死亡保険を契約する際、たとえば夫の死亡保険の受取人は妻の名前が書かれていることが多いと思います。逆に妻の死亡保険の受取人には夫の名前が書かれているケースが多いことでしょう。見知らぬ名前が書いてあったら、違った意味で問題ですよね。読者のみなさんも受取人の名前はしっかりと確認されていることと思います。

でも、契約者や被保険者については無頓着な人が意外と多いのも事実です。たとえば、妻が死亡保険を契約する際、専業主婦で収入がなく「どうせ夫が保険料を支払うから」と契約者を夫にしていると、驚くほどの税金を徴収されるケースもあります。私はFP(ファイナンシャル・プランナー)として活動していますが、この手の相談は決して珍しいものではありません。

今回は、知らないと損する「保険の契約」についてお届けしましょう。

相続税と思っていたのが「一時所得」に?

死亡保険,税金
(画像=PIXTA)

「契約者」「被保険者」「受取人」。生命保険の契約においては、この3つの関係で税金が変動するのをご存知でしょうか? 妻の保険料は「夫に払ってもらうほうが、お小遣いに影響がないからお得!」などと考えてはいけません。それが保険契約の失敗につながります。

夫は会社員、妻は専業主婦の家庭を例に解説しましょう。夫はもちろん妻も死亡保険に入りましたが、妻は専業主婦なので「夫の給料から保険料を払う」ことになります。どうせ、ご主人の給料から払うので「面倒だから」夫の口座からの引き落としにしました。

このケースでは下記の契約になります。
・契約者(保険料負担者):夫
・被保険者:妻
・死亡保険金の受取人:夫
(※被保険者とは「生命保険の対象」となっている人です)

上記では夫が保険料を支払っています。したがって、この保険は税務上は「夫の財産」となります。「夫の財産」なのですから、夫が受け取る死亡保険金は相続ではなく「一時所得」となります。

上記ケースで夫の「一時所得」を計算して見ましょう。死亡保険金が1000万円、支払った保険料を150万円とすると、

1000万円(死亡保険金)−150万円(支払った保険料)−50万円(一時所得の特別控除)=800万円

となります。この一時所得800万円に給与所得等を合わせた総所得を計算して、所得税・住民税を支払うことになります。

上記のケースの場合、保険料の契約者を妻にして、妻の口座からの引き落とせば、その保険は「妻の財産」とみなされます。したがって、夫が受け取る死亡保険金には「相続税」が適用されるのです。相続税であれば配偶者控除等が使えます。

相続税と思っていたのが「一時所得」だった……被保険者が亡くなられて慌ててFPに相談しても手遅れです。繰り返しますが、「契約者」「被保険者」「受取人」の関係には十分な注意が必要です。

「子どもに財産を残したい」場合はどうなる?

では、妻が亡くなったときに「子どもに財産を残したい」ケースはどうでしょうか? 夫は会社員、妻は専業主婦、子どもが1人という家庭を想定して見ましょう。

このケースも「面倒だから」保険の支払いを夫の口座にしてしまいました。夫の口座からの引き落としで、妻が死亡すると子どもに死亡保険金が支払われます。契約内容は下記の通りです。

・契約者(保険料負担者):夫
・被保険者:妻
・死亡保険金の受取人:子ども

この保険の保険料を支払っているのは夫ですから税務上は「夫の財産」となります。このケースは妻の死亡により「夫の財産」が子どもに贈与されるわけです。つまり、「贈与税」が適用さます。

贈与税の計算は「基礎控除の110万円を引いた金額」が課税所得になります。死亡保険金が1000万円であれば、1000万円−110万円=890万円が課税所得となるのです。

このケースでは保険料の契約者を妻にして、妻の口座からの引き落としにすれば「相続税」が適用されます。相続税であれば相続税控除や生命保険の非課税枠などが使えたはずです。

このように生命保険は「契約の仕方」によって税金が大きく変わります。もちろん、契約の途中でも「受取人」等の変更は可能ですので、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。なお、一般的に死亡保険は「相続税」になるように考えたほうが、節税になって有利なのですが、相続税額が多い場合などは、あえて「贈与税」にしたほうが有利なケースもあります。気になる人は一度FPに相談してみるのも良いかもしれませんね。

リビングニーズ特約の注意点は?

ちなみに、死亡保険の特約で「リビングニーズ」もあります。リビングニーズとは、たとえば余命6カ月と宣告された場合、契約をしている死亡保険の一部、または全額を生前に受け取ることができるというものです。どこの保険会社も無料で付けることができます。リビングニーズで受け取った保険金には税金はかかりません。ただ、そのお金が使われずに残った場合は「相続税」がかかります。その際は、死亡保険金の非課税枠は使えないので注意が必要です。

長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『お金に困らなくなる黄金の法則』『保険はこの5つから選びなさい』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。