日本国内では生命保険に加入している人は多い。、生命保険文化センターの2013年度調査によれば、男性80.9%、女性81.9%と、驚くことに80%以上の人が何らかの生命保険に入っていることになる。
多くの人が加入している生命保険だが、それぞれの契約ごとに必ず「契約者」「被保険者」「受取人」がある。簡単にいうと「契約者」はお金を払う人、「被保険者」は保険の対象になっている人、「受取人」はお金を受け取る人だ。しかし、受取人を簡単に決めてはいけない。
なぜなら、契約者・被保険者・受取人の関係で支払う税金の種類が違ってくるからだ。今回は「受取人」に重点を置いて、契約者や被保険者との関係でどのような税金の対象になるのか、契約途中で受取人を変更したい時はどうすればいいのか、何に注意すればいいのかを紹介したい。
満期保険金・解約返戻金と死亡保険金による違い
満期保険金・解約返戻金の受取人と死亡保険金の受取人の指定は同じでないといけないわけではない。死亡保障のための保険なら違うのが一般的だ。
満期保険金・解約保険金については単純だ。受取人が契約者と同じなら所得税と住民税が、違うなら贈与税の対象となる。贈与税は年間110万円までは非課税、それを超えると受け取った人が税金を払う必要が出てくる。
一方死亡保険金だが、こちらは少し複雑になり被保険者にも絡んでくるので、注意が必要だ。詳細は以下のようになる。
(1)契約者=被保険者で、受取人は契約者の法定相続人→相続税
(2)契約者=被保険者で、受取人は契約者の法定相続人以外→相続税(遺贈)
(3)契約者≠被保険者で、受取人は契約者本人→所得税・住民税
(4)契約者≠被保険者で、受取人は契約者でも被保険者でもない→贈与税
(1)と(2)の違いは、(2)なら「500万円 × 法定相続人の数」までの死亡保険金は相続税の課税対象から除かれる。贈与税率は相続税率に比べて高い。例えば単純計算で、取得(課税対象)金額1000万円なら、相続税率は10%、贈与税率は40%(控除額125万円)である。死亡保険金はまとまったお金なので、支払う税金は大きな差が出ることになる。契約時には意識したい。
受取人は変更できる?
契約した時に受取人を指定するのだが、生命保険は長い期間契約が続くものである。そのために、配偶者がいるのに親が受取人になっていたり、別れた配偶者が受取人のままになっていたり、所帯をもった中年の子どもが受取人になっていたりということも考えられる。
また、亡くなった人をそのまま受取人にしている場合などは、受取人の相続人がその権利を引き継ぐので、死亡保障に入った目的と異なる結果になる恐れもある。
保険金は受取人固有の財産なので、現状と違う受取人になっている場合は、契約している保険会社に連絡して、一刻も早く変更の手続きをする必要がある。その場合、契約者と被保険者の同意が必要であることを申し添えておく。
このように受取人も含めて、定期的に保険内容のメンテナンスをすることはとても重要だ。
世話になった人を受取人にしたい時には
一時社会的に問題となった「保険金殺人」。これらの事件から保険会社も受取人の指定についてはとても慎重になった。
基本的には配偶者または二親等(孫・祖父母・兄弟姉妹)以内の血族までしか受取人には指定できない。しかし、二親等以内の血族であれば、複数人を指定することはできる。詳細は保険会社によって違いがあるので、問い合わせが必要だ。
では、大変世話になった他人を受取人に指定したいと思ったら、どうすればいいのか。それは「遺言書」に記載することである。
ただ遺言書の作成時に気を付けなければいけないのは、受取人を変更する保険契約の特定も含めて、形式や内容が完全なものでなければならないことである。もし、受取人変更を含めるのであれば、多少費用がかかっても、「公正証書遺言」にすることを強くお勧めする。後々の相続人間のトラブルを避けるためにも最低の義務である。
受取人の重要性を理解して頂けたであろうか。最後にひとつ、法定相続人は当然、法的に認められた配偶者や子などでなければならない。事実婚では法定相続人にはならない。
死亡後の生活保障のための生命保険は、残された大切な人のために契約するもののはずである。税金のことも知った上で残せるお金のことを考えるのが、とても大切ではないだろうか。
小野みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。
FP Cafe
登録FP。
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