納得して生命保険料を支払っていないと自覚しつつも、いまだに無駄に生命保険料を支払っている人、あるいはそのことにすら気がついていなかった人たちのために、そこから脱出を図る方法として「見直し」を提案します。ポイントは「これからは1円もお金を無駄にしない」、「今まで支払ってきた保険料もできるだけ無駄にしない」ということ。すでに保険を契約している人、つまり高いお金を払って保険を購入してしまい、無駄の多い保険生活を強いられている人を、安心の保険生活に導く方法について紹介します。

(本記事は、藤井 泰輔氏の著書『 どんな家庭でも 生命保険は月5000円だけ 』かんき出版(2017年9月1日)の中から一部を抜粋・編集しています)

見直しの得する必殺技は「払い済み」

生命保険料,書籍
(画像=Webサイトより)

払い済みができる保険は「終身保険」(定期付終身保険)、「養老保険」、長期の「定期保険」など貯蓄性があるといわれる、解約するとお金(解約返戻金)が戻ってくるような商品です。35歳で契約して60歳まで保険料を支払う予定の、保険金1000万円の契約があるとします。この保険を50歳の段階で払い済みにすると、保険金額が630万円に減額され、その後いっさい保険料を支払わなくても死亡したら630万円が支払われる保険が残ります。

一方、同じ時点で解約してしまうと380万円が支払われて契約は終了です。つまり払い済みにすると、解約返戻金が契約時の高い利率のままで、その後も増えていくのです。なお、契約時期が古いほど利率が高いことが多く、古い契約はそのまま継続したほうが得な場合もあるため、十分に吟味する必要があります。

保険を継続・解約する場合の見極め方

「終身保険」や「養老保険」はそのまま続けるか、前述した「払い済み」にすればいいでしょう。1990年代のはじめは5.5%と極めて高率だった予定利率も、その後10年のうちに2%まで下がりました。それでも何とか貯蓄性は保たれていましたが、2001年4月の改定で1.5%まで下がっていますので、その後の貯蓄性商品は決して魅力のあるものとはいえないでしょう。

三大疾病のための保険を購入されている人もいるかと思いますが、大手生保のセット商品の特約で付いている場合は、主契約(大元の保険)もろとも解約してはどうでしょう。もちろん、その特約だけを解約することもできるかと思います。セットではなく単独の保険の場合は、終身であればそのまま継続するか、払い済みにし、定期の場合は、保険料の負担の大小で決めてはいかがでしょう。三大疾病の保険は、治療費目的のものなので、考え方は医療保険と同じです。一方、がん保険での備えがないために不安という人は、しばらく続けるという選択肢もあります。

医療保険の見直しには、「満期まで続ける」「保険期間を終身まで延ばす」「解約する」という3つの選択肢が提示できます。このなかで、比較的健康を維持している人には「解約する」をすすめています。解約返戻金が医療貯金として機能するからです。もちろん体調に不安を感じている人には、とりあえず「満期まで続ける」ことをすすめますが、わざわざ高い保険料を支払うことになる「保険期間を終身まで延ばす」ことはすすめていません。2000年以降に販売された医療保険は、先の「終身保険」+「解約返戻金なし」の場合がほとんどです。したがって、若い人にならば「やめたら」と言えますが、中高年に対しては続けられるならば続けたらどうでしょうか、ということになります。

これまでのことはいったん忘れ、続ける損と解約することによる損を比較して、どちらの損が少ないかで思い切って決めてしまうのが得策といえます。

見直しの損か得かは「2000年」を目安に

保険の見直しの目安を考えてみましょう。大手生保の商品から同じ会社の別の商品に15年以内に切り替えた人は、まずは払い済みを検討してください。もしも「アカウント型」と呼ばれるような商品を購入しているのであれば、思い切って解約してもいいと思います。その理由は、保険を継続している間に何度も見直しをしたことで、高い金利の商品が低い金利の商品に入れ換わってしまっていて、貯蓄性という魅力がほとんどない抜け殻商品になっている可能性が高いからです。見直しの際に、他社の商品を新たに購入する予定のある人は、健康状態によって購入できないことも想定して、必ず新しい保険を購入した後に、現行の保険の処理をしてください。新たな保険商品の購入と、現行保険の見直し処理がご自身で完結できない場合は保険代理店に相談してみることをおすすめします。

生命保険の見直しにあたって絶対にやってはいけないことは、貯蓄性があるといわれる保険を簡単に解約してしまうことです。保険料の支払いがきつかったり、保障がさほどいらなくなったりした場合は、ご紹介した「払い済み」という方法が極めて有効です。どうしても現金が必要になったときは、全部ではなく一部を解約するという方法(減額ともいいます)もあります。また、後で手当てできる見込みがあれば、一時的に資金を調達する「契約者貸付」という方法も取れます。借りるときの利率は、高くても年利3%程度ですから短期資金の借り入れにはとても有効です。

率直にいうと保険会社は、終身保険などの貯蓄性保険を解約してもらうほうがうれしいのです。2000年以前の金利が比較的高かったときに契約した貯蓄性商品は、保険会社の重荷になっているからです。そのため場合によっては、昔の終身保険を、掛け捨ての医療保険に切り替えるような卑劣な手も平気で使ってきます。そうした手口には絶対に乗ってはいけません。

保険金不払いを避けるための注意点

保険金をしっかりと受け取るために注意事項をいくつかお伝えしておきます。生命保険はまさかのときに保険金が支払われてこその商品です。そのことがきちんと守られるように、契約者であるみなさんにも最低限の注意は必要です。

1.保険契約のことを家族に知らせておく

生命保険は、こちらから請求しない限り保険金が支払われません。しかも、法律上は3年が経過すると時効となり、その後請求してもお金がもらえない可能性があります。

2.生命保険の契約時にウソをつかない

生命保険はある程度健康でないと購入できない商品です。また契約にあたっては、健康状態の確認があり、保険の対象となる人(被保険者)は、自分の健康状態について保険会社に伝える義務があります。もし、契約時にありのままを伝えなかった場合、保険事故が起こっても保険金が支払われない可能性があります。

3.どこから買うかを考える

通販やネット生保を除くと、どこから買うかは重要な点です。ですから購入したときの担当者がいなくなったとしても、みなさんの契約の保全をしっかりとやってくれる代理店などを選ぶようにしましょう。契約の保全とは、入院したときに給付金を支払ったり、住所変更や契約内容の変更の手続きをしたりすることをいいます。保全よりも新契約の販売に力を入れている保険会社は、極力避けるようにしてください。

藤井泰輔(ふじい・たいすけ)
株式会社ファイナンシャルアソシエイツ代表取締役。生保協会認定FP、DCプランナー、宅地建物取引士。一橋大学商学部卒業後、三井物産、生命保険会社勤務を経て、2000年に総合保険代理店、株式会社ファイナンシャルアソシエイツを設立。法人、個人ともに、常に買う側の立場に立った保険提案で顧客の信頼を集めている。

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