DC
(写真=PIXTA)

先ごろ、私たちの国民年金や厚生年金といった公的年金の運用を行っている「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」の最新の運用状況が発表された。それによると、平成27年度分の運用実績はマイナス5兆3,098億円となった。

マイナス金利の導入などで、いまや年金資金の運用環境には厳しいものがある。少子高齢化の進展も含めて、将来的に年金給付金が減少する可能性が高いと思っている人が多いのではないだろうか。基礎年金や厚生年金だけでは暮らしていけないかもしれない……、そんな不安を抱いている人が多いということだろう。

確定拠出年金とはどのような制度?

そんな老後への不安の受け皿として、これまであったのが「確定拠出型年金(Defined Contribution Plan=DC)」だ。2001年10月から「確定拠出年金法」が施行されてスタートした。米国の「401kプラン」をモデルにしたため、「日本版401k」とも言われる。

当初は、企業が従来型の「確定給付企業年金(以下、DB)」からDCに移行する受け皿としてスタートしたが、加えて「自営業者」や「企業年金のない企業の従業員」を対象に「個人型DC」も制度化。厚生年金だけでは不安な会社員でも、自助努力によって年金を充実させる方法として注目された。

ところが、この「個人型DC」には様々な問題があり、勤務先に企業年金がある会社員は加入できない、という現実があった。こうした現実を踏まえて、2016年5月に成立したのが「改正DC法」だ。

2017年1月からの実施予定で、これまで個人型DCに加入できなかった企業年金の加入者や公務員、専業主婦など、実質的にすべての現役世代がDCに加入して老後資金を補充する仕組みができたことになる。

また、企業年金の普及・拡大を目指して従業員100人以下の中小企業を対象に企業型DCの設立手続きを大幅に緩和。将来の年金給付事務などの負担を軽減させた「簡易型DC」制度を充実させている。

誰でも「個人型DC」で「マイ年金」作り可能に

DCの最大の特徴は自分で自分の年金を運用することにある。DBのように、企業が何もかも手続してくれる年金と異なり、企業型DC・個人型DCは、自分で金融商品を選択して、自分自身で運用して行く必要がある。

加えて、個人型DCの場合は、年金基金を運営するための銀行や証券会社、保険会社といった「運営管理機関」を自分で選んで加入することになる。金融機関によって年間手数料が異なるため一概には言えないが、掛金が少ない人や年収が低いため、税効果や運用益を上回る手数料が必要になる可能性もある。そんな人には、この個人型DCはあまりメリットがないかもしれない。事前にきちんとチェックしていただきたい。

確定拠出年金のメリットは「老後資金の準備+税の軽減効果」

さて、実際にどんな人が、どんなメリットを受けられるのだろうか。

個人型DCの最大の特徴は、税の軽減効果を受けながら老後資金を形成できる点にある。DCは「掛金」に上限があり、その全額が「所得控除」されて所得税や住民税が軽減される。

具体的に、いくつかのケース別にシミュレーションしてみよう。現在の状況にプラスして「個人型DC」に加入した場合をシミュレーションしてみよう。現行では、「基礎年金+厚生年金+個人型DC(年額27.6万円)」だが、改正後は次のようなパターンが新たに加わる。

1. 厚生年金+企業型DCに加入していたケース
基礎年金+厚生年金+企業型DC(年額42万円)+「個人型DC(年額24万円)」

2. 厚生年金+確定給付型(DB)の加入者のケース
基礎年金+厚生年金+DB+「個人型DC(年額14.4万円)」

3. 厚生年金、DB、企業型DCに加入していたケース
基礎年金+厚生年金+DB+企業型DC(年間18.6万円)+個人型DC(14.4万円)