「保険で得をする」そんなキャッチコピーを目にすることがあります。しかし、保険で本当に得になることは、ほとんどありません。一部、予定利率が高い時の保険や、保険料控除をうまく使って得する方法などもありますが、基本的に保険で得をすることはない、そう考えて差し支えありません。

保険とは不幸に備えるお金です。不幸をお金で解決すると言い換えても良いでしょう。死亡保険金を受け取ると言うことは、被保険者がお亡くなりになったと言うことです。入院という不幸な状態になったから、給付金を受け取ることができるのです。本人にとっては、実にヤバイ状態ですし、家族にとってもヤバイ状況です。

がん保険も同じですね。がんと診断されるのは、実にヤバイ。ヤバイ状態から立ち直るには、お金が必要です。そのお金を用立ててくれるのが保険であり、ヤバイ状態から脱出させてくれる金銭的手立てとなります。

でも、世の中には首をかしげたくなるような「ヤバイ保険」も存在します。今回はそんなヤバイ保険を紹介しましょう。

ご存知ですか? 105歳満期の医療保険

以前、こんな保険の相談がありました。その保険設計書をみると、保険の主契約は105歳払込満了の終身医療保険だったのです。思わず「エッ!?」と声をあげてしまいました。それは105歳まで保険料を払い続け、払い終われば終身の保障があるという医療保険でした。

105歳から何年生きられるのだろうか。というよりも、そもそも105歳まで生きていられるのだろうか。平均寿命を25年も越えていますね。これは紛れもなく、マジで「ヤバイ保険」です。

この保険の内容を詳しく見てみましょう。契約者は、3年前にも見直しを行っていて、その時点の予定利率が1.65%だったにもかかわらず、見直しで1.35%に下がっています。それ以前にも見直しがあったので、最初の契約を見ると何と3.5%の予定利率の「お宝保険」が、消えているではありませんか。その契約者は、解約返戻金が貯まるとその都度新しい保険に転換していました。

疑いの余地はありません。これは保険営業員の言いなりになっていたという感じです。保険営業員にとっては、まさに「いいカモ」、いや「いいお客さん」だったのでしょう。

実は、その契約者は、もう一つ同じような保障内容の保険に入っていました。合計月額保険料は約3万円です。保障もダブっています、必要のない保障もいっぱいついているので、解約して別の保険に入り直しを勧めました。新しく入ったのは、通販型の死亡保険とがん保険というシンプルなものです。二つ合わせても月額6000円。5分の1の保険料になったということです。

このように人に勧められるままに入っている保険は、実はヤバイことがいっぱいです。保険のかけ過ぎです。必要のない保険は見直すことで、家計をずいぶんスリム化することができます。

こんな人にこそ保険に入って欲しい

私は日頃から誰にでも、できるだけ保険に入らないほうがいいとは言っています。

しかし、なかには絶対に保険に入ったほうがいい、と思う人もいます。でも、そういう人に限って入っていないのです。逆に、入らなくてもいいのでは、と思う人が多額の保険料を払っているケースも多いですが……。

保険に入ったほうがいいという人は、「子どもがいて、給料は全部生活費に消えちゃうの。保険なんか入れないわよ!」そんなことを言いながら宝くじを買っているような人です。

生命保険文化センターの調査で、「生命保険の非加入の理由」があります。保険非加入の理由で42.3%のダントツでトップなのが「経済的余裕がない」と言うことです。

これって、ヤバくないですか? 貯金が全然ないということは、いざトラブルに遭ったときに対処のしようがありません。

つまり、大きな病気とかケガなどで、仕事が一時できなくなった、または死亡で収入が途絶えたと言う場合、貧困に陥る可能性があると言うことです。本来はそれに備えるのが保険です。

ある程度の貯えがある場合、たとえば余裕資金が100万円ぐらいあれば、病気、ケガなどで一時的に仕事ができなくなったとしても、貧困に陥る可能性は小さいでしょう。ですから、お金の余裕がない人こそ、保険に入ってほしいと思います。

ジャンボ宝くじで、夢を買うのもいいのですが、1等当選確率は1000万分の1です。一方、30代前半で死亡する確率は8万分の1です。病気・ケガで入院する確率は、ジャンボ宝くじよりもっと高いのです。

大切なのはリスクに堪えられる家計にすること

ジャンボ宝くじを年2回30枚買ったら1万8000円です。宝くじを買ったつもりで、年額2万円ほどで入れる保険もあります。

たとえば、都道府県民共済は月額2000円で、年間2万4000円ですが、割戻金が約32%あるので、実質年間1万7000円ぐらいで入ることができます。それで死亡保障、入院保障などもついています。

大切なのは、そうした保険に入っている間に貯蓄をして、ちょっとしたリスクに耐えられる家計にすることです。余計なお節介かも知れませんが、あなた自身でなくても身近にお心当たりのある方がいたら、ぜひ教えてあげてください。

長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)、『保険はこの5つから選びなさい』(河出書房新社発行)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

◇月々の保険料を考え直したい方は、まずは保険選びのプロに無料相談するのがおすすめ
>>保険見直し本舗の公式ページはこちら