2000年以降、生保各社は「アカウント型保険」の販売に力を入れてきた。しかし、最近になって「アカウント型保険」から、定期付終身保険に回帰する動きが見られる。その背景には何があるのか。

アカウント型保険とは

「アカウント」とは、「口座」とか「勘定」という意味で、お金をプールしておく器のようなものである。通常の保険は、保険に対して保険料を支払うが、アカウント型保険は、保険料を支払う前にアカウントという入れ物に入金するのが特徴になっている。なぜ、直接保険料を支払うのではなく、アカウントという入れ物にいったんお金をプールするかというと、保険を固定化せず自由に選択できるようにするためだ。

保険に対し保険料を直接支払う場合、加入時点で保険の内容が確定され、保障内容を変えるためには基本的に解約して入り直すか、転換する(同じ保険会社で保険を切り替える)しかないが、アカウント型の場合、プール金の範囲内で自由に保障内容を変更することができるのだ。また、アカウントのお金は自由に引き出しができるというのも魅力のひとつになっている。

なぜ生命保険会社はアカウント保険を販売するようになったか

生命保険会社がこれまで「アカウント型保険」の販売に力を入れてきたのは、いわゆる「逆ザヤ(保険会社が損をする)商品」を早く解消したかったからだ。バブル期以降に加入した生命保険は高い予定利率を設定していたため保険料が安く設定されている。

その結果、低金利の状況下では予定利率どおりの運用はできず、不足分は保険会社の持ち出しになっていた。同じ商品で見直しを求めても保険料が上がるだけなので、切り替えてもらうためには新しい形の保険が必要だったのである。

また、「アカウント型保険」は、アカウントに入れられた資金の金利は変動金利になる。したがって、市場金利がどうなろうと保険会社に金利リスクはないというのも保険会社にとってはメリットが大きかった。

個人意識の高まりにより自由度の高い保険へのニーズが高まっていたことと、貯蓄好きの日本人の性格から貯蓄性を前面に出した「アカウント型保険」は受け入れやすい商品だったのである。

しかし、ここに来て、従来主流だった「定期付終身保険」に回帰する動きが見られる。マイナス金利の導入でわかるように、今は超低金利時代であり、今が金利水準の底だとすれば後は金利が上がるだけである。金利が上がれば生命保険会社の運用環境も良くなるとはいえ、アカウントの資金に対して高い金利負担が発生するので、予定利率が低い今のうちに定期付終身保険に加入させておきたいとの思惑が保険会社にはあるのではないかと思われる。

アカウント保険のメリット・デメリット

①メリット
アカウント型保険のメリットとしては、確定した保険に加入するというのではないので、後で自由に保障内容を変更できる点が挙げられる。必要保障額は就業環境の変化や家族状況の変化によって変わってくるので、それに合わせて柔軟に保障内容を組むことができる。また、アカウント型の良いところは、お金に余裕があるときに一時金としてアカウントに資金を追加することができることである。いわゆる貯蓄機能と呼ばれるものである。

アカウントにある資金は必要になった場合、引き出すことが可能という点もメリットだ。他の金融商品に比べ保険の弱点として流動性(換金性)の低さがあるが、アカウント型保険の場合その点は優れているわけである。

②デメリット
アカウント型保険のデメリットとしては、わかりにくい商品であるということだ。保険を選ぶ際に重要なのは保障内容を理解して加入するということだが、アカウント型保険の場合、仕組みがわかりにくく、どのような保障なのかわからないままお金だけ払い続けている人もいる。

2つ目は、実は貯蓄性が低いということ。アカウント型保険のメリットのところで、貯蓄機能があると説明したが、貯蓄機能があるのはアカウントに入っている資金だけであり、保障部分は掛け捨ての定期保険になる。したがって、拠出した額にもよるが保障が大きければ貯蓄性はほとんどないということもある。

最後に、将来の保障額が不確定という点がある。アカウント型保険は、支払期間満了時にアカウントにプールされた資金で終身保険を買うことになるが、アカウントに資金が少ししかないと終身保険を買うことができない。支払い期間中に支払っている定期保険は更新のたびに保険料が上がるので、アカウントの資金があっという間になくなることもある。そうすると将来の保障がなくなってしまうという危険がある。

このように、アカウント型保険は非常にわかりにくく、将来の保障額も確定していないので。迷った場合にはシンプルな保険に加入するのが良いといえそうだ。(ZUU online 編集部)

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