本記事は、木村 孝司氏の著書『あなたは話せば話すほど、嫌われる人?好かれる人?』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

考えることをする男女2人のビジネスマン
(画像=トリックスター* / stock.adobe.com)

思考のフィルターを知って自分を知る

ここまでは、私たちの話し方が、無意識の「前提」や「脳のメカニズム」によって作られていることを見てきました。さらにもう1つ、自分の話し方を形作っている重要な要素があります。それが「思考のフィルター」です。

これは、物事をどう受け取り、意味づけるかという「心のレンズ」のようなものです。人はこのフィルターを通して世界を見て、判断し、行動しています。たとえ同じ出来事でも、人によって全く反応が異なるのは、このフィルターの違いによるものです。

だからこそ、自分がどんなフィルターを通して世界を見ているのかを知ることが、「伝わる話し方」への大きなヒントになります。

1.「思考のフィルター」とは?

私たちは、目の前の現実を「そのまま」見ているわけではありません。無意識のうちに、これまでの経験・性格・価値観・信念などを通して情報を取捨選択し、自分なりに意味づけをしています。例えば、次のようなことです。

  • 冗談を「からかわれた」と感じる人もいれば、「場が和んだ」と受け取る人もいる
  • 沈黙を「怒っている」と解釈する人もいれば、「真剣に考えている」と捉える人もいる

人はそれぞれ異なるフィルターで世界を見て、コミュニケーションをしているのです。

2. 話し方に影響する3つの主要フィルター

ここでは、特に私たちの話し方に大きく影響する「3つの主要フィルター」と、その見直し方について紹介します。

① 個性のフィルター(考え方のクセ)

このフィルターは、物事の捉え方や判断のクセにあたります。例えば、「物事を楽観的に見る人/慎重に見る人」「感情を大事にする人/理論や事実を重視する人」というように、無意識のうちに話し方や行動パターンに表れます。

【見直すヒント】

  • 相手が違う考えでも否定せず、「そういう見方もあるんだ」と受け入れてみる
  • ネガティブな見方が習慣になっているのなら、「それって本当にそうだろうか?」と問い直してみる

② 価値観のフィルター(大切にしていること)

人はそれぞれ「何が大切か」という「心の優先順位」を持っています。例えば、「楽しさ」「愛」「貢献」「成長」など。これが、日々の選択や言葉づかいに大きく影響します。価値観は人によって異なるため、同じ言葉でも受け取り方が違うこともあります。

【見直すヒント】

  • 自分が「これは譲れない」と思うことをいくつか書き出してみる
  • 意見がすれ違ったとき「大切にしているものが違うだけかもしれない」と考えてみる

③ 信念のフィルター(信じていること)

「自分はこういう人間だ」「人はこういうものだ」という思い込みも、私たちの言葉づかいや話し方に深く影響を及ぼしています。例えば、「どうせ私の話なんて誰も聞いてくれない」という思い込みがある人は、話すこと自体を避ける傾向にあります。逆に、「私には伝える力がある」と信じている人は、自信を持って言葉を発することができます。

【見直すヒント】

  • 自分が「信じていること」は何かを振り返ってみる(例:「私は失敗しやすい」など)
  • それが今の自分にとって役立っているかどうかを考えてみる
  • 変えたほうが前に進めるかもしれないと思える信念に少しずつ書き換えていく

3. フィルターが変わると、会話が変わる

これらの思考のフィルターは、自分でも気づかないうちに、言葉づかい・表情・声のトーンにまで影響を与えています。でも逆に言えば、フィルターを少し見直すだけで、話し方も人との関係も自然に変わっていくのです。例えば、次のようなことです。

  • 「自分に自信がない」と思っていた人が「話せるようになってきた」と感じ始める
  • 「意見を言っていい」と信じるようになった人が、会話に参加するようになる

フィルターが変われば話し方はテクニックを超え、本当の意味で変わり始めます。

4. 小さな見直しが、大きな変化を作る

思考のフィルターは、すぐに変わるものではありません。でも、意識をすると確実に変化は始まります。

  • 会話の後に「今、どんな前提で話していたか」を振り返ってみる
  • 相手の反応を見て、「どんなフィルターで受け取ったのか」を想像してみる
  • 「いつもの自分とは違う反応」を、あえて選んでみる

こうした小さな意識の積み重ねが、やがてフィルターの修正につながり、コミュニケーションの質を根本から変えていきます。

自分の話し方を変えたいと思ったら、まずは「どんなレンズで世界を見ているのか?」を知ることから始めましょう。

レンズが変われば、見える世界も、伝え方も、きっと変わっていきます。

家の売り方大全
木村 孝司(きむら・たかし)
メモリーマネジメント®開発者 / 米国NLP協会™認定NLPトレーナー
株式会社アイエヌエー NLPiこころのABC研究所 代表
1967年、滋賀県生まれ。株式会社キーエンスでの営業職を経て、31歳で独立。その後、事業の失敗、家庭不和、子どもが口をきかなくなるなど「暗黒の10年」を経験。その渦中でNLP(神経言語プログラミング)と出会い、話し方やコミュニケーションなどの課題を解決するが、親子関係だけが解決されない。そこで、脳科学・心理学・コーチング・賢者の思考法などを学び、融合することで親子関係の改善に成功。人生が劇的に好転する。この経験を体系化した独自メソッド「メモリーマネジメント®」は、3年間で売上369%、 受講者数357%の成長を遂げ、「子どもへの接し方が変わった」「夫婦関係が改善した」「職場で信頼され昇進した」等、多くの受講者に成果をもたらしている。現在は、企業のリーダー、スポーツ選手、医療従事者をはじめ、様々な専門家や個人に支援を行い、「愛される成功者」の育成を使命に活動中。趣味は絵本の朗読。お気に入りはムーミン・シリーズで、心に届く言葉の力を日常でも大切にしている。
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