株取引で得た利益にかかる税金を、少しでも減らす方法はあるのだろうか。株式投資を行うなら、利益が出た際にただ喜ぶだけでなく「節税」についての理解も深めておきたい。株式投資は、損益通算やNISA、iDeCoなどの税制優遇制度を活用した取引によって売却益の節税が可能で、所得金額によっては確定申告を行うことで還付が受けられる可能性もある。本記事では、投資で得た利益を少しでも多く残すための節税方法を3つ紹介する。

目次

  1. 節税のため、株式投資で利益が出たらまず行いたいこと
  2. 株式投資の税金を抑える方法
  3. 株式投資における税還付のための確定申告が必要なケースとは
  4. 株式投資の節税に役立つ損益通算とは
  5. 株式の損益通算で節税するためのテクニック
  6. 利益が非課税になるiDeCoとNISA制度を活用した節税
  7. まとめ:損益通算と優遇制度活用で賢い節税を
  8. さらに情報を知りたい方へ

節税のため、株式投資で利益が出たらまず行いたいこと

株式投資における節税とは。投資で得た利益を少しでも残す3つの方法
(画像=KMPZZZ/stock.adobe.com)

株式投資を成功させるには、利益を上げるのと同じくらい「節税」が重要だ。

株式投資では原則として、配当金や売却益に対して20%(2037年までは復興特別所得税がかかるため20.315%)の税金が課される。たとえば100万円の投資から10万円の値上がり益を得たとすると、2万円(10万円×20%)の税金が引かれ、実際に受け取れる利益は8万円となる。

参考:株式・配当・利子と税 国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_5.htm

このように、税金は正しく納める必要があるが、一方で利益を減少させてしまうものでもある。利益を効果的に積み上げて投資を成功させるには、正しく納税するための節税による税額圧縮が重要なのだ。

株式投資で得た配当金は、原則として源泉徴収される。また、特定口座(源泉徴収あり)で投資をしている場合は、売却益にも源泉徴収が行われる。そのため、株式投資での節税を実現するには、多くの場合確定申告により納めすぎた税金の還付を受ける必要がある。ここではまず、確定申告に備えて確認しておくべき事項を紹介する。

年内のおおよその利益(売却益や配当金)を把握する

投資にかかる税金は、投資から得た利益額をもとに計算される。そのため確定申告をするなら、まず1月~12月の間に得た大まかな損益額を把握する必要がある。そのうえで、自分が以下のケースに該当するかどうか確認しよう。

・源泉徴収のない口座で売却損が発生した取引がある
・複数の証券会社で口座を保有し投資を行っている
・給与収入が2,000万円より少なく、給与や年金以外(投資や副業)の1年間の所得が20万円以下である

上記いずれかの条件に当てはまる場合、確定申告をすることで納めすぎた税金が戻る可能性がある。

「損益通算」が可能か調べる

節税を目指すなら知っておきたい制度に「損益通算」がある。損益通算とは、同一年分の利益と損失を相殺することで課税所得を減らし、最終的な税額を減少させられる制度だ。

源泉徴収のない複数の口座で取引を行っている場合、片方で出た利益をもう片方の損失で相殺できる可能性があるため、忘れずにチェックしよう。

「繰越控除」が可能か調べる

ある年に損益通算を行って、なお利益と相殺しきれない損失が残っていた場合、翌年以降に損失を繰り越して利益の相殺にあてられる。この制度が繰越控除だ。

繰り越すべき損失が発生した年、あるいは前年から繰り越された損失を使い切れなかった年にそれぞれ確定申告を行うことで、損失を最大で3年間持ち越すことが可能だ。損益通算と繰越控除の具体的な手順については後段で解説する。

