退職金は会社や勤続年数によっても異なりますが、ある程度まとまった金額になります。そのため、「これまで働いていたご褒美としてパッと使いたい」「気になっていた投資にチャレンジしてみたい」と思う人もいるでしょう。しかし、退職金は貴重な財産です。今後のライフプランでうまく活用していけるように大事に管理・運用していきましょう。

今回は退職金を運用するためのおすすめの方法を紹介します。

退職金の有効な使い道

退職金運用
(画像=vitalii-vodolazskyi/stock.adobe.com)

中途退職や定年退職のどちらであっても退職は人生の大きな転換点となり、経済的にも転機を迎える人生のイベントの一つです。退職の際にもらえる退職金は、給料の後払い的な意味合いだけでなく退職後の生活保障の意味合いもあります。もちろん、これまで働いてきた自分へのご褒美として使うのは決して悪くはありません。

しかし、将来的なライフプランをじっくり考えたうえで有効に活用することが大切です。まずは、退職金を使う目的と時期について考えてみましょう。例えば目的は、生活費や旅行、自己投資、ローン返済など人によってさまざまです。もし明確な目的が決まっていない場合は、大まかに以下の3つに分けてみるといいでしょう。

  • 生活資金:当面の生活費
  • 緊急予備資金:病気やケガ・介護の備え、大型家電の買い替えなど
  • 余裕資金:旅行、将来のための運用など

転職先がすでに決まっていて収入の見込みがある場合でも、新たな就職先になじめず早期退職してしまう可能性もあります。東京都産業労働局が公表している「中小企業の賃金・退職金事情(2018年度版)」によると、退職金制度を導入している中小企業で自己都合による退職の場合では、3年以上勤続しないと退職金を支給しないと回答した企業が約48.8%でした。

もしもの場合に備えて緊急予備資金の確保はしっかりしておきましょう。当面の生活費や緊急予備資金に充てるお金は、必要が生じたときすぐに引き出せるよう流動性の高い預貯金に預けておくことが必要です。一方、当面使う予定のないお金は将来に備えて運用しながら増やしていくことを検討してみましょう。

インフレや長寿化などで人生に必要な個人のお金はより増えていく傾向にあるため、退職金をうまく活用したいものです。

退職金の運用方法4つ

退職金を運用する場合でも用途や時期に応じて金融商品を選ぶのが大前提です。ここでは、退職金運用向けの金融商品を4つ紹介します。

1.退職金専用定期預金

退職金専用定期預金は、銀行が取り扱っている定期預金です。預入の条件は、銀行によって異なりますが退職してから1年以内の人を対象としているケースが多いです。ちなみに預入の際、預入資金が退職金と確認できる資料(退職所得の源泉徴収票や退職金が振り込まれた通帳など)の提示が求められます。

最低預入金額は銀行によって異なりますが、退職金専用という性質上100万~300万円以上と一般の定期預金に比べて高めです。しかし金利が、+0.7~1%程度(税引き前)と高金利な点は見逃せません。2020年9月時点のメガバンクの定期預金金利は約0.002%のため、退職金専用定期預金の金利は約350~500倍もの高い金利となります。

ただし、預入期間は3ヵ月程度と短めのところが多い傾向です。満期後に自動更新される場合でも自動更新後の金利は通常の定期預金金利に下がる点も注意しておきましょう。自動更新となるタイミングに気をつけて解約すれば、例えば半年程度先などに必要となるお金の預け先として利用価値は高そうです。

2. NISA

資産運用といえば株式や投資信託をイメージする人も多いでしょう。低金利の時代では預金しても利息が期待できないため、当面の生活費や緊急予備資金以外のお金は投資に利用することも検討したいものです。しかし、退職金をすべて投資に費やしたりリスク許容度を超えて投資したりすることはおすすめできません。

その点NISAは「年間120万円まで」と年間投資額に制限があります。また、NISA口座で運用して得られる利益は非課税となるためおすすめです。

3.保険

長期間かけて運用できるなら貯蓄型の保険を利用する方法もあります。貯蓄型の保険にもさまざまな種類がありますが、お金が必要な時期や目的に応じて例えば低解約返戻金型の終身保険や個人年金保険に加入するのもいいでしょう。低解約返戻金型の終身保険は、保険料払込期間中の解約返戻金が通常の解約払戻金の70%程度と通常より低い傾向です。

しかし保険料払込期間満了後は解約返戻金の返戻率は良くなる仕組みとなっています。保険料払込期間満了後に解約し、解約返戻金を子どもの進学資金や自分の老後資金などライフプランで必要となる資金に充てることも可能です。また、保険料払込期間中の返戻金が低い分、保険料は割安となります。退職金の運用に保険を利用するのであれば加入時に保険料を「前納」するのがよいでしょう。

前納とは通常、年払いの保険料を数年分まとめて先に払い込んでおく方法です。前納すれば保険会社が定める前納率で保険料の割引をしてもらえます。解約返戻率や前納割引率は保険会社によっても異なるため、数社でシミュレーションしてもらうことが大切です。

4.組み合わせ商品

多くの銀行では退職金専用の定期預金として複数のプランを提供しています。このうち最も金利が高く設定されているのはいわゆる定期預金と投資信託などの「組み合わせ商品」です。

組み合わせ商品の場合は、投資信託購入部分などで購入・保有・売却の各タイミングで手数料がかかります。また価格変動があるため、運用益や元本が保証されているわけでないことに注意してください。

定期預金のみで安全に運用したい場合は、記載されている金利だけで惑わされずに「定期預金のみで元本が保証されているのか」「投資信託や債券などリスク商品と組み合わせでないか」などを確認してから契約をしましょう。

ライフプランに合わせて賢く運用しよう

これまで定期的にもらっていた給料や賞与とは違い退職金は数年~数十年勤務することで得られるお金です。まとまった金額になることも多いためつい気が大きくなりがちですが、退職した後の長いライフプランをじっくり考えて適した方法で運用していきましょう。一つの運用方法にこだわらず、バランス良く資産を振り分けることも大切です。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。(提供:Wealth Road