DC
(写真=PIXTA)

最近、テレビや新聞で見る言葉に「老後破産」「下流老人」というのがある。現役世代の半分以下の収入しかない人を「貧困層」と呼ぶが、その貧困層の割合が60歳以上の老人に増加しているというデータも出ている。

厚生労働省の国民生活基礎調査でも65歳以上の単身男性の38.3%、単身女性の52.3%(ともに平成19年)が貧困層だとされている。単身という条件付きだが、定年まで勤務して普通に退職金を受け取った人でも、貧困層に陥り下流老人の仲間入りをしてしまう。そんな可能性があるわけだ。

なぜ、そんなことになるのか。その背景の一つにあるのが「退職金」の減少だ。日本の景気がまだ順調だったころには、年功序列で定年まで働けばすべての社員が一定額の退職金を受け取れた。しかし、近年、その退職金に大きな格差が出ている。

減少傾向にある「退職金がある」企業

厚生労働省の「就労条件総合調査結果の概要(平成25年)」によると、退職金給付制度そのものがある会社が75.5%。4社に1社は退職金制度がない。20年前の平成5年には92.0%の企業に退職給付金制度があったことを考えると、この20年で退職金にまつわる状況は大きく変わったことが分かる。

さらに、企業規模別に見ると常用労働者30〜99人の企業では72.0%。同1,000人以上の企業規模では93.6%。企業規模によっても大きな格差があるということだ。退職金が、老後の重要な資金源だった時代は、いまやなくなりつつあるといえそうだ。

さらに、最近の傾向として大きく変化しつつあるのが「企業年金制度」そのものだ。かつては、企業があらかじめ年金給付金