株主優待,確定申告
(写真=Thinkstock/Getty Images)

もうすぐ、確定申告の時期となる。個人の確定申告で思いつくキーワードといえば、個人事業主、副業、株の売買、不動産経営、医療費控除、ふるさと納税、といったあたりではないだろうか。もっとも、私たちの常識では「税金なんて関係ない」と信じ込んでいるものでも、実は所得税の課税対象となるものがある。その一つが「株主優待」だ。


株主優待がなぜ課税になるの?

そもそも株主優待とは、基本的に権利確定日においてその株式を保有していることによって企業から受け取ることができる特典だ。一般的には、その会社の製品や商品券、割引券などであるが、中には利回り10%程度になるものもある。「預金しておくよりもオトク」「配当よりもオトク感が高い」という理由から、投資の目的が株の売買益や配当益から優待品をもらうことに軸足が移る「優待投資家」も少なくない。

「株主優待は非課税」というのは誤りで、実は所得税の課税対象である。所得税では、基本的に「個人が会社から受け取ったものはすべて課税」であると考えてよい。ただ、一部のものについては、その事情や背景により非課税とされるのである。また、後で述べる基準にひっかかるなら、その受け取った株主優待については確定申告をしなくてはいけない。

株主優待は「雑所得」として確定申告すること

「株主という地位に基づいて会社から受け取る」という点では、配当も株主優待も同じだ。では、確定申告が必要となった場合は、株主優待も配当所得として申告してよいのだろうか。

答えはNOだ。株主優待は「雑所得」として確定申告することになる。なぜなら、税法上に明確な基準があるからだ。所得税法基本通達24-2では、大まかに次のようなことが書いてある。

「株主がその地位に基づいて法人から受け取った株主優待のような経済的利益は…(中略)…その法人が剰余金または利益の処分として取り扱わない限り、配当等には含まれないものとする」

つまり、通常の株主優待は、その会社の利益処分として行われるものではない。そのために、配当所得ではなく、雑所得として申告することになるのである。

確定申告をする際の判断基準

以下、株主優待を雑所得として申告する場合の注意点について言及する。なお、ここでいう所得とは「受け取った株主優待の金額(収入)-株主優待を受け取るためにかかった必要経費」の金額である。

まず、確定申告が必要かどうかの判断基準は、次のどちらに該当するかで異なる。

①正社員やパート、バイトなどで給与所得を受け取っている場合
給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えるとき、確定申告が必要となる。株主優待以外に特に収入がないのならば、株主優待の総額だけで判断すればよい。他に副業などの収入や不動産投資、FXの収入がある場合は、雑所得のカテゴリーだけで所得計算をし、それが20万円を超えるかどうかで判断する。

ただ、複数から給与所得を得ている場合や給与の年間収入(額面金額)が2000万円を超える場合などは、他の所得が20万円未満であろうと確定申告はしなくてはならない。確定申告の要不要そのものにも細かい要件がある。安易に判断するのではなく、慎重に自分の状況をチェックしてほしい。

②上記①以外の場合
基本的には、確定申告をしなくてはならない。ただし、その株主優待以外の収入がないのならば、その所得額が38万円以下ならば確定申告不要と考えてよい。ここでいう「38万円」とは、所得税計算上、誰もが適用を受ける基礎控除の金額だ。つまり、仮に年間所得が10万円あっても、一律すべての納税者に適用される基礎控除38万円を差し引けば「10万円―38万円≦0円」で税金がかからないことになるのだ。

株主優待を転売した利益はどうなるの?

商品券や割引券の場合は、額面金額、割引金額(「10%引き」など率で表されるものは実際に割り引かれる金額)と考えるのが基本である。また、施設利用券等の場合には、その施設を利用するのに実際に必要となる金額と考えるのが妥当だ。ただ、貴金属など会社の記念品となる場合には、時価相当額や市場取引価格など、誰が見ても合理的と判断できる金額にする必要がある。判断が難しいときは、優待元の会社に確認した方がよい。

この他、株主優待を転売した場合には、その転売した利益についても確定申告が必要となる。たとえば、1万円相当額の株主優待券を1万5000円で金券ショップなどに販売した場合には、1万5000円-1万円=5000円を譲渡所得として申告しなくてはならない。この場合も受け取った株主優待1万円は確定申告が必要だ。ただし、こちらも前述①②の基準でチェックし、確定申告が必要なケースに該当することが前提となる。

個人の確定申告は、税法上のきまりが細かいため、確定申告を考える際に頭が混乱しやすい。手順を間違えず、冷静に判断し、確定申告書を作成して欲しい。

鈴木 まゆ子 税理士
鈴木まゆ子事務所代表。 2000年、中央大学法学部法律学科卒業。ドン・キホーテ勤務中に会計に興味を持ち会計事務所に転職する。妊娠・出産・育児をしながら税理士試験の受験勉強を続け09年に合格。12年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を行う行政書士の夫とともに外国人の決算・申告・コンサルティングに従事。14年から国際相続などを中心に解説記事作成業務を行っている。8歳、5歳、2歳の三姉妹の母。

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