生命保険は日本人の多くが加入していると言われる。もしものときの備えとして頼りになるが、加入する必要があるかどうかは人によって異なるだろう。生命保険に入っていなくても問題のない人もいるため自分の状況に合わせて検討したい。

生命保険は死亡保険だけでなく医療保険も含まれる

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(画像=thodonal88/Shutterstock.com)

生命保険と聞くと、死亡したときに保険金を受け取れる死亡保険をイメージする人が多いかもしれない。死亡保険は生命保険の一つであり、それ以外にも種類がある。

保険は大きく生命保険(第1分野)と損害保険(第2分野)に分けられる。その中間に位置するのが医療保険やがん保険、所得補償保険など(第3分野)である。第3分野は広い意味で第1分野である生命保険に含まれため、今回は第3分野の代表である医療保険も併せて考えよう。

生命保険に入っていないリスクはデータで見ると高くはない

生命保険を死亡保険と医療保険に分けて考えた場合、それぞれどのくらいの確率で保険金を請求する機会があるのだろうか。

死亡保険は亡くなったら保険金が支払われるものなので死亡に関するデータを見てみるといい。たとえば40歳まで生存する人の割合は男性が98%、女性が99%だ。年齢的な1つの区切りである65歳までの生存割合は男性が89%、女性が94%である(厚生労働省『2017年簡易生命表』より)。

医療保険は入院に対し給付金が支払われるタイプが主流のため入院する確率で見てみよう。一般的に現役世代で入院する確率は低く、65歳未満では高くても1%程度だ。年齢が上がるにつれて入院する人の割合は増えていくが、後期高齢者となる75歳以上でも平均4%程度である(厚生労働省『2017年患者調査の概況』より)。

こうした客観的データを踏まえると、生命保険が本当に必要かどうか考える余地が出てくる。

生命保険に入っていなくても問題がない人とは

データから考えると生命保険の必要性は必ずしも高くないが、全くリスクがないわけでもない。65歳までに死亡する割合は男女合わせて8%程度あり、人生100年時代における入院確率が高まっていくとも考えられる。この確率に対してどのように考えて備えるかが大切だ。もちろん生命保険に入っていなくても問題がない人も少なくないだろう。

自分が亡くなっても遺族が金銭的に困らない人

死亡保険に加入する主な目的は遺族の生活保障だ。自分が亡くなると悲しむ人は大勢いるだろうが、金銭面で困る遺族がいるかどうかを考えてほしい。たとえば結婚をしていて扶養内の子どもがいれば死亡保険の必要性は高いかもしれない。配偶者の収入だけでも生活していけるのなら、子どもの教育資金分だけ死亡保険に入るという方法も取れるだろう。

合理的に死亡保険を利用するなら、自分が亡くなった後の遺族が金銭的に困るかどうかが1つのポイントになるのではないだろうか。

病気やケガに備えた蓄えがある人

病気やケガの治療費に備えるには医療保険が一般的だが、備える方法は保険だけではない。治療費に使える現金を準備しておいてもいいのだ。

入院時にかかる自己負担費用は平均22万円である(生命保険文化センター『2016年度生活保障に関する調査』より)。これには治療費の他に食事代や差額ベッド代、日用品代なども含んでいる。このくらいの使う予定のないお金なら銀行口座に入っている人も多いのではないだろうか。

必要以上に医療費が高くなったとしても「高額療養費制度」がある。医療費の自己負担が一定金額以上にならないようにしてくれる一種の救済措置だ。勤務先の健康保険に加入しているなら「傷病手当金」という制度がある。病気や怪我などで仕事を休まざるを得ない場合に給与の3分の2相当が給付されるのだ。こうした公的制度や入院確率などを頭に入れておけば、過剰な保障の医療保険に入ってしまうことを避けられるだろう。

終身払いではない医療保険の場合、病気や怪我のリスクが高まる高齢期に備えて、現役時代に保険料の払込を済ませておくと将来のリスクヘッジになるということも忘れてはならない。医療保険は死亡保険よりも多角的な検討が必要なため、専門家にアドバイスを求めてもいいかもしれない。

生命保険に入っていないのは悪いことではない

日本では多くの人が生命保険に加入している状況もあり、社会人になったときや結婚したときなどに何となく加入する人もいるのではないだろうか。生命保険に入っていれば安心ではあるが本当に必要かどうかは考える余地がある。毎月の保険料が積み重なれば大きな金額になるからだ。生命保険に入っていないことは決して悪いことではないため、必要な保障を取捨選択して検討したい。

文・國村功志(資産形成FP)/MONEY TIMES

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