(写真=PIXTA)

生命保険は、住宅に次ぐ人生で2番目に大きな買い物と言われ、世帯加入率は9割とも言われている。しかし、誰もが生命保険に加入する必要があるのだろうか。今回は、生命保険が本当に必要なのかについて考えてみたい。

高額な死亡保険金は必要か

生命保険は、死亡に限らず病気やケガにも備えるものであり、必要か否かと言えば必要なものだろう。人間である以上、死亡、病気、ケガなどは予期せず突然訪れるものなので、経済的に困難にならないよう備えておく必要があるからだ。

ただ、死亡した場合を考えてみると、直接必要になるお金は葬儀代ぐらいであり、それほど高額なお金を準備する必要はない。したがって、葬儀代ぐらいは常に貯金があるという場合には必ずしも保険は必要ないことになる。ただ、家庭の収入を支えていた人が死亡した場合、葬儀代だけではなく、その家族の今後の生活費も必要になってくる。その場合、高額な死亡保険金が必要になる。

そう考えると、将来の生活に困らないだけの貯金が十分にある場合や家族がいない独身者の場合、基本的に高額の死亡保険金はいらないことになる。逆に、十分な貯蓄がなく、幼い子供が多いなど家族が多い場合には、高額の死亡保険金が必要になる。ただ、サラリーマンの死亡に関しては、貯蓄等の自己資産以外にも、遺族年金、死亡退職金・弔慰金などが支給される場合もあるので、それらの額を踏まえて死亡保険金を考える必要がある。

遺族年金は、国民年金保険と厚生年金保険の被保険者に万が一のことが起こった場合に、遺族に対して支払われるものである。遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金に分かれており、支給額は加入している社会保障制度と家族の構成によって異なる。

死亡退職金や弔慰金は、企業の福利厚生として企業が準備しているもので、これら制度がある場合には、「退職金規定」や「弔慰金規定」があるはずなので、万が一の場合にいくら支給されるのか確認しておくとよい。

相続財産が多い人は生命保険の加入を

基本的に保険は相互扶助の精神に基づくものなので、十分なお金がある場合には、保険に加入する必要はないのであるが、お金があるがゆえに生命保険に加入しておいた方がよい場合もある。それは、相続財産が多い人である。資産家は、不動産や株式など、簡単には現金に換金できないもので保有していることが多い。しかし、相続税は、不動産等も含めて総財産に対して掛かってくるが、納税は原則として現金でしなければならない。そのため、多額の現金を用意しなければならない。もし、現金で納税できない場合、滞納処分を受ける可能性がある。そうすると、最悪の場合、不動産を差し押さえられてしまう。

また、遺産が多い場合、親族間での相続争いに発展することも多く、現金等以外の資産の場合、どの資産を誰が相続するかでもめることが多い。そのような時でも、生命保険金である程度まとまったお金があると、現金で資産配分を調整することができ円滑に相続ができる。ちなみに、生命保険金は「みなし相続財産」として相続税の算定の基礎に含まれるが「法定相続人×500万円」までは、非課税となるため、節税効果が高い。

生命保険金額を考えるにあたり、誤解している人が多いものとして、住宅ローンがある。生活費の中には当然住居費も含まれるが、住宅を銀行などのローンで購入している場合、万が一支払者が死亡したときには、ローンの支払いが免除されるよう、通常「団体信用生命保険」に加入している。したがって、このような場合には、住宅ローンの返済金額については、考えなくてよい。もっとも、住居を維持するためには、経年劣化による修繕等は必要になるので、まったく住居費を考えなくてもよいというわけではない。

医療保険の重要性とは

これまで見てきたように、独身者や夫婦共働きで子供がいない場合、葬儀代があれば十分なので、高額な死亡保険金は必要ない。ただ、生命保険は死亡だけを保障するものではないから、医療保険については加入しておいた方がよい。病気の場合、健康保険に加入しているので、医療費の自己負担分は3割で済む。

万が一医療費が高額になった場合でも健康保険組合などから高額療養費が支払われるので、毎月何十万と医療費が掛かるということはない。しかし、重い病気になった場合、長期入院を余儀なくされたり、場合によっては仕事が続けられなくなる可能性がある。そうした場合、経済的に苦しくなる。それをカバーするためにも医療保険は重要なのだ。

このように、生命保険はいざという時に役にたつ金融商品であることは間違いない。ただ、毎月の保険料負担がきつくて生活に余裕がないというのは本末転倒だ。本当に必要な保障はいくらなのか、この機会に見直してみてはどうだろうか。(ZUU online 編集部)