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(写真=Thinkstock/GettyImages)

退職金を準備する際に、中小企業退職金共済を利用する企業は多い。また、個人事業主のように退職金を受け取ることができない立場にあっても、積み立てをしておくことで退職時にまとまった金額を手にすることができるので、将来に備えて利用する価値がある。

この共済は手続きが簡単で会社にとってもリスクが少ないなどのメリットはあるが、一方で柔軟性に欠けており、予想外のトラブルが生じた時に手続きが煩雑になったり、起業や事業主に不利益が生じる可能性も捨てきれないというデメリットもあるため、内容をよく把握してから手続きをしたほうが良い。ここでは、中小企業退職金共済についての概要とメリット、デメリットを詳しく見ていきたい。


中小企業退職金共済とは

中小企業退職金共済とは、自社で退職金の積み立てをすることが困難な中小規模の企業や個人事業者のために用意されている、厚生労働省所管の中小企業退職金共済事業本部(中退共)が運営する共済制度である。

大まかなシステムは、企業が掛金を支払い、それに加えて国が掛金を一部助成して退職金の資金を積み立てていくというものであり、原則利用する企業の従業員全員が加入しなければならない。

加入できるのは中小規模の法人や個人事業主で、業種によって資本金・出資金額が5000万~3億円以下であるか、常時雇用している従業員数が50~300人以下のどちらかを満たせば可能である。

月々の掛金は5000~3万円の範囲内で16通りの選択肢があり、それに加えて3通りのパートタイム従業員向けのものがある。事業主が金融機関や商工会議所などの委託事業主団体を通して加入申し込みを行うと、審査を経て共済手帳が交付され、それ以降は掛金を振り込むという形で積み立てていく。

退職金を受け取るときの流れは、事業主が従業員に交付した共済手帳に入っている請求書を使って従業員が中退共宛に直接手続きを行い、それが受理されると中退共から直接従業員に支給されることになっているため、事業主が退職金の支払等に関して関わることはほとんどない。

中小企業退職金共済のメリット

中退共のメリットは、短期で掛金を上回る退職金が準備できる点である。この制度は、従業員が24ヶ月間勤務すれば退職金が掛金総額を上回るようになっているため、勤務期間が短い従業員でも退職金を受け取ることが可能となる。

さらに、3年6ヶ月を超えて長期的に勤務すれば国からの助成もあって効率よく積立額が増えていく計算となっている。自治体によってはこの制度に加入している事業所に補助を行っているケースもあり、従業員にとっても、事業主にとってもメリットがある。

これに加えて、経理上のメリットも存在する。中退共への掛金は、全額損金処理することができるため、事業主の税負担が軽減する。

従業員にとっても、月々の税負担がない上、退職金として受け取れば給与所得よりも税負担が軽くなるといった恩恵が受けられる。 そして、退職金の支払いについて事業主がトラブルに巻き込まれるリスクがないという点も大きい。

請求も支払いも事業所を通さず、従業員と中退共との間でやり取りが行われるため、問題が発生するケースもないし、資金移動がないことで事業所の経理における損益で苦慮する必要がない。

このほかにも、中退共に登録している事業所の従業員は、宿泊施設やレジャー施設の割引等の福利厚生のサービスを受けることも可能になる。中小規模の事業所ではこれらのサービス提供は困難であり、メリットの一つと言えるだろう。

中小企業退職金共済のデメリット

一方で、中退共にもデメリットはある。例えば、一度取り決めをした掛金の減額が困難であり、さらに支払い済みの掛金はどのような事情があっても取り戻すことができない。

そのため、収支が不安定な事業所が高額の掛金設定をしてしまうと、現金不足のために利益が出ていても倒産したり、従業員が23か月以内に退職した時にその掛金を取り戻すことができないなどのリスクはある。

減額をするには従業員全員の同意を書面で得たうえで、賭け金を維持することが著しく困難であると厚生労働大臣に認定してもらう必要があり、非常に面倒である。増額は比較的簡単に行えるため、加入時点では無理のない額を設定し、事業の拡大や収益の安定などを見極めて変更するのが良い。

また、懲戒解雇した従業員には退職金を払わない、もしくは減額をして他の従業員に回したいと考えるものだが、中退共では退職金は懲戒解雇でも支払われるうえ、減額手続きをしても事業所には掛金が戻らない。

従業員にとってもデメリットはある。12ヶ月未満で退職した場合には退職金は一切支払われず、24ヶ月未満では掛金よりも低い額しか支給されないため、退職金がよほどの事情がなければ24ヶ月以上働き続けなければならない。

また、在職中に従業員が死亡した場合、積み立てられていたものは死亡退職金として遺族に支払われるが、勤務期間が短ければ遺族の生活を保障することが難しくなる。

他の積立法も検討するべき

中退共は手続きの簡便さや退職金の支給に事業主が責任を持たずに済む点などが評価されている。平均勤続年数が24ヶ月以上になれば堅実な積み立てを行えるうえ、税金の控除や福利厚生のサービスを受けられるなど、使い勝手の良い制度であると言える。

一方で、事業主にとっては経営が不安定になった時、在職中に従業員が死亡した時などの突発的なトラブルが生じた時の対応が不十分な面もあるため、利用するときには他の積み立て方法も考慮していきたい。