生命保険,セールストーク
(写真=Thinkstock/Getty Images)

家や職場へ足しげくやって来る保険の営業員。親身になってくれているような気がするが、彼らの言葉の裏にはこんな本音が隠されていることをご存じだろうか。

(建前) 「今日は、あなたのためにピッタリの保険をカスタマイズしてきました」
(本音) 「主契約に特約をいっぱいつけました。保険料はその分高くなりますが、私のポイントも上がって今月の歩合が増えます」

営業員は成績第一の生き物である。無駄な特約がてんこ盛りになっていることも多い。

(建前) 「いい新商品が出ました。今までの保険よりずっとお得ですよ」
(本音) 「契約転換をしてください。私にとっては得になります」

営業員は成績アップにつながって得、保険会社も利率が低い保険に変われば得。だが、契約者は99%損をする。とくに、利率が高い時代に加入した貯蓄タイプの保険は損が大きい。

(建前) 「今、解約すると損になります」
(本音) 「私の成績に響きますから、今は解約しないでください」

貯蓄性のある保険は、早期に解約すると解約返戻金が低くなる可能性がある。しかし、掛け捨ての保険ならば、いつ解約しても同じ。契約を解消されると成績が下がるため、困るのは営業員なのである。

(建前) 「私が一生涯サポートします」
(本音) 「私が勤めている間はサポートします」

国内保険会社の営業員は個人事業主で、しかも離職率が非常に高い。いつまで同じ営業員が担当してくれるやら……。

表と裏では、こうも違っているのだ。

義理・人情・プレゼントにほだされて入ってはいけない

保険は金融商品の一つで、しくみはかなり複雑である。それぞれ保障の範囲や期間が違っているうえに特約がついてくるため、プロでも比較検討が難しいのだ。何社もの保険会社がそれぞれ保険を売り出しており、組み合わせを考えたら無数にできる。

こういった商品は売る側が絶対的に情報を持っていて、買う側は情報が少ない。これを経済学用語で「情報の非対称性」と言う。当然ながら、売り手が圧倒的に有利だ。買い手が不利益を被らないためには、セールストークの裏を見抜く知識や情報を集める努力が必要になる。

一般的に大手保険会社が扱う商品は、通販タイプの保険会社より保険料が割高に設定されている。だが、営業員は1社専属なので、他社の商品と比較することは不可能だ。しかも、主契約に特約がついたパッケージ型になっていて、いっそう内容がわかりにくい。

こんなふうに複雑にできていると、自分の保険にどんな保障がついていたか忘れてしまい、請求漏れも起こりやすくなる。どれほど保険料を払っていようとも、保険は請求をしない限り1円も支払われない。とにかく保険はシンプルがいちばんだ。こう見ていくと、大手は魅力的な商品が少ないと感じる。

そうはいっても、営業員は親切だし、誕生日や年末には必ずプレゼントがもらえる。ここに魅力を感じる人もいるかもしれない。これはGNPと呼ばれる営業員の戦略なのだ。保険業界におけるGNPでは、Gは「義理」、Nは「人情」、Pは「プレゼント」を意味する。GNPを仕掛けられると、ついほだされて「この人が勧めてくれる保険に入らないと悪いかなあ」なんて気分にもなるだろう。

実は、保険に加入するきっかけは、人に勧められたからという理由がいちばん多い。最近は販売チャンネルが多様化してきたせいで徐々に割合が低下しつつあるものの、それでも6割は営業員から加入している。

日本で死亡保険のニーズが高まった理由

各家庭を訪問して保険を販売するスタイルは、戦後に大きく発展した。大量に発生した戦争未亡人たちを採用したことが、いわゆる「セールスレディ」の始まりである。

ちなみに、日本では猫も杓子も死亡保険に入る傾向が強いが、これは女性の社会進出が遅れたことに一因がある。稼ぎ手は夫だけという状態では、万一夫が死亡したら一家は路頭に迷ってしまう。そこで、死亡保険へのニーズが高まったわけだ。

