の銘柄も豊富で、主要通貨ペア、世界の株価指数、金・銀先物、原油先物などから選べる。バイナリーオプションの経験値を積んだら挑戦してみてもいいだろう。

3社目はみんなのFXだ。上下を予測するシンプルなラダー取引と、目標レンジ内に収まるかどうかを予測するレンジ取引という2つの取引に対応している。約50~990円と少額から取引を始めることができ、最短2分、最長120分で判定時間となる。取引対象は「米ドル/円」「ユーロ/円」「ポンド/円」「ユーロ/ドル」の主要通貨ペアだ。

初めてバイナリーオプションをするならGMOクリック証券が安心だろう。ラダー取引だけでなくレンジ取引にも興味があるなら、みんなのFXもいいかもしれない。経験を積み、さまざまな投資対象から選びたくなったら、IG証券で口座開設するといいだろう。

オプション取引の前にしっかりと勉強を

オプション取引は損失を抑えてリターンを狙える優れた投資方法だが、仕組みが複雑だ。よく理解しないまま資金を投じると、一瞬で損を出してしまうリスクがある。また、仕組みが複雑なことを利用した詐欺もある。このような点を踏まえ、しっかり勉強して仕組みを理解したうえで挑戦するようにしたい。