退職金はいつ、どの程度の金額がもらえるのか。これは、現実問題として退職を考えている人にとっては切実な問題である。会社の規模や社内ルールによってその金額や支払時期は異なるものの、一般的な見通しがあれば退職後の生活設計に対する心配も軽減されるだろう。これから退職を決断しようとしている人は、正確な情報のもとに判断しなければ、退職後に後悔することにもなりかねない。ここでは、退職金の金額や支払時期、未払いといったトラブルなどについて、一般的なケースを見ていきたい。
退職金の相場は?
会社を辞めたいと思うことは誰しもが一度は思うことだと思うが、退職後の生活設計に見通しが立たなければ、現実問題として決断することは難しい。退職金は退職後の生活を考えるうえで重要な要素であるため、退職金の相場を知らなければ、辞めるべきか留まるべきかの適正な判断は難しいだろう。
そこで、厚生労働省の調査をもとに、大学卒で就職した労働者が自己都合退職した場合の退職金額を見てみると、勤続10年で約120万円、勤続25年で約650万円、定年退職で約2000万円が一般的な相場であることが分かる。退職金は会社の規模によって大きく金額が異なるものでもあるが、一つの目安と考えておきたい。
なお、東京都産業労働局の調査によれば、退職金を受給するための最低勤続年数を3年以上としている企業が約半数を占めているため、入社後3年未満で退職を検討しているような場合は、自分の勤続年数で退職金が支給されるのかを事前に調べておく必要がある。
退職金にも税金がかかる?
退職金にかかる税制は、ほかの所得よりも控除額が大きく優遇されている。その計算方法は、収入金額から勤続年数に応じた退職所得控除額を差し引き、残りの金額の2分の1に対して税率を掛けて計算分離課税することになっている。例えば、勤続30年で退職し、2000万円の退職金を受給した場合、2000万円から退職所得控除額となる1500万円を差し引き、残りの500万円の2分の1(250万円)に対して所定の税率を掛ける。この事例の場合だと1500万円までの退職金であれば、所得税も税金もかからないことになる。
なお、退職所得控除額の計算方法は、勤続年数20年以下の場合は「40万円×勤続年数」、20年を超える場合は「70万円×(勤続年数-20年)+800万円」と定められており、その最低額は80万円である。ほかの所得と同様、退職金にも税金はかかるものの、永年勤続に対する褒賞という点からかなり優遇されていることが分かるだろう。
退職金がいつもらえるかは企業ごとに異なる
退職金については法律で定められているものではないため、退職金の金額や支給時期は会社が独自に決めることができる。退職金の支払時期は会社によって異なるものの、退職日から約1~2か月後に支給されるのが一般的である。会社の人事部や経理部などに確認すればすぐに分かるはずだが、退職する前から退職金について会社に確認することが憚られる場合は、就業規則を確認したり、先に退職した先輩社員に話を聞くことで、ある程度の目安をつかむことができる。
ただ、退職金の支払時期については、会社に直接確認しなければ正確な情報は把握できないという点は覚えておいたほうが良いだろう。支払いが遅い会社の場合、退職日から6か月後に支払われるケースもある。退職金がなかなか支払われないために退職後の資金繰りに困窮してしまったということがないよう、退職前からある程度の金銭的な余裕が持てるよう資産管理をしておく必要がある。
もらえない場合は労働基準監督署へ
あまり想像したくないことではあるが、長年勤めた会社から退職金の金額があらかじめ通知されていたにもかかわらず、いつまでたっても振り込まれない、ということがあった場合は、労働基準監督署に相談することができる。相談する際には、自分が辞めた会社から退職金が支払われることになっていたということを証明できるようなものを準備しておくと良いだろう。
支払期日が定められている場合、その期日までに支払われていなければ違法行為ということになる。また、支払期日が定められていない場合であっても、会社に対して請求すれば、請求した翌日から7日以内に支払わなければ違法行為となる。まずは、あきらめずに請求をし、それでも支払われない場合は、裁判や労働基準監督署への申告などの行動を起こさなければならない。退職金は金額も大きく、その後の生活を大きく左右するものであるため、泣き寝入りはせずに、でき得ることはすべて行動に移すことが必要だろう。
老後までの人生設計を
退職金は法律で定められているものではなく、会社が独自に決めているものであることから、退職金の金額や支払時期については個々人によって大きく状況が異なるものである。しかし、退職後の生活設計を考えるうえで退職金の占める比重はとても大きいため、正確な情報を知らないままでいると退職後の生活が困窮してしまうリスクもある。もし、自分が退職を意識し始めたら、まずは退職金に関して正確な情報を把握し、そのうえで退職後の生活設計を検討するのが望ましいだろう。
- 増税で手紙・はがきが値上げ 古い値段のはがきや切手は使える?
- 住民税と市民税はどう違うのか?やさしい税金の基礎知識
- 公的年金控除とは?年金にも税金がかかるのを知っていますか
- 日本の富裕層が「先進国で最も税金を払ってない」のは本当か
- 「どうせ夫が保険料を払うから…」保険の契約の仕方で税金が変動するのをご存知ですか?
- 富裕層が「税金逃れ」に使う「汚いやり方」とは
- 税金をクレカで支払うときの7つの注意点 高還元率クレジットカード5選+α
- 株主優待に税金はかかる? 確定申告が必要かどうか確かめよう
- 個人年金保険に税金はかかるの? おトクに受け取るためには
- 生命保険の受取人は誰がいい?税金で損しない受取人変更方法
【関連記事】
・増税で手紙・はがきが値上げ 古い値段のはがきや切手は使える?
・住民税の普通徴収とは?特別徴収との違いやメリット・デメリットを解説
・投資信託の平均利回りとリターンはどれくらい?リスクと計算方法も解説
・日本人の貯金と投資の割合は?ビジネスパーソンの約4割が資産運用を実践
・住民税と市民税はどう違うのか?やさしい税金の基礎知識