しかし、ことは何千万円という単位に関わる問題なのである。たとえば、家を購入する際に、人から勧められただけで簡単に買ってしまうだろうか。チラシを集め、いくつもの現場に足を運び、何回も見積もりを取って、納得できる物件を探すはずだ。保険にも同じことが言える。何社か比較し、保険料の総額を確かめてから契約することをお勧めしたい。

ほとんどの契約者が損をする「転換」のワナ

甘いセールストークにうかうか乗ってしまうと、契約者は損をするケースがほとんどである。とくに気をつけたいのが「転換」のワナだ。転換とは、以前に加入した保険を振り替えて、新しい保険に加入するしくみを指す。

通常、保険料は年齢とともに上がっていく。転換をすると見た目の保険料は下がるのだが、そこにはカラクリがある。実は、利回りの高い保険を解約して、利回りの低い保険に変えているのだ。それまで貯まっていた解約返戻金は、新しい保険を買うために充てられる。つまり、安くなったのではなく、自分で払っているにすぎないのである。今まで貯めてきた解約返戻金は戻ってこなくなる。

保険会社にとって転換はオイシイ方法だ。加入時に決定した利回りは、変額タイプでない限り変わらない。世の中の金利が下がり続けても、当初の利回りを下げることはできないのだ。

バブルに湧いたピーク時には、6%という今では信じられないような利回りもあった。バブルが崩壊して株価や地価が暴落し、金利もゼロに近い水準になったあとは、これが大きな足かせとなったことは言うまでもない。

貯蓄性の高い「一時払い養老年金」などの運用が急速に悪化し、保険会社は多額の運用損で苦しんだ。持ちこたえることができずに、倒産した保険会社もある。

こうした逆ザヤを解消するために多用された方法が、転換サービスだ。営業員も新しい契約を取れるので成績アップにつながり、どんどん勧めたのである。こうした手法が功を奏して、現在では逆ザヤはほぼ解消し、基礎利益は過去最高になっている。

これでわかるとおり、保険会社と営業員にとって転換はメリットが多い方法である。しかし、みすみす利回りの高い商品から低い商品に変えられてしまう契約者には、マイナスでしかない。

来店型ショップなら安心なのか?

近ごろは駅前やショッピングセンターの中など、いろいろな場所で来店型の保険ショップをよく見かけるようになった。買い物のついでに保険の相談もできて便利である。では、こうした来店型の保険ショップなら信頼できるだろうか。

保険ショップでは複数の保険会社の商品を扱っている。商品の比較が簡単にできるし、公平な提案をしてもらえそうだ。しかも、相談は無料! とはいえ、この無料がクセモノである。

彼らはけっしてボランティアではない。保険ショップは保険の販売手数料で運営されている。商品や店舗によって手数料は異なるが、高いものは保険料の30%くらいに設定されているのだ。年間の保険料が40万円なら、手数料は12万円。これが契約の初年度に入ってきて、金額を減らしつつも収入は数年間続く。保険ショップがどんな商品をイチオシにするかは言うまでもないだろう。

従って、「これが人気ナンバーワンの商品です。みなさん、これに入っています」といったセールストークにはご用心。本音は、「この保険が最も手数料が高い商品です。これを売ると歩合も高くなります。だから、いちばん売りたいんです」となる。

銀行の窓口も保険を販売しているが、銀行だからといって安心はできない。何度か研修を受けただけの担当者が対応に当たっているのが現状だ。やはり、銀行が受け取る手数料が高い商品を勧められることになる。

保険を扱う営業員の中には知識が豊富で、本当に契約者のことを考えた提案をしてくれる人もいる。ただ、保険を販売するという仕事の中なので難しい部分もある。セールストークを鵜呑みにせず、自分で調べ、考える姿勢が大事である。相当な労力を要する作業かもしれないが、これが泣きを見ないコツだ。

長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『お金のツボ』(モバイルメディアリサーチ)『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

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