金利上昇で資産と負債はどう変化するのか

多くの銀行の場合は「資産デュレーション > 負債デュレーション」となる。銀行の負債は預金が中心なので、満期が短く、デュレーションも短い。銀行の場合、資産デュレーションのほうが負債よりも長いことが多い。

金利が上昇した場合、資産のほうが負債よりもマイナスが大きくなるという理由から、一般的に金利上昇は銀行にとってネガティブであるとされている。

例えば、債券保有額100億円、預金額100億円の銀行で、資産(債券)のデュレーションが3年、負債(預金)のデュレーションが1年の場合、金利が1%上がると、資産はおよそ97億円に減る一方、負債はおよそ99億円までしか減らない。純資産が実質的におよそ2億円減るのである。

一方で多くの生命保険会社の場合は「資産デュレーション < 負債デュレーション」となる。生命保険会社の負債は支払いがずっと先のことが多いので、満期も長く、デュレーションも長い。生命保険会社は資産よりも負債のデュレーションのほうが長いことが多い。

金利が上昇した場合には、負債のマイナスの方が大きくなるので、純資産は増加する。よって、金利上昇は生命保険会社にとってはポジティブであることが多いのだ。

例えば、債券保有額100億円、保険負債100億円の生命保険会社で、資産(債券)のデュレーションが7年、負債(保険負債)のデュレーションが10年の場合、金利が1%上がると、資産はおよそ93億円までの減少に留まるが、負債はおよそ90億円まで減ってしまう。純資産が実質的におよそ3億円増えるのである。

前述の内容より、実質的にPBR(株価純資産倍率)が変わらない場合には、インフレが純資産減少を引き起こし銀行の株価は下落が見込まれ、一方で生命保険会社の株価は純資産の増加に伴って上昇することとなるのだ。

市場全体の株価が下落する場合には、銀行株より生命保険株の下落率が低くなる可能性が高いと考えてよいだろう。

とはいえ注意は必要!

銀行の資産デュレーションが負債より長いというのは一般的な傾向であって、負債のデュレーションが資産より長い銀行もある。また、資産デュレーションのほうが負債よりも長い生命保険会社もある。

銀行や保険会社の財務内容はそれぞれ異なるので、投資にあたっては各社のディスクロージャー資料等を入念に調査する必要がある。

金融機関は様々な手段で金利リスクをヘッジしている可能性があるので、表面上見えている数値から考えられる影響と異なる場合がある。情報開示のタイムラグにも留意しなければならない。経営上のその他要因も考慮する必要がある。(ZUU online 編集部)

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

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