公的年金制度を補う新しい年金制度として、 確定給付年金 に替わり確定拠出年金(日本版401k)を導入する企業が少しずつ増えている。

掛金 が一定額まで全額 所得控除 になるなど税制面でも優遇されることから、 企業型確定拠出年金 がない会社に務めている人や自営業者などでも個人型確定拠出年金への加入を検討する向きもあるだろう。しかし、途中で掛金が負担になる、企業型確定拠出年金がない会社へ転職した場合などで加入後に解約せざるを得ない場合を想定したことはあるだろうか。

確定拠出年金,解約,脱退
(写真=PIXTA)

加入年齢にもよるが、 掛金 を数十年の長きに渡り払い続けることは案外容易ではない。加入した後に掛金の支払いを止めたい場合や、中途脱退して一時金が支給される要件などについて学んでおこう。

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まずは押さえておきたい概要と税制優遇

はじめに確定拠出年金制度の概要と、加入メリットである税制優遇について簡単におさらいしておく。

企業型確定給付年金 企業型確定拠出年金 との大きな違いは、年金額があらかじめ決まっているかどうか、言い換えると資産の運用リスクを誰が取るかだ。企業(正確には企業の運用委託先)が従業員に替わり年金資産を運用し、将来の年金支給を安定して行う制度が企業型確定給付年金である。

一方の 企業型確定拠出年金 では、現役時代に加入者が支払う 掛金 額は確定しているが、運用リスクを加入者が負うため、将来もらえる年金額は受給するまで分からない。

確定拠出年金はそもそも老後資金の自助努力を支援することを目的としている。そのため、 老齢給付金 の受取は原則60歳からとなっている。ただし、企業型確定拠出年金では規約により受取開始年齢の引き上げが可能だ。企業型確定拠出年金に加入している人は事前に担当部署に確認しておくことをおすすめする。

日本ではなかなか導入が進まないが、確定拠出年金には税制上さまざまな優遇措置が設けられている。まず掛金の拠出時には、個人型の場合、掛金は 所得控除 小規模企業共済等掛金控除 )となり、所得税が軽減される(掛金に上限あり)。

企業型の場合、掛金の全額が損金算入されるため企業にとっては利益圧縮につながる。一方、従業員にとっては、企業が拠出した分の掛金は給与とは見なされず、また、上乗せして自らマッチング拠出した場合の掛金額は、個人型の掛金と同様 所得控除 される。配当や売却益などの運用益も非課税だ。

老齢給付金 を給付する際にもメリットがある。年金で受け取る場合は 雑所得 となり、 公的年金等控除 の対象だ。一時金で受け取る場合も 退職所得 となるため、退職所得控除の対象となる。掛金拠出期間が長くなるほど有利に受け取ることができる。

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確定拠出年金は途中で解約できるのか

確定拠出年金に加入した後、途中で解約する(掛金の拠出をやめる)ことはできるのだろうか。また、掛金支払いをやめて中途脱退した場合には、それまで拠出、運用してきた自分の年金資産はどうなるのだろうか。

結論から言えば、中途脱退すること自体は可能だが、他の企業年金制度のように中途退職しただけでは年金資産は手元に戻ってこない。脱退一時金が支給されるにはいろいろな条件をクリアする必要があるのだ。途中脱退ですぐに年金資産は返してもらえないものと思ってはじめるほうがよいだろう。

脱退一時金支給の条件だが、企業型の場合、確定拠出年金加入者が脱退一時金をもらえるのは、資産額が1万5000円以下であるなど非常に限られたケースだけだ。

ただ、通算での掛金拠出期間が3年以下、または年金資産が25万円以下であれば、年金資産をいったん個人型確定拠出年金に移してから、あらためて脱退一時金の給付を請求する方法もある。退職して専業主婦になった、国民年金保険料の全額免除を受けているなどの場合、年金資産が50万円以下であれば一時金請求が可能なケースもある。詳しくは加入している資産管理機関に問い合わせをされたい。

脱退一時金請求で年金資産を清算できない場合、そのまま企業型確定拠出年金で運用、あるいは、企業型から個人型に年金資産を移して、受給開始年齢まで引き続き資産運用を続けることになる。年金資産の移管には数千円程度の移管手数料がかかる。

また、運用口座を維持していくためにも月々数百円程度の口座管理手数料がかかる(運用資産額によっては無料になる機関もある)。運用する資産額やどの金融商品で運用しているかなどにもよるが、ランニングコストも無視できない。

加入後の運用リスクなど考慮を

大企業ばかりでなく、少しずつではあるが確定拠出年金制度を導入する中小企業も増えてきている。確定拠出年金制度を加入時からきちんと活用するためにも、マッチング拠出や税制優遇など加入によるメリットだけでなく、加入後の運用リスクや中途脱退の可能性なども考慮しておく必要がある。長く続けるため負担にならない掛金額を慎重に決めることも大切だろう。

海老原政子 ファイナンシャルプランナー
国内生保の生命保険募集人として勤務。ライフプラン全体から生活者視点・女性目線を活かしたアドバイスが好評。コラム執筆や家計相談、個人・企業向けマネープランセミナーを行う。 エムプランニング 代表。(AFP、住宅ローンアドバイザー)

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