有価証券担保ローン

「有価証券担保ローン」とは、保有中の株式や債券を売却せずに、必要な資金を調達する手段の一つです。有価証券の担保は、上場株式、国債、外国債、投資信託などを対象にしています。資産運用において、有望な投資先が見つかった際やまとまった資金が必要な場面で活用でき、資産を売却せずに目的の資金を手に入れることが可能です。また、このローンは保有している有価証券を担保とするため、無担保ローンに比べて金利が低く設定されることが特長です。本稿では、有価証券担保ローンの概要や利点、リスク、取り扱い金融機関について詳しく解説します。

目次

  1. 有価証券担保ローンとは
    1. 有価証券担保ローンの仕組み
    2. 担保にできる有価証券の種類
  2. 有価証券担保ローンの特徴
    1. 金利が低い
    2. 担保の要件
    3. 資金使途は自由な場合が多い
  3. 有価証券担保ローンを利用するメリット
    1. 配当金や株主優待の継続受取
    2. 投資チャンスの活用
    3. 緊急資金の利用
  4. 有価証券担保ローンのリスクと注意点
    1. 担保割れによる追加担保リスク
    2. 強制売却リスク
  5. 有価証券担保ローンを資産運用で活用できる場面
    1. ローンの借り換え
    2. 優良物件への投資
    3. 好利回り債券の購入
  6. 融資までの流れ
    1. 必要書類の用意
    2. 申し込み
    3. 審査
    4. 契約
    5. 融資
  7. 有価証券担保ローン比較
    1. Jトラストグローバル証券(JTG証券)
    2. 東海東京証券
    3. 野村證券
    4. あかつき証券、いちよし証券、楽天証券
    5. 三田証券
    6. SBI証券
    7. 大和証券
    8. SMBC日興証券
  8. まとめ
  9. さらに情報を知りたい方へ

有価証券担保ローンとは

まずは、有価証券担保ローンの仕組みや担保にできる有価証券の種類を紹介します。

有価証券担保ローンの仕組み

有価証券担保ローンは、保有している有価証券を担保にして融資を受けることができる制度です。保有中の有価証券を売却せずにそのまま保有しながら、必要な資金を調達できるため、急な資金需要や、別の投資先への資金にも利用できます。株式を担保にする場合には、株主としての権利を維持しており、株式配当や債権の配当金を受け取ることもできます。 融資の金額は、担保となる有価証券の時価評価額に応じて上限が設けられます。したがって、担保となる有価証券が価値を失った場合、その差額を補填するための追加の担保が必要となることがあります。 ただし、この制度はローンであるため、融資を受ける際には利息の支払いが発生します。また、利用できる条件や融資の金額、金利などは、取扱金融機関によって異なります。そのため、申し込み時には審査が行われ、それに基づいて条件が決定されます。

担保にできる有価証券の種類

有価証券担保ローンでは、以下のような種類の有価証券を担保にすることが可能です。 国内上場株式(ETF、REIT、ETNを含む) 国債、政府保証債、地方債、社債 外貨建債券 投資信託(非上場) ただし、担保にできる有価証券の種類は取扱金融機関によって異なるため、申し込む前にその条件を確認することが重要です。

有価証券担保ローンの特徴

有価証券担保ローンには、以下のような特徴があります。

金利が低い

有価証券担保ローンの金利は無担保ローンよりも低く設定されています。多くの金融機関の利率は、1~4%程度の金利で提供されています。無担保ローンの金利は借入金額や返済年数、種類によって差があり、1%〜15%の利率があります。例えば、100万円を1年間借り入れる場合、金利が1%と10%であれば、返済総額に約9万円の差が生じます。

担保の要件

有価証券担保ローンでは、担保として有価証券が必要です。一方、無担保ローンは担保が不要であり、審査期間が短いという利点があります。また、有価証券担保ローンの貸付金額は、担保の価値に比例します。無担保ローンの貸付金額の上限額は、ほとんどの金融機関で1000万円までですが、有価証券担保ローンでは最大で10億円の貸付を行っている金融機関もあります。 有価証券担保ローンを選択する際には、金利だけでなく担保の有無や審査期間なども考慮し、自身のニーズに最適な選択肢を検討することが重要です。

