DINKS,生命保険
(写真=PIXTA)

DINKSという家族形態を示す言葉がある。Double Income No Kids(相互収入で子どもを持たない夫婦)のことで、頭文字をとって「ディンクス」と呼ぶ。このDINKSは、まさに現在の家族形態のひとつといえる夫婦の「カタチ」で、独自のライフプランを持つことが特徴だ。

筆者はFP(ファイナンシャルプランナー)として数々のDINKSの相談を受けているが、他ならぬ筆者自身もDINKSだ。FP事務所を経営する自身の一方、2歳下の妻は都内のある大きな組織で働いており、今年の冬で結婚7年目を迎える。

もともとは民間会社での同僚だったが、結婚後お互いに独立・転職し、いまの形態になって数年が経った。そんなDINKSのライフプランを、何回かに分けて分析していきたい。今回は日常生活のなかでも大切な、生命保険との関係から見てみよう。

DINKSと子育て世帯のライフプランの違い

FPとして常道ともいえる生命保険のアドバイスは、「一家の大黒柱が終身保険や医療保険に加入する」というもの。子どもの年齢によっては、返戻率の良い学資保険に入るのもひとつの方法だろう。

DINKSの場合は少し異なる。筆者は結婚後、20代の中頃から外資系の終身保険に加入している。終身保険の保障は夫婦ともに同程度。筆者の方が2歳年上のため、ほんの少し生命保険が高く設定されている。万が一夫婦どちらかに「まさか」の事態があれば、終身保険の保険金を当面の生活費とすることができるだろう。だからといって「余分な保険」に入ることはない。後述する公的保障との兼ね合いも見ながら、効果の高い保険を選択していくことが大切だ。

キーポイントは「公的保険」と「医療保険」

次に日常の病気やケガへの対策はどうか。率直に言って、日々の家計で最も負担感の強いのは「公的保険」だ。筆者は自営業のため1号保険、妻は2号保険に加入している。どちらも所定の収入額は超えているため、お互いの「扶養」に入ることはできない。特に筆者は現在個人事業主のため、健康保険料は全額負担。約2万5000円を毎月支払っており、支払締切の毎月10日が訪れると強い負担感を感じている。

一方で。今夏に個人事業を法人成りすることを決めている。法人を設立すると筆者も2号保険者となるため、負担感は幾分軽減するはずだ(それでも自分の会社から出費ということは変わらないが)。

公的保険に加入していれば安心ということはない。DINKSにおいても、病気の看病や介護の場合は、状況により多額の医療費や介護費用をねん出する必要がある。公的保障の補償範囲を把握しながら、的を射た民間保険に加入しておきたい。

またDINKSは、なにかあったときの対応もスピードを要する。相互収入のため家計、とくに支出は緩めに設定している家庭が多いだろう。病気の場合、傷病手当金などの補完制度はあるが、同じ生活を維持していればとたんに家計が悪化する。病気やケガの場合は医療費の負担も同時進行で進むため、まずは再設計を迅速に進めたい。

筆者の場合は、もしもの場合の医療保険をおおよそイメージしたうえで、各社の保険料を比較し、最も安い共済保険に夫婦ともに加入している。予期せぬ病気やケガの場合も、高額療養費に上乗せすれば、概ね問題ないと考えての対応だ。

実は筆者は結婚する直前に、大きな病気を発症し約10日間入院したことがある。その際は結婚前のため、別々の民間保険に加入していたが、高額療養費と民間保険の保険金で手術費と同等額の支給を受けることができた。DINKSのすべてが公的保障と最低限の民間保険で現在の生活水準と保つことができる、とは断言できないが、参考にして頂ければと思う。

「柔軟性の無い」生命保険に加入してはダメ

DINKSの生命保険相談に乗るときに、力を込めるアドバイスがある。それは「生活がどうなるかはわからない」ということだ。20代や30代の始めにDINKSであることを意識しても、30代後半から子育てが始まる場合もあり、また何かしらの事情で、夫婦どちらかが仕事を続けられない場合も想定される。その場合に大切なのは、「柔軟性のない生命保険に加入しないこと」だ。

どちらかが亡くなったときへの終身保障は仕方がないが、たとえば生存保険のなかで「20年加入して解約返戻金が元本(保険料総額)を超える」という商品がある。もちろん保障内容から判断するのもひとつの方法だが、筆者はDINKSにはお勧めしていない。

DINKSには現在予期せぬことでも、大きく生活スタイルが変わる可能性がある。子どもの誕生など吉事であればうれしいが、そうではない場合も多い。その場合、それまで投資してきた生命保険が大きく元本割れするとなれば、心情的にも良いものではないだろう。

DINKSだからこそ「将来を見る」意識を

この「DINKSだからこそ将来を見る「癖をつける」ことは必要だと思う。それは、生命保険に限ったことではない。さまざまな方向から、「DINKSのライフプラン」を分析していきたい。

工藤崇 FP事務所MYS(マイス)代表
1982年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後上京し、資格試験予備校、不動産会社、建築会社を経てFP事務所MYS(マイス)設立、代表に就任。WEBコラムを中心とした執筆活動、個人コンサルを幅広く手掛ける。ファイナンシャルプランナー(AFP)