株式投資の税金を抑える方法

株式投資の税金を抑えるなら、いくつかの節税方法をうまく活用することが重要だ。ここでは、節税を実現するための3つの方法を解説する。

利益が出ている 利益が出ていない
確定申告 20万円以下で源泉徴収されている場合は確定申告 確定申告で損益通算
iDeCo 1. 掛金が全額所得控除される
2. 運用益を非課税で再投資できる
3. 受取時に「公的年金等控除」または「退職所得控除」を受けられる
確定申告で損益通算
新NISA 1. 総額1800万円まで非課税
2. 積立投資枠は年間120万円まで
3. 成長投資枠は年間240万円まで
4. 配当金と売却益は上記枠内であれば非課税
確定申告で損益通算

年間利益を20万円以下に抑える

1つめの節税方法は、年間の利益を20万円以下に抑えることだ。国は、給与収入が2,000万円より少なく、投資や副業の1年間の所得が合計20万円以下である場合、所得税の申告が不要と定めている。つまり投資などによる所得を年間20万円以下に抑えると、その利益については所得税を納める必要がなくなるのだ。

参考:国税庁|確定申告が必要な方

所得課税額の計算は、毎年1月1日~12月31日に得た所得をもとに行われる。もし、所得額が20万円を超えるギリギリのラインなら、株式の売却を翌年に持ち越すなどの方法で所得額を抑えることも検討しよう。

なお所得額が20万円以下に収まっていても、利益に対する税金は源泉徴収によりすでに引かれている場合がある。このケースにおいて確定申告は法的な義務ではないが、申告によって税金の還付を受けなければ節税にはならない点に注意しよう。

損益通算で相殺し課税所得を減らす

2つめの節税方法は、損益通算によって課税所得を減らすことだ。株式投資にかかる税金は、「課税所得(売却益および配当金)×20%」で計算される(2037年末までは復興特別所得税が上乗せされ20.315%)。この課税所得を減らすことで節税を狙うのが、損益通算である。

・損益通算とは
損益通算とは、同一年分の利益と損失を相殺することだ。たとえば、銘柄Aと銘柄Bにそれぞれ100万円ずつ投資をしたとする。銘柄Aは10万円の利益、銘柄Bは5万円の損失を出して売却したとしよう。この場合、損益通算の有無によって税額に以下の違いが生じる。

▽損益通算の有無による税額の違い

税額(計算式)
損益通算なし2万円(10万円×20%)
損益通算あり1万円((10万円-5万円)×20%)
※筆者作成

損益通算をしなかった場合、利益の10万円すべてに課税されるため税額は2万円になる。一方、損益通算をすると利益と損失が相殺されるため、税額は1万円に減る。複数の銘柄に投資を行っているなら、年間の損益をしっかりと把握し節税に繋げよう。

なお、同一の特定口座(源泉徴収あり)内での取引は自動的に損益通算が行われた上で源泉徴収されるため、その口座以外に投資や副業の収入がない場合は確定申告の必要はない。一方、特定口座(源泉徴収なし)および一般口座内の取引や、複数の口座間での取引を損益通算するためには、確定申告が必要だ。

iDeCoとNISAを活用する

投資における節税方法の3つめは、非課税投資制度であるiDeCoやNISAの活用だ。どちらも、長期での資産運用を目的として国が推し進めている制度で、税制の優遇を受けながら投資信託や株式などによる資産運用ができる。老後の資金作りなど長期での資産形成を目指すなら、iDeCoやNISAの利用をぜひ検討したい。

なお、これらの制度は運用益が非課税となるため、損益を他の口座と通算できない点に注意しよう。iDeCoおよびNISAの詳しい仕様については後述する。

株式投資における税還付のための確定申告が必要なケースとは

ここまで紹介したとおり、株式投資で節税を行うためには、確定申告によって納めすぎた税金の還付を受けなければいけない場合がある。一例として、還付を受けられる3つのケースを確認しよう。

複数の特定口座で投資をしている

いくつかの証券会社の口座で取引を行っている場合、口座をまたいだ損益通算は自動では行われない。複数の証券会社で取引をしている場合は、損益通算ができる取引がないかを確認し、確定申告による税金の還付を目指そう。