資金使途は自由な場合が多い

多くの有価証券担保ローンでは、基本的に資金の使途に制限がない場合が一般的です。そのため、株式や外国債券などの有価証券、不動産の購入といった新たな投資への活用や、教育費や事業資金、納税資金の準備といった様々な目的に利用することが可能です。ただし、一部の取扱金融機関では特定の使途への資金の使用を制限している場合もありますので、利用前に十分な確認が必要です。

有価証券担保ローンを利用するメリット

有価証券担保ローンを利用するメリットは以下の通りです。

配当金や株主優待の継続受取

保有中の株式を担保にして資金を借り入れても、株主としての権利を維持できます。有価証券担保ローンを利用している間も、配当金や株主優待を継続的に受け取ることができます。このため、投資運用を継続しながら必要な資金を調達できます。

投資チャンスの活用

手元に十分な資金がなくても、担保となる有価証券を活用して投資を行うことが可能です。有価証券担保ローンを利用することで、ローンの利率を上回る金融商品の購入や、優良な収益物件への投資など、投資のチャンスを逃さずに資金を確保できます。

緊急資金の利用

突然の資金需要に対応する際にも有価証券担保ローンは有用です。資金の使途に制限がないため、病気や怪我による医療費の支払いなど、緊急の資金需要にも迅速に対応できます。

有価証券担保ローンのリスクと注意点

有価証券担保ローンにはメリットだけでなく、リスクや注意点も存在します。以下に、有価証券担保ローンのリスクと注意点を解説します。

担保割れによる追加担保リスク

有価証券担保ローンでは、株価の下落などにより担保有価証券の評価額が基準を下回る「担保割れ」が発生する場合があります。担保割れが生じた際には、追加の担保を差し入れて担保割れを解消する必要があります。変動幅が大きい担保の場合には、借入金額を抑えることでリスクを減らすことができます。担保追加リスクの内容は、証券会社や金融機関によって異なるため、事前に確認することが重要です。

強制売却リスク

担保有価証券の評価額が担保割れ状態になった後、さらに価値が下落し、融資残高に対する担保の割合が一定の基準を超えると、担保有価証券が強制的に売却される場合があります。金融機関は、この売却代金で融資残高や未収利息を回収します。強制売却の有無は金融機関によって異なるため、担保有価証券の値動きを定期的に確認し、金融機関に相談して強制売却を回避するための対策を講じることが重要です。

有価証券担保ローンを利用する際には、これらのリスクや注意点を理解し、慎重に活用することが重要です。また、不安な場合は事前に金融機関に確認することをおすすめします。

有価証券担保ローンを資産運用で活用できる場面

有価証券担保ローンは、以下のような場面で資産運用に活用することができます。

ローンの借り換え

有価証券担保ローンの金利が他の借入金よりも低い場合、既存の高金利ローンを有価証券担保ローンで借り換えることで、支払額を抑えることができます。例えば、すでに無担保ローンの借入がある場合には、有価証券担保ローンで借り換えることで、毎月の返済額を大幅に減らすことができます。

優良物件への投資

不動産投資で優良物件を購入する際にも有価証券担保ローンを活用できます。保有中の有価証券を担保にして購入資金を調達し、不動産投資を行うことができます。低金利で資金を調達できる点が魅力です。

ただし、さらに株価が値下がりした場合は、担保割れによる追加担保リスクがあります。投資銘柄の動向を見極めながら、無理のない範囲で活用するとよいでしょう。

好利回り債券の購入

保有中の株式を担保にして資金を借り入れ、好利回りの債券を購入することも有価証券担保ローンの活用法の一つです。例えば、米ドル建ての債券など、利回りが高い債券を購入して収益を得ることができます。株式と債券の違った値動きを利用した分散投資の手段としても有効です。

