(写真=PIXTA)
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FPとしての生命保険の相談業務は大きく3つに分かれる。それは「新たに加入する検討」、「加入中の見直し」、「解約の検討」だ。今回はこの中でも、「加入中の見直し」及び「解約の検討」時に共通する「生命保険の解約」について考えてみよう。

解約は「将来の権利」も失うこと

「解約」とは、文字通り「契約を解消すること」を意味する。保険用語で「解除」という言葉があるが、これは別の意味(保険会社から契約者へ強制的に契約を終了させること)を指し、その後の解約返戻金の処理などが全く異なってくるので、注意が必要。解約は、契約者自らが保険会社へ「辞める」と連絡する手続きだ。

解約すると、その契約に関する一切の権利を失う。

保険契約は「現在」保障されている権利と、「将来」変更することができる権利も持ち合わせていることがある。保障金額内で医師の審査なしに保障期間の変更を行う「変換」や、現在の保障を下取りするような仕組みの「転換」、決められた年齢になると、解約返戻金を元に、健康状態を問われずに、死亡保険から医療保険への切り替えが選択できる商品もある。そういった将来の権利も、失うということを留意しなくてはならない。

ペナルティとして解釈できるのが「早期解約による返戻金の少なさ」だ。通常、保険契約に伴う事務費用は「付加保険料」として、契約者が支払う保険料の中に組み込まれている。大きなものに、販売代理店や直属の営業に支払う報酬に該当する「販売手数料」がある。

そのほか、新規で保険を成立するまでには、医師の審査や社内の医務審査に該当する部署に係るコスト、オペレーションに必要な事務方コスト、証券を発行するコストなど、様々なコストが初期段階でかかる。

契約者が支払う保険料は、一定期間もしくは終身にわたり同じ額なのに対して、初期段階に大きなコストがかかるのは、保険業界特有で、それを回収するための早期解約での返礼率の低さは、至極当然のことなのだ。

「支払いが困難になった場合」の解約--「払済」に変更しては?

たいていの解約理由は「保険料の支払いが困難になった」「現在保障が必要ではなくなった」、もしくは「資金が必要になり解約返戻金を受け取りたい」というものだ。

保険料の支払いが困難になった場合は、まず「解約」を選ぶのではなく「払済」への変更手続きを考えてみてはどうだろうか。

保障を得られながらお金が積み立てられている仕組みの保険は、長期定期保険、終身保険、年金保険などがあるが、「払済」への変更手続きタイミングでの解約返戻金相当額を、その後の「死亡保障額」に換算、保険料の支払いをそのタイミングで一括払いしたものとみなし、以後保険料の支払いをゼロにするというものだ。

契約当時の死亡保障額は下回るものの、解約をして保障が全く無くなるよりは、幾らかでも保障は残るし、また解約返戻金が存続しているので、将来運用により増える可能性は大だ。

契約商品や、保障開始からの経過年数、残存保険期間などによって、払済への手続きの可否は分かれる。保険会社によっても可能かどうかは様々なので、一度保険会社へ問い合わせてみることをおすすめする。

「保障が必要なくなった場合」の解約--解約返戻金があるか掛け捨てか

今の保障が必要でなくなった場合、解約返戻金があるタイプなら前述の「払済」が検討できる。

掛け捨てタイプであれば即解約でもよい。ただしここで注意してほしいのは、今後の健康状態や環境の変化だ。将来保障が再度必要になった際に、健康状態によっては加入できないという事も考えられることだ。年齢を重ねた自分を想像するのは、あまり楽しいことではないが、健康は過信せずに冷静に考えてほしい。そのリスクを十分踏まえたうえで、解約を検討しよう。

「資金が必要になった場合」の解約--「減額」も選択肢に

まとまった資金が必要であれば、「解約」もしくは「減額」をすすめたい。必要な資金が解約返戻金満額以下の場合は、契約を全て解約してしまうのではなく、「減額」処理を行い、減額した保障に充てられている返戻金のみを手元に受け取るという方法だ。

たとえば1200万円の死亡保障の契約に、解約返戻金が500万円あるとする。必要な資金は250万円だとすれば、死亡保障減額600万円に対しての解約返戻金250万円[500万円÷(600万円/1200万円)]を受け取りながらも、死亡保障額は残りの600万円保障を継続することができる。

残りの250万円分、解約返戻金が存続しているので将来運用により増える可能性は大だ。

ときどきある「差し押え契約」、その留意点

そう多くはない案件だが、たまにあるのが「差し押え契約」だ。債権者が契約者保有の保険契約を強制的に解約し、その解約返戻金を債権回収に充てるというもの。

本来保険契約は、受取人の為に、必要があって契約するもの。以前はその保険契約が必要であるかどうかにかかわらず、原則解約処理を行っていた。しかし現在は、保険会社はその保険契約受取人に連絡をとり、契約の存続を希望する場合は解約返戻金相当額を保険会社へ支払ってもらい、それを債権者へ渡し、保険契約の解約を回避するという方法を提案する。

相談者は冒頭の3つのテーマを相談者自身で結論づけてから相談に来ることが多い。われわれFPが耳を傾けなければいけない点は、「結論」ではなく、そう考える「理由」だ。「理由」を聴き取りし、その上で最善策を実行してもらえるよう、提案・サポートするのが私の役目だと考えている。

佐々木 愛子
ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅱ種、相続診断士
国内外の保険会社で8年以上営業を経験。リーマンショック後の超低金利時代、リテール営業を中心に500世帯以上と契約を結ぶ。FPとして独立し、販売から相談業務へ移行。10代のうちから金融、経済について学ぶ大切さを訴え活動中。 FP Cafe 登録FP

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