確定拠出年金,企業型,個人型
(写真=PIXTA)

今話題の「確定拠出年金」。確定拠出年金は「DC(Defined Contribution Plan)」、または「日本版401K」とも言われる。支払った掛金も、運用の利益も、将来受け取る一時金や年金も、税制上の優遇があるというトリプルメリットが享受できる制度だ。国はメリット満載のこの制度を推進したいと考えているようだ。

とはいえ、まだまだ内容について詳細を知っている人は少ない。今回は確定拠出年金制度の中でも「個人型」と「企業型」の違いと注意点にスポットを当てて説明する。

「個人型」か「企業型」か?

確定拠出年金には、「個人型」と「企業型」がある。「個人型」と「企業型」、どちらに加入しようか悩んでいる人もいるかもしれない。しかし、そもそも、どちらに加入するかを選択できるわけではない。

ざっくりいうと、いわゆる自営業やフリーランスといった国民年金第1号被保険者、会社員でも勤務先に企業型確定拠出年金制度がない会社員は、「個人型」だ。

一方、会社員で企業が確定拠出年金制度を実施している場合は「企業型」になる。

企業型は、原則として掛け金全額を会社が拠出してくれるが、勤務先に企業年金(DC・厚生年金基金・確定給付企業年金・中小企業退職金共済制度など)の制度がある場合とない場合で掛け金の上限は異なる。

型によって、毎月の掛金の上限も違い、細かい制度内容も違うので注意が必要だ。

「個人型DC」の特徴と注意点は

個人型DCでは、国民年金第1号被保険者を1号加入者といい、勤務先に企業型確定拠出年金がない国民年金第2号被保険者を2号加入者という。2号加入者になるには企業型確定拠出年金がないことについて、勤務先の証明が必要になる。

掛金の上限は、1号加入者は6万8000円/月、2号加入者は2万3000円/月となる。下限はどちらも5000円/月である。

第1号被保険者で付加保険料を払っている、または国民年金基金に加入している場合は、両方合わせて6万8000円/月となる。だが、自営業の人が事業廃止後や引退後の生活費のために加入している「小規模企業共済」の月額上限7万円は、DCとは別枠となる。そのため、両方加入すれば合わせた額が「小規模企業共済等掛金控除」となり、節税効果をより高めることができる。

また、国民年金保険料の免除を受けている人(障害基礎年金受給者は除く)、および農業年金の被保険者はDCには加入できない。

企業が拠出が原則、「企業型DC」の魅力は

一方、企業型DCはどうだろうか。

掛金について、個人型では加入者本人が拠出するのだが、企業型は全額企業が拠出するのが原則だ。ただし、2012年1月からは一定の範囲内であれば、従業員が拠出すること(マッチング拠出)が認められるようになった。

掛金の上限は、企業と従業員の拠出額を合わせて、企業年金を実施している企業の第2号被保険者は2万7500円/月、実施していない場合は5万5000円/月である。下限は規約によって異なる。

マッチング拠出をした場合の個人の掛金についても、全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、年末調整で節税の恩恵を受けることができる。

現在、「選択制確定拠出年金企業型」を導入する企業も増えてきている。就業規則など規約の整備が必要になるとはいえ、企業としても「退職金の運用リスクを避けることができる」「優遇税制措置により給与と扱われない」「社会保険料負担の節約にもなる」などのメリットがあるからではないかと筆者は考える。

今回は、個人型と企業型の違いに焦点を当てて説明した。しかし、DC制度はまだまだ奥が深い。現在、公務員と専業主婦はDCの加入対象となっていないが、2017年1月からは個人型の対象となる予定である。この機会に今から制度や加入先、運用商品について勉強しておくことをぜひお勧めする。

小野みゆき
中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP・1級DCプランナー。企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。 FP Cafe 登録FP。