以上のように、有価証券担保ローンは資産運用の様々な場面で活用することができますが、リスクや注意点を十分に理解した上で利用することが重要です。

融資までの流れ

有価証券担保ローンの融資までの流れは以下の通りです。

必要書類の用意

申込みに必要な書類を準備します。これには、本人確認書類や担保となる有価証券の情報などが含まれます。

申し込み

金融機関や保証会社に申し込みます。申込書に必要事項を記入し、必要書類を提出します。

審査

申込みが受理されると、金融機関や保証会社が審査を行います。審査では、申込者の信用情報や担保となる有価証券の評価などが確認されます。

契約

審査に通過した場合、融資契約が締結されます。契約書には、融資条件や返済スケジュールなどが記載されます。

融資

契約締結後、融資金が申込時に指定した銀行口座や担保となる証券口座に振り込まれます。融資を受けることで、必要な資金を手に入れることができます。

以上が、有価証券担保ローンの融資までの一般的な流れです。

有価証券担保ローン比較

有価証券担保ローンは、取り扱う金融機関によって提供する商品は異なります。たとえば、対象者の年齢、年収や担保、貸付金額、利率が金融機関によって異なるので、貸付け条件を比較する必要があります。また、金融機関が提供または提携している証券会社の口座開設や有価証券(株券や債券)の移管が必要となる場合があります。 商品の内容や融資条件を比較したうえで、自分に合ったローンを利用することが大切です。 編集部が調査した有価証券担保ローンの商品概要を、最低融資利率が低い順に紹介します。

Jトラストグローバル証券(JTG証券)

JTG証券は担保有価証券の管理・保護、質権設定の業務を行い、西京銀行が担保に基づいた貸付けを行います。

商品名 西京銀行 有価証券担保ローン
貸付主体 西京銀行
保証会社 株式会社日本保証
対象者 ・申し込み時の年齢が満20歳以上の方または法人
・日本国籍を有するまたは永住許可(特別永住許可)を受けている方
・JTG証券で預り資産2,000万円以上保有または保有見込の方
・信用情報に問題がない方
融資利率 0.9~1.5%(固定金利・保証料含む)
※金融情勢の変化などで変更の可能性あり
融資金額 1,000万~3億円
融資限度額 担保有価証券の時価の70%以下

西京銀行の有価証券担保ローンは、他の金融機関に比べて融資利率が低めに設定されていることが特徴です。国内上場株式のほか、外貨建債券も担保有価証券に含まれます。融資を利用するにはJTG証券での口座開設が必要です。

東海東京証券

東海東京証券の有価証券担保ローンの概要は以下の通りです。

商品名 国内証券担保ローン・外国株式担保ローン
証券会社 東海東京証券
貸付主体 東海東京証券
対象者 東海東京証券で証券総合口座(あんしん総合サービス)を開設しており、満20歳以上80歳未満の方および法人
融資利率 国内証券担保ローン:年率1.2~2.7%
外国株式担保ローン:年率1.5~3.0%
融資金額 300万円~
融資限度額 担保有価証券の種類などにより異なる

東海東京証券は、国内証券担保ローンと外国株式担保ローンの2種類のローンを提供しており、それぞれに対して融資利率が異なります。国内証券は1.2%〜2.7%で、外国株式は、1.5〜3.0%の融資利率です。東海東京証券の国内証券担保ローンは、国内上場株式、投資信託(一般型)、一般債(国内債)、転換社債、利付国債で、外国株式担保ローンは外国株式が担保の対象となります。

野村證券

野村證券の有価証券担保ローンの概要は以下の通りです。

商品名 野村Webローン
証券会社 野村證券
貸付主体 野村信託銀行
対象者 ・国内居住で申込時に満18歳以上80歳未満の方
・野村證券で証券総合口座を開設し、オンラインサービスを契約している方
・野村信託銀行に普通預金口座を開設している方
融資利率 1.5%(2024年4月現在:変動金利)
融資金額 10万~1億円(極度枠は50万円以上、1億円以下)
融資限度額 担保有価証券の時価の50~80%以下

野村Webローンの取扱金融機関は野村證券で、貸付主体は野村信託銀行になります。そのため、野村信託銀行の普通預金口座を開設する必要があります。融資限度額は担保によって異なり、時価の額面の50%〜80%が限度額になります。また、30日間お利息をキャッシュバックするキャンペーンも実施しています。

あかつき証券、いちよし証券、楽天証券

あかつき証券、いちよし証券、楽天証券は、日本証券金融と提携して個人・法人向けに訪問型証券担保ローンを提供しています。商品概要は以下の通りです。

商品名 証券担保ローン・セレクト
証券会社 あかつき証券、いちよし証券、楽天証券
貸付主体 日本証券金融(日証金)
対象者 満20歳以上75歳未満の方および法人
融資利率 1.8~3.8%(金融情勢の変化などで変更の可能性あり)
融資金額 3,000万~10億円
融資限度額 担保有価証券の時価の55~65%以下

