筆者は職業柄、60歳で定年退職した人や、再雇用で働いている人、それに定年前後に転職をした人から相談を受けることがあります。「定年後も仕事はまったく変わらないのに収入が激減した」といった経済的な悩みはもちろんのこと、中には「部下なし役職で、給与・待遇とともに冷遇されている」等の不満を打ち明ける人も少なくありません。

定年後の悩みは様々です。お金の問題もさることながら、仕事の内容や働き方(生き方)、そして会社への疑問を訴える人が意外と多いように感じます。今回は、定年後の漠然とした不安とどう向き合えば良いか考えてみましょう。

「退職金」は死語になりつつある?

老後,不安
(画像=coolkishmish / pixta, ZUU online)

筆者のFP事務所に相談に訪れる人、特に20代から30代の相談者からは「うちの会社には退職金制度はない」といった声を良く聞きます。いまや「退職金」という言葉は死語になりつつあるのでしょうか?

そもそも退職金制度は、日本企業独自の制度でした。日本のように退職時にまとまったお金を支給するのは、世界でも珍しい慣習でした。日本企業ならではの年功序列、終身雇用の仕組みのなかで生まれたのが退職金制度なのです。しかし、年功序列や終身雇用が崩壊する中で、近年は退職金制度のない企業も増えているようです。

ちなみに、筆者が若い頃、外資系企業に就職した同窓生が(日本企業に比べて)高額の収入を得ていたのに驚いたことがあります。外資は退職金制度がないので、その分だけ収入が高かったのですね。換言すると、当時の日本企業の退職金制度は「給料の後払い」と見ることもできるでしょう。

たとえば、米国の企業ではもともと終身雇用という考え方がないので、退職金制度はありません。その代わりに「401k(確定拠出年金)」制度が発達しました。日本でも年功序列や終身雇用が崩壊し、経済のグローバル化が進む中で確定拠出年金が社会に広く浸透しつつあるように感じます。

転職すると「裏切り者」と非難された時代

筆者が若い頃、日本企業は終身雇用が当たり前でした。「愛社精神」を重んじ、むしろ転職する人は「裏切り者」と非難される風潮さえありました。一方、年功序列で給料は右肩上がり、定年まで勤め上げて高額の退職金を受け取ることができました。

21世紀の現在は転職する人を「裏切り者」呼ばわりする風潮は、ほとんど無いように思います。「愛社精神」という言葉もあまり耳にしなくなりました。しかし、その一方で終身雇用が崩壊する中で、「退職金」も死語になりつつあるように感じます。

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