(写真=PIXTA)

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを記念する硬貨第一弾として、1000円銀貨が年内にも発売されるという。材料の割合や価格などについては、まだ何も発表されていないが、販売価格は数千円との情報もある。気になるのは、そもそもお金の額面とコストは見合っているかどうかだろう。

1円玉は作れば作るほど赤字……1円以上の価値あり

コストについては、「国民の貨幣に対する信任を維持するためや、貨幣の偽造を助長するおそれがあると考えられる」として、造幣局から正式な発表はされていない。一方で、各種硬貨に含有されている金属の種類や重さは、公表されている。市場取引価格と合わせると、1枚あたりの原料価格がおおまかに分かる。

たとえば、1円玉は重さが1グラム、100%アルミニウムで出来ている。一方、2016年7月時点のアルミニウムの相場は1キロ当たり約215円などとなっている。

1円玉以外のほかの硬貨では、銅をメインに数種類の材料で作られている。3.75グラムの5円玉は60~70%が銅で残りは亜鉛、4.5グラムの10円玉は95%が銅で残りは亜鉛とスズだ。4グラムの50円玉は75%が銅で残りがニッケル。4.8グラムの100円玉も75%が銅で残りがニッケル。重さが7グラムある500円玉は銅72%と亜鉛20%にニッケル8%が加えられている。

同じく2016年7月時点の相場価格は、銅が1キロ当たり約540円、ニッケルが約950円、亜鉛は約265円となっており、大雑把にではあるが、材料費を推計できる。

2015年度の実績としては、各種硬貨の発行枚数は1円玉が約8200万枚、5円玉が約1億500万枚、10円玉が約2億300万枚となっている。50円玉が約4700万枚、100円玉が約4億1000万枚、500円玉が1億4300万枚で、合計約9億9000万枚だった。

造幣局の2015年度予算を見ると、硬貨を製造する事業にかかる支出のうち、原料費は約26億円で、各硬貨が含有する金属の相場から計算した金額と概ね一致する。さらに原料費以外の費用は約144億円なので、ちょっと乱暴だが1円玉だけはアルミ100%で手間もかからないと想定して重量比の半分程度のコスト、その他の硬貨については額面に比例したコストがかかるものと仮定して計算してみよう。

原料費込みの原価は1円玉が1.8円、5円玉は2.3円、10円玉は3.6円、50円玉は8.7円、100円玉は15.3円、500円玉が64.5円くらいになる。実際には1円玉と5円玉はもう少しコストがかかっているようだが、いずれにせよ1円玉については、作れば作るほど赤字が増えてしまうことに間違いはないようだ。