日本証券金融の担当者が訪問し、貸付け資金の使用用途などをヒアリングして融資手続きを行います。訪問は首都圏の顧客に限られており、その他の顧客は日証金の東京事務所に訪問する必要があります。提携している各社の証券取引口座で保有している株式などを日本証券金融の口座に振り替えることで、資金調達ができます。法人に対してもサービスを行っているので、自社が保有している株式を担保に資金を借り入れることも可能です。

三田証券

三田証券の有価証券担保ローンの概要は以下の通りです。

商品名 Executive Loan
証券会社 三田証券
貸付主体 三田証券
対象者 20歳以上の国内に居住されている個人および国内法人
融資利率 1.8~14.0%
融資金額 個人:500万円~2億円(2億円超は別途相談)
法人:500万円~3億円(3億円超は別途相談)
融資限度額 担保有価証券の時価の70%以下(東証プライム上場株券・投資信託)
担保有価証券の時価の60%以下(その他上場株券)

Executive Loanの担保の対象となるのは、国内金融商品取引所上場株式等で、三田証券が担保適格と認める有価証券(投資信託、外国債券)に限ります。 返済方法は、ご契約期間内で一括返済、元金均等返済、元利均等返済、自由返済で、自由度が高い返済方法になっています。

SBI証券

SBI証券の有価証券担保ローンの概要は以下の通りです。

商品名 コムストックローン・SBI証券
証券会社 SBI証券
貸付主体 日本証券金融(日証金)
対象者 SBI証券で証券取引口座を開設しており、申込時に国内在住の満20歳以上75歳未満の方
融資利率 2.675~4.175%(金融情勢の変化などで変更の可能性あり)
融資金額 30万~3億円
融資限度額 担保有価証券の時価の50~60%以下

取扱金融機関はSBI証券ですが、SBI証券で保有している株式を担保として、日本証券金融と契約して融資を受けられます。SBI証券で国内株式を買い付けたときは自動的に担保となり、売却したときは売却代金をご融資金の返済に充てていただくことができます。申し込みは、来店も不要で、スマホからの申し込みも受け付けています。また、同様のサービスに比べて日証金による訪問も不要になっています。

大和証券

大和証券の有価証券担保ローンの概要は以下の通りです。

商品名 ダイワのSATローンⅡ
ダイワのネットローン
証券会社 大和証券
貸付主体 大和証券
対象者 ダイワのSATローンⅡ:
「ダイワ・コンサルティング」コースを利用中の方(満20歳以上80歳未満)および法人 ダイワのネットローン:
「ダイワのオンライントレード」を利用中の方(満20歳以上80歳未満)
融資利率 ダイワのSATローンⅡ:3.21~3.29%
ダイワのネットローン:2.82~2.83%
融資金額 ダイワのSATローンⅡ:100万~10億円
ダイワのネットローン:30万~3,000万円
融資限度額 担保有価証券の時価の20~80%以下

大和証券では法人と個人に対する2種類のローンを提供しており、それぞれ対象者、利率、融資金額が異なります。融資利率は、他社に比べて細かく分類されており、有価証券の種類によって、20%〜80%までの限度額になっています。融資の契約は、他社は1年が多いですが、大和証券では6ヶ月毎の自動更新になります。

SMBC日興証券

SMBC日興証券の有価証券担保ローンの概要は以下の通りです。

商品名 イージー・コムストックローン
証券会社 SMBC日興証券
貸付主体 日本証券金融(日証金)
対象者 日興イージートレードを利用しており、申し込み時に国内在住の満20歳以上75歳未満の方
融資利率 4.175%(実質年率2.675~3.675%)
※金融情勢の変化などで変更の可能性あり
融資金額 30万~3億円
融資限度額 担保有価証券の時価の50~60%以下

取扱金融機関はSMBC日興証券ですが、貸付主体は日本証券金融です。SMBC日興証券で保有している株式を担保として、日本証券金融から融資を受けられます。

まとめ

有価証券担保ローンは、株式や債券を売却せずに必要な資金を低金利で調達できる点が大きな魅力です。また、資金使途は原則自由となるため、幅広い用途に活用できます。

ただし、融資条件や融資利率、限度額などは取扱金融機関によって異なります。複数の商品を比較して有利なローンを利用しましょう。

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