35歳前後で月給35万円のサラリーマンは、おおよそ年間60万円の社会保険料を支払い、それに加えて年間数十万円の生命保険料を支払っている計算になります。生命保険料を合理的に節約すれば、その分家計に余裕が生まれるはず。まずは税金よりも高いお金を支払っている社会保険の保障の中身を確認しましょう。そして、生命保険が本当に必要なのかどうかを知るための最低限の知識を整理していきます。

(本記事は、藤井泰輔氏の著書『 どんな家庭でも 生命保険は月5000円だけ 』かんき出版(2017年9月1日)の中から一部を抜粋・編集しています)

健康保険は少ない自己負担で保障充実

生命保険料,書籍
(画像=Webサイトより)

保険制度は仕組みが複雑ですが、健康保険の機能は主に次の3つです。

1.療養の給付

病気やけがをして病院で診てもらうと窓口で治療費を薬局で薬代を支払うことになりますが、個人の負担は実際の費用の3割ですみます。

2.高額療養費制度

3割負担とはいうものの治療費が高額になった場合に、毎月の治療費負担が一定額に抑えられる制度。治療が長引けば限度額はさらに下がります。

3.傷病手当金

病気やけがで働けなくなり、職場からも給与が払われなくなったり減らされたりしたときの休業補償を目的とした制度です。補償されるのは給与日額の3分の2で、期間は休業4日目から最長1年半。その間に給与が支払われているかどうかにかかわらず、それまでの給与の3分の2の支払いが補償されるのです。ただし、傷病手当金はサラリーマンのみに適用される補償で、自営業者(国民健康保険加入者)にはこの制度はありません。

上記の3つの保障内容については、中小企業が加入している健康保険では額面どおりの運用です。一方、民間の医療保険はというと、基本は入院したときに1日5000円とか1万円、手術や先進医療を受けたときに「給付金」などが定額で支払われるだけの仕組みとなっています。

老後のための保障だけじゃない年金保険

年金保険とは、「老齢年金」(長生きしたときの保障)、「障害年金」(障害状態になったときの保障)、「遺族年金」(亡くなったときの保障)という3つの保障を備えた社会保険制度です。この保険のために、みなさんは相当な額の保険料を毎月支払っています。多くの人が、こうした年金保険の機能を認識しないまま生命保険を買っているのです。

まず、これら3つの保障には、国民全員が加入する「基礎年金」と、基礎年金に上乗せして、サラリーマンや公務員が加入する「厚生年金」という2種類の年金があります。サラリーマンなどは「基礎年金」+「厚生年金」の2階建てになるということです。

1.老齢年金

・老齢基礎年金の保障
老齢基礎年金の年金受給額の基本は、年約78万円(月6.5万円)です。保険料を20歳から60歳まで40年間支払った満額が、この金額です。ただしインフレやデフレなどの影響によって、この金額は上下します。払込期間が少なければその分減額されますが、生きている限り一生涯支給されます。とはいえ、自営業のご夫婦が2人とも満額を受け取ったとしても、月13万円程度ですので、これでは働かずに生活するには十分とはいえないでしょう。現行制度では、基本的に65歳からの受給となります。

・老齢厚生年金の保障
サラリーマンなどは、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取ることができます。額はそれまでに受け取った給与の平均と加入期間によって決まります。こちらも死ぬまで受け取ることができます。配偶者などの家族がいれば、亡くなった後もそれまでの額の4分の3が遺族に支払われます。

2.障害年金

・障害基礎年金の保障
自営業者などがもらえる障害基礎年金は、障害等級二級で年約78万円が支給されます。より障害が重い障害等級一級の場合は、二級の25%増しで、障害が継続する限り一生涯支払われます。障害を負った人に子供がいる場合は、第一子、第二子それぞれに年約22・4万円、第三子からは年約7.5万円がそれに上乗せされ、いずれも子供が高校を卒業するまで(障害等級一級、二級の子供の場合は20歳まで)支払われます。

・障害厚生年金の保障
障害年金もサラリーマンなどは2階建てですから、障害基礎年金に加えて、障害厚生年金が支払われます。こちらは、障害基礎年金よりも保障の幅が広く、障害等級三級まで支給されます。また二級までは、配偶者がいる場合は年に約22万円が加算されます。金額は、それまで受け取っていた「給与額の平均」×「保険料の払込期間」で決まりますが、払込期間は最低300カ月支払ったものとして計算されます。

障害年金は、基礎年金、厚生年金ともに、けがにより障害を抱えることになった人ばかりでなく、がんなどの病気が原因で、体に障害が残った人も対象になります。給付の対象となるかどうかは、社会保険事務所や社会保険労務士(社労士)に相談するか、がんなどの場合は、がん相談支援センターなどを活用する方法があります。

3.遺族年金

・遺族基礎年金の保障
「遺族基礎年金」は子供がいないと支払われません。その額は、子供が1人であれば年間約100万円(基本の約78万円+子供1人の加算約22.4万円)で、子供が2人であれば約123万円です。これらの金額が、子供たちが高校を卒業するまで(障害等級一級、二級の子供は20歳まで)支払われます。ただし遺族基礎年金は、障害年金と違ってこの段階で支給が打ち切られます。夫あるいは妻どちらの場合も、遺された人の年収が850万円(所得で655.5万円)以上の場合は、支払われません。

・遺族厚生年金の保障
サラリーマンなどが死亡したときに、遺族基礎年金にプラスして支払われる「遺族厚生年金」は、子供のいない配偶者などにも支払われます。年金額は障害厚生年金と同様、それまで受け取っていた「給与額の平均」×「保険料の払込期間」で決まりますが、払込期間は障害厚生年金と同様に最低300カ月支払ったものとして計算されます。遺族厚生年金は配偶者などが亡くなるまで支払われますが、30歳未満の子供がいない妻は5年間のみ。また遺族厚生年金は、ご自身が長生きできずに老後に老齢厚生年金を十分に受け取れなくても、配偶者が亡くなるまでその金額の4分の3を受け取れる仕組みになっています。くわえて、40歳以上65歳未満の子供がいない妻、もしくは遺族基礎年金をもらっていて子供が高校を卒業したような妻には「中高齢寡婦加算」という上乗せの年金も用意されています。

藤井泰輔(ふじい・たいすけ)
株式会社ファイナンシャルアソシエイツ代表取締役。生保協会認定FP、DCプランナー、宅地建物取引士。一橋大学商学部卒業後、三井物産、生命保険会社勤務を経て、2000年に総合保険代理店、株式会社ファイナンシャルアソシエイツを設立。法人、個人ともに、常に買う側の立場に立った保険提案で顧客の信頼を集めている。