4月10日、15年ぶりに日経平均株価は一時2万円台に回復した。現在は消費者物価のインフレよりも資産のインフレが先行しているが、今後モノやサービスのインフレが生じたときに金融機関の株価はどう動くのだろうか。

今回は銀行と生命保険会社の財務内容の違いという観点から検証していきたい。

インフレ時には生命保険株が銀行株より有利になることが多い

インフレになった場合、銀行株や生命保険会社株にどのような影響を受けるのだろうか。 例外はあるものの、一般的に次のような因果関係が成り立ちやすい。

インフレが銀行株へ与える影響: インフレ → 金利上昇 → 純資産減少 → 株価下落
インフレが生命保険会社株へ与える影響: インフレ → 金利上昇 → 純資産増加 → 株価上昇

インフレになると金利は上昇しやすい。銀行や生命保険会社の純資産は、金利に大きな影響を受けることになる。資産や負債の特性によって、影響はプラスにもマイナスにもなる。

一般的に、多くの銀行は金利が上昇下場合に財務内容が悪化しやすく、逆に多くの生命保険会社の財務内容は改善しやすい。その背景には、銀行と生命保険会社の資産・負債内容の違いがあるのだ。

インフレが金融機関の資産と負債に与える影響

インフレになると金利は上昇しやすい。これを説明するものとして「フィッシャー方程式」という考え方がある。国債の金利は、潜在的な経済成長率、国の信用力を反映したリスクプレミアムそして期待インフレ率の合計で決まるというものだ。

成長率と信用力が変化しなければ、金利は期待インフレ率のみを反映して上下することになる。

さらに、利回りと債券価格の動きは表裏一体であり、利回りが上がると債券価格は下がる。金融機関の資産には債券が多く含まれているため、金利が上がると資産価値も下がってしまう。

負債も同様に金利の影響を受けるため、時価評価した場合、金利が上がると負債は減り、金利が下がると負債は増えるのだ。

利回りが変化した時に債券の価格がどう変わるかを表す指標をデュレーション(修正デュレーション)といい、その関係は以下のような式で表される。

債券価格変化(%) ≒ デュレーション × 利回りの変化(%) × -1

例えば、デュレーションが10年の債券は、全ての年限で利回りが1%上がると、価格はおよそ10%下がると推計される。これにより、債券を100億円保有していた場合、およそ90億円まで価値が減少する。

また、利回りが2%下がると、価格はおよそ20%上がる。100億円の場合はおよそ120億円になると推計されるのである。