(写真=PIXTA)
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中国の保険システムは、日本と同様、国の運営する年金(養老金)と商業保険に分かれている。商業保険は損害保険(財産保険)と生命保険(人身保険)に大別されるのも同じだ。

しかし年金と医療保険の国家関与度が違い、商業保険、とくに生命保険の範囲は、日本より広く、資産運用の意味合いも強くなっている。また商業保険では中国資本のシェアが圧倒的に大きく「公正な市場なのか?」との疑問もある。見かけはともかく、日中の保険事情はかなり異なっている。

中国の商業保険とは

業界を管轄する国家機関「中国保険監督管理委員会」の保険分類では、「財産険」(損害保険)、と「人身険」(生命保険)に大別される。人身険がさらに(1)寿険、(2)健康険、(3)人身意外傷害険、に分かれている。それぞれ生命保険、医療保健、傷害保険に当たる。

2015年1~11月までの保険料収入は、生損合計2兆2396億6464万元である。財産険が7148億6481万元、人身険は1兆5248億で、そのうち寿険が1兆2438億元と大部分を占めている。2014年は通年で1兆3031億元と+18.4%の5年ぶりの高い伸びを示した。2015年は1カ月を余した時点で、すでに前年実績を+17.0%も上回っている。この人気急上昇の背景分析は最後に行う。

生命保険会社数は、中国資本47社、外資28社である。シェアトップの中国人寿(国有)、2位の中国平安、3位、中国太平洋、4位新華人寿など中国資本上位のシェアが高いのが特徴だ。出資規制下にある外資系は、保険料収入の規模において見る影もない。

資産運用商品意識の強い中国の生命保険

2014年における生保販売のチャンネルは、保険会社によって差はあるが、トータルでは個人代理人48.6%、銀行窓販39.0%、直販10.0%、ブローカーその他2.4%という割合だった。

そこで旧知の銀行支店長に保険販売の現況を聞いてみた。その銀行はグループ内に保険子会社を抱えているが、中国人寿、平安、太平洋、新華など、大手の保険商品もすべて取扱っている。2015年の販売は順調で、支店の保険を含む金融商品販売益は4000万元に達した。某上場大企業の総裁が2000万元もの保険商品を購入したことが大きく寄与した。

しかし今時これは珍しい。富裕層は資産隠しの必要もあり、香港を通して欧米保険会社の外貨建て商品を購入するほうが多い。ちなみに支店長自身の資産運用について聞いてみると、ドル預金と株式が大部分で、保険商品は10%という返事だった。また中国の生保は、死亡保険金を受取る感覚は希薄で、資産運用と理解されており、銀行での販売に違和感はない。

具体的な商品内容を分析、低い死亡保険金

「中民保険網」という80社、1000種以上の保険商品をラインアップしている紹介サイトでは、生命保険を、保障型寿険、養老返環型寿険、教育金保険、分紅(配当)投資型寿険と4つに分類している。具体例を検討してみよう。

ある中国人に生命保険契約書を見せてもらった。契約先は業界2位の「中国平安」である。契約した日は2006年11月21日、掛け金は主保険1305元、付帯保険205元で、年間1510元。払い込み期間は20年、保障期間は解約しなければ終身である。

契約3年目の2009年を第一回として、3年に一度、「年末生存金」1200元が交付される。書類には69年先まで記載されており、生存している限りいつまでも続く。死亡の場合、病死、事故死とも1万5000元である。付帯部分では入院1日104元、傷害23元、追加医療78元がカバーされている。払い込み期間終了後の現金価値は約1万4000元となっており、これは解約すれば戻ってくる金額だろう。

解約せず長生きすれば3年に一度1200元のおこづかいが延々ともらえるわけだ。さらに配当金、及び累積配当金という項目があり、これはいつでも還付可能なものだが、金額は毎年の運用成績に左右される。死亡保険金の額は極めて少ない。この人は死亡受取人を母親に設定しており、最初から配偶者や子供に保険金を残す目的はない。健康保険を兼ねた資産運用という意識である。4分類では、養老返環型か分紅投資型に当たるのだろう。いずれにしろ、中国のごく一般的な生命保険パターンと思われる。

生保好調の理由は株式下落、相続税導入への対策

生命保険の人気が最近とみに高まっている理由は以下の2つだという。

1、株式市場の下落により、さまよえる投資マネーの行先として、外貨購入とともに安全な運用先として再評価されたこと。

2、遺産税(相続税)の導入が取りざたされていること。

政策モデル特区(深セン市)で、今年から試行されるらしい。ネット上に紹介されている政策要旨では、総資産80万元~200万元の場合と同1000万元以上の場合について、それぞれ遺産税の計算モデルが示されている。加えて注目される項目がある。宝物や文物は遺産税を免除される、そして生命保険は相続資産に含まない、となっているのだ。

この遺産税から生保は対象外という噂に、富裕層や一部の中産層が敏感に反応しているのは間違いなさそうである。富裕層は主に香港で、中産層は国内で、今のうちに生命保険資産をできるだけ増やしておこうとしているわけだ。

結局、中国人にとってはどの金融商品も、政府への対抗策として存在しているのかもしれない。(高野悠介、現地在住の貿易コンサルタント)

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