収入が多ければ多い人ほど、「節税」に関心があるのではないでしょうか。日本では累進課税制度が採用されており、家族構成や事業主・雇用者などによる違いはあるものの、所得が多い人ほど税金が高くなる仕組みになっています。例えば個人における所得税の税率は、最大で課税所得金額の45%です。(所得が4,000万円超の場合)つまり収入の半分近くを、所得税として納める必要があります。

もちろん高額な課税が行われる前に、法人化などの対策を検討する人も多いかもしれません。ただ実際に稼いでしまってから慌てて対応しようとしても、「時すでに遅し」という場合もあります。これでは翌年の税金は、厳しくなることが容易に想定できるでしょう。税金対策というのは、あらかじめその内容をきちんと把握し、事前に着手することが大事なのです。

本稿では、「生命保険」の節税効果に的を絞り、その本質に迫ってみます。

税金対策の王道といえば?

生命保険,節税効果
(写真=New good ideas/Shutterstock.com)

税金対策(節税)の王道といえば、どのような手法をイメージするでしょうか。さまざまなところで語られている手法としては、まず「扶養家族を増やすこと」が挙げられます。扶養家族とは、生活費をはじめとした「経済的な面で支える必要がある家族」のことです。節税という観点で考えると扶養家族を増やすことによって、所得税の基礎となる課税所得金額から差し引ける控除額が大きくなります。

控除額が大きくなるということは、その分だけ課税所得金額が減額されるため、結果的に所得税の額は少なくなるのです。所得税の場合、「納税者と生計を一にしていること」「年間の合計所得金額が38万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)」などの条件があります。しかし、配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)も対象となるため、広範にわたって適応が可能です。

生命保険の節税効果を検証する

扶養控除とともに、節税になるといわれているのが「生命保険」の活用です。ただ本当に生命保険を活用すれば節税効果を得られるのでしょうか。検証してみましょう。

生命保険が節税になるという根拠

生命保険が節税になる根拠としてよくいわれているのは、「生命保険控除」に関するものです。生命保険控除とは、その年に支払った生命保険料などの一定額が、課税所得から控除される制度のこと。この制度により、生命保険に入っていれば節税につながると考えられているのです。ただし生命保険料控除額には上限が定められており、所得税で最大控除額12万円、住民税で最大控除額7万円までとなります。

例えば最高所得税率の45%(住民税10%)の場合で考えても、所得税軽減額は所得税で12万円×45%=5万4,000円、住民税7万円×10%=7,000円となり最大6万1,000円にしかなりません。複数の高額な生命保険に加入していたとすれば、節税どころか余計な出費になりかねない場合もあるのです。

事業主による生命保険の活用

上記は個人の場合ですが、事業主の場合はどうでしょうか。会社を経営している事業主に対し、節税目的として、生命保険への加入をすすめるケースは多い傾向です。具体的には、保険料の支払いは全額損金として扱われるため、課税対象外となり利益を圧縮することができるというものです。ただこうした手法に待ったをかけるかたちで、2019年4月に国税庁が新ルールを発表しています。

その内容は、「中途解約で戻る返戻率の最も高い値段に応じて課税水準を分ける」というものでした。これにより損金にできる比率が減るため、保険活用のうまみは少なくなることとなります。

生命保険の活用は課税を先延ばしにするだけ

保険料の支払いによって利益を圧縮するということは、返戻金を受け取ったときに、あらためて課税されるという点も見逃せません。返戻金を受け取ることを前提に保険を活用するのは、単純に税金の支払いを先延ばししているだけに過ぎないのです。ただ生命保険の営業マンは、そこまで解説してくれないことあります。

痛みを避けるために痛み止めを打つような保険活用は、結果的にどこかで負担が生じます。生命保険の活用は、支出がともなうという点も加味しつつ、本質的な節税にはならないことを理解しておくべきでしょう。

税金の先延ばしは本質的には節税とはいえない

このように、節税効果があると思われている生命保険の活用ですが、個人でも事業主でも本質的な節税にはつながりません。本稿で紹介したような扶養家族を増やすといった基本的な節税対策を行いつつ、その効果性についても検証していくことが求められます。(提供:Dear Reicious Online

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