給与収入が2,000万円より少なく投資や副業の1年間の所得合計が20万円以下

先述のとおり、給与収入が2,000万円より少なく投資や副業の1年間の所得合計が20万円以下の場合、納税の必要はないとされる。しかし、特定口座(源泉徴収あり)を選択していると、所得合計額に限らず売却益に対する源泉徴収が行われる。その場合は、確定申告により納めた税金の返還を受けよう。

納税者本人の合計所得金額が48万円以下

税金は所得額から各種控除を抜いて、税率を掛けて計算される。そのため、所得額が控除内に収まる場合は納税の必要はない。代表的な控除の1つが、基礎控除だ。基礎控除とはすべての納税者を対象に、合計所得金額から48万円を無条件で差し引くものである。そのため、株式投資で得た利益を含む所得合計額が48万円以下の場合、納税は不要となる。

しかしこの場合も特定口座(源泉徴収あり)で取引を行うと、源泉徴収により売却益から自動的に税金が引かれてしまう。所得合計額が48万円以下なら、ぜひ確定申告による税金の還付を受けよう。

株式投資の節税に役立つ損益通算とは

ここまで紹介した3つの節税対策のうち、まずは損益通算について詳しく解説する。複数の口座で投資をしているなら損益通算による節税ができるケースも多いため、制度概要をしっかりと確認し投資に役立てて欲しい。

損益通算と繰越控除

ここまで述べたとおり、損益通算を行うことで同一年分の利益と損失を相殺できる。この損益通算の制度を無駄なく活用するなら、繰越控除についても知っておきたいポイントだ。繰越控除とは、その年に控除しきれなかった損失を最長3年に渡って繰り越し、利益と通算できることをいう。

たとえばある年に銘柄Aから50万円の売却益が出て、別の証券会社で管理している銘柄Bからは80万円の損失が出たとしよう。この場合、50万円と80万円を損益通算することで、納税の必要がなくなる。

ここで繰越控除を行うと、相殺しきれなかった30万円分の損失を、次年度以降(3年先まで)の損益通算に活用できるのだ。損失がある年に集中して発生した場合、繰越控除をぜひ活用したい。

繰越控除をするには確定申告が必要である。ここで注意すべき点は、損失が出た年にだけ確定申告をすればいいわけではない点だ。繰越控除を希望するなら、最大で翌3年間にわたって確定申告が必要なことは覚えておこう。

損益通算できる投資の種類

損益通算は、すべての金融商品同士でできるわけではない。損益通算ができる投資の種類は、以下の2つのグループに分けられる。

▽損益通算ができる投資の種類

グループ金融商品名対象となる損益
株式・投資信託・債券日本株
外国株式
REIT(不動産投資信託)
ETF(上場投資信託)
譲渡損益
分配金
配当金
信用取引決済損益
配当落調整金
株式型投資信託譲渡損益
分配金
償還差損益
公社債投資信託債券譲渡損益
分配金
利金
償還差益金
先物・オプション・FX先物・オプション
くりっく株365
決済損益
FX(外国為替証拠金取引)決済損益
スワップ金利
※筆者作成

株式投資から発生した譲渡損益や配当金と損益通算できるのは、投資信託や債券への投資からの譲渡損益や配当金、分配金だ。先物取引やオプション取引、FXの譲渡損益とは損益通算ができないことは知っておこう。

損益通算と繰越控除の順番

株式投資の損益通算と繰越控除では、利益と損失を相殺する順番が決まっている。まずはその年に発生した譲渡損と譲渡益を相殺され、その後は譲渡損が残った場合と譲渡益が残った場合によって、以下の順番で損益通算が行われる。

▽譲渡損が残った場合
1. その年に発生した配当金や分配金と損益通算される
2. それでも譲渡損が残った場合、繰越控除により次年以降の利益と相殺する

▽譲渡益が残った場合
1. 繰り越した損失がある場合、古い年のものから損益通算する
2. 繰り越した損失がさらに残っている場合には、配当金や分配金とも相殺する

また先述のとおり繰越控除の期限は3年であるため、たとえば今年に一部の証券口座で利益が出ており、さらに3年前から繰り越している損失があったとしても、今年だけで見た収益が差し引きマイナスであれば、3年前の損失を通算する機会は失われることになる。

株式の損益通算で節税するためのテクニック

株式の損益通算で節税するためのテクニック
  1. 売却しない、またはつなぎ売りを活用する
  2. 益出し
  3. 損出し

損益通算は節税に有効だが、相殺する譲渡益と譲渡損が一定の期間内に発生しなければならないという条件がある。繰越控除で損失を活かせる猶予は3年だけなのだ。この制限の中で損益通算を最大限活用するには、いくつかのテクニックを知っておく必要があるだろう。

売却しない、またはつなぎ売りを活用する

テクニックの1つめは、株式を売却しないという選択肢を持つことだ。株式投資で譲渡益に対する課税が確定するのは、売却を行い譲渡益が確定したときである。そのため今すぐ現金化する必要がない銘柄や、大きな価格の下落が考えづらい銘柄は、むやみに売却せずに損益通算に有利なタイミングを計ってもよいだろう。

ただし、株価が下降トレンドに転じる可能性がある時は、こうした売却するか否かの判断が難しい。もし今後価格が下がるなら、現時点で利益を確定しておきたいからだ。そのような場合に有効なのが、「つなぎ売り」の活用である。

つなぎ売りとは、現物株式で保有している同銘柄を信用取引で売り建てることをいう。売建後に株価が下落した場合には、買い戻しにより差額分の利益を得ることで、保有する現物株の評価損をカバーできる。一方、売立後に株価が上昇したときには、保有している現物株を現渡することで損失を相殺できる。

つなぎ売りが節税に有効なのは、空売りすることで保有する現物を売却することなく同様の効果を得られるからだ。売却により譲渡益が確定しないため、課税のタイミングを先送りできるのだ。損失の発生時まで利益確定を延ばすことで、損益通算のチャンスを増やせるだろう。

・つなぎ売りをするには信用口座が必要。その他注意点も。

つなぎ売りをするには、特定口座や一般口座といった証券総合口座のほかに、信用取引口座の開設が必要だ。口座の開設には、数日~1週間程度かかることもある。つなぎ売りの活用を検討しているなら、事前に口座開設手続きを進めておこう。また銘柄によっては、空売りの対象外となっているものがあるため注意が必要だ。

また信用取引には取引手数料がかかる点にも注意しよう。つなぎ売りを活用する際には、手数料額と節税額を照らし合わせ、効果があるかどうか検討すべきだろう。

その他、信用取引は多くの点で現物取引とは仕組みが異なり、代表的な違いとしては証拠金の預け入れにより手持ちの資金以上の取引ができるレバレッジ取引が可能であることが挙げられる。その分、損失のリスクも大きいものだ。つなぎ売りによる節税を成功させるには、信用取引の仕組みや特徴をよく理解しておくことが肝心だ。

益出し

損益通算の枠を有効に活用するために、益出しについても知っておこう。益出しとは、現時点で含み益がある銘柄を売却して、利益を確定させることをいう。

益出しが節税に有効なケースは、損益通算するべき多くの損失を抱えている場合だ。特に、繰越控除の期限が切れる3年前の損失が残っている場合には、益出しすることで損益通算の枠を余すことなく使い切ることができる。

・その後の値動きも考慮した売却判断をしよう

益出しをするかどうかは、銘柄のその後の値動きも考えたうえで判断する必要がある。将来的に大きな値上がりが期待できる銘柄の場合、節税額よりも売却しなかった場合に得られたであろう含み益の方が大きくなる可能性があるため、売却を検討する際には銘柄の将来性についても考慮しよう。

損出し

すでに確定した売却益や配当金があり、かつ含み損が発生している銘柄があるなら、損出しも選択肢になる。損出しとは、損益通算のために含み損がある銘柄を売却することをいう。これにより、すでに確定している利益を損益通算し税金額を抑えることができるのだ。

損出しのポイントは、売却した銘柄をすぐに買い戻して、その銘柄への投資を継続することだ。この点が、含み損がある銘柄を売却しその資金を新たな銘柄への投資に回す「損切り」と大きく異なる。

なお特定口座の仕様上、同一営業日に売却と買戻しをすると損失が出たものとみなされないため、買い戻しは翌営業日以降に行う必要がある。どうしても同一営業日に売却と買い戻しをしたいなら、別の特定口座で行うか、信用取引の買い注文を利用する方法もある。

・損出しをするならスケジュールに注意

・損出しをするならスケジュールに注意

損出しは、その年の取引に損失を計上するために行う。そのため、年内に売却が完了するよう手続きを進めることが重要になる。

年内に損失を計上できる期限は、年内最終取引日(2024年は12/29(金))の2営業日前と決まっている。2024年であれば、12/27(水)までに売却の手続きを終わらせなければならない。それを過ぎると、翌年の損失として計上されてしまう点には注意しよう。

利益が非課税になるiDeCoとNISA制度を活用した節税

節税を重視した投資をしたいなら、非課税制度の活用も効果的だ。政府は、少額からの長期資産運用を推進する非課税制度として、NISAとiDeCoを用意している。将来に向けた資産運用を検討しているなら、この2つの制度はぜひ活用したい。

なお、iDeCoやNISAでの投資から得た利益はそもそも非課税のため、先に紹介した損益通算の対象にならない点は知っておこう。

iDeCo

iDeCo(イデコ)は、任意加入の個人型確定拠出年金だ。国民年金の被保険者が加入でき、資金の拠出および運用方法(投資信託や定期預金、元本確保型の保険商品)の決定は、加入者自身で行う。

老後の資産作りを目的とするiDeCoは、拠出金を60歳まで引き出せないなどの条件のもと、以下の3つの税制優遇が設けられている。

【iDeCoで受けられる3つの税制優遇】
1. 掛金が全額所得控除される
2. 運用益を非課税で再投資できる
3. 受取時に「公的年金等控除」または「退職所得控除」を受けられる

拠出時および運用時、受取時に税制優遇を受けられるiDeCoは、節税効果が高く資金効率の良い運用を目指せる制度だ。月々5,000円から1,000円単位で掛け金の設定ができるため、ぜひ資産形成の1つとして活用したい。

なお、拠出上限額は加入区分により以下のように決まっている。掛金額は1年に1回変更可能なため、無理のない範囲で始めてみよう。

▽加入区分別の拠出上限額

区分拠出上限額(月額)
第1号被保険者6万8,000円
第2号被保険者会社に企業年金がない2万3,000円
企業型DCに加入2万円
DBおよび企業型DCに加入1万2,000円
DBにのみ加入
公務員など
第3号被保険者2万3,000円
iDeCo公式サイト|iDeCoの仕組みをもとに筆者作成

・加入するにはiDeCoを取り扱う金融機関で加入申し込みをする
iDeCoに加入するには、iDeCoの取扱がある証券会社や銀行、保険会社などの金融機関で加入の申し込みをする必要がある。金融機関を選ぶ際には、以下のポイントを確認しよう。

・商品のラインナップ
・手数料
・その他サービス(カスタマーサービスや投資情報の充実度など)

iDeCoで運用できる商品は、加入の申し込みをした金融機関で取り扱いがあるものに限られる。商品ラインナップが充実した金融機関を選ぶことで、運用の選択肢を増やすことができるだろう。

また、手数料も金融機関により差がある。せっかく節税をしても、手数料が高ければ効果は半減してしまうため、金融機関を選ぶ際には、手数料もしっかりと確認したい。

2024年から始まる新NISA

一般NISAは、2023年で投資可能期間が終了する。それに伴い、2024年から新しくスタートするのが「新NISA」だ。概要を以下で確認しよう。

▽新NISAの概要

項目内容
口座を開設できる人日本在住の18歳以上の人
非課税対象となる利益成長投資枠:一定の株式・投資信託等
つみたて投資枠:つみたてNISAと同様
開設できる口座数1人1口座
年間非課税投資枠成長投資枠:240万円
つみたて投資枠:120万円
非課税期間無制限
障害の非課税枠1800万円(成長投資枠は1200万円まで)
金融庁のページをもとに筆者作成

新NISAの特徴は、投資枠が2階建構造になっていることだ。1階部分では現状のつみたてNISA、2階部分では一般NISAと同様の非課税投資ができる。新NISAは長期での積立投資の推進を目的とする制度であるため、2階部分の非課税投資枠を利用するには原則として1階部分で投信積立を行っておく必要があることに注意しよう。

なお、すでに一般NISAで株式や投資信託などを保有している場合、非課税期間終了後に新NISAの2階部分へ移管(ロールオーバー)して継続保有できる。ロールオーバーに上限額はないが、102万円を超えた場合には1階部分の20万円が消費される。

また、新NISAの1階部分で投資した投資信託は、非課税期間終了後につみたてNISAへのロールオーバーが可能だ。つみたてNISAに移管することで、税制優遇を受けながらの長期の資産運用が可能になる。

NISA

NISA(ニーサ)は、株式や投資信託などの金融商品への投資から得られる売却益や分配金、配当金といった利益にかかる税金が、一定期間一定投資額まで非課税になる少額投資非課税制度である。iDeCoに比べ税制優遇は少ないが、資金の払出制限などがないため積極的な投資にも対応できる制度になっている。
NISAには、「一般NISA」および「つみたてNISA」、「ジュニアNISA(未成年向け口座)」の3つの口座がある。NISAは1人1口座しか開設できないため、それぞれの特徴を確認し投資目的に合った口座を選ぶことが重要だ。ここでは、成年者向け口座の一般NISAとつみたてNISAについて詳しく見ていこう。

▽一般NISAおよびつみたてNISAの概要

一般NISA つみたてNISA
口座を開設できる人
日本在住の20歳以上の人
非課税対象となる利益 株式・投資信託等への投資から得られる配当金、分配金および売却益 金融庁が定める投資信託への投資から得られる分配金および売却益
開設できる口座 1人1口座(一般NISA、つみたてNISAの併用も不可)
非課税投資枠 新規投資額で毎年120万円まで(5年で最大600万円) 新規投資額で毎年40万円まで(20年間で最大800万円)
非課税期間 最長5年 最長20年
投資可能期間 2023年まで 2042年まで

・一般NISA
一般NISAは、株や投資信託など幅広い金融商品に投資ができる口座だ。非課税期間は最長5年とつみたてNISAよりも短いが、非課税投資枠は毎年120万円と多く設定されている。色々な金融商品に積極的に投資をしたいなら、一般NISAが有力な選択肢となるだろう。

・つみたてNISA
つみたてNISAは、積立による長期での資産形成を目指す口座だ。毎年の非課税投資枠は80万円と少なめだが、非課税機関は20年となっており長期で減税措置を受けられる点が特徴である。 つみたてNISAは、金融庁が長期での積立投資に適していると認めた投資信託の中から運用商品を選べるため、投資初心者でも比較的始めやすい制度となっている。

まとめ:損益通算と優遇制度活用で賢い節税を

株式投資では、売却益や分配金、配当金に20%の税金が課される。効率の良い資産運用を目指すなら、利益の積み上げと併せて節税を行うことが重要だ。

投資で節税をするなら、利益と損失を相殺することで課税所得を減らすことができる損益通算が有効だ。損失と利益を出すタイミングを上手に調整し、無駄のない損益通算を実現しよう。また、iDeCoやNISAといった税制優遇制度の活用も、節税に効果的である。損益通算とiDeCo・NISAを使い分け、資金効率の良い資産運用を目指そう。

さらに情報を知りたい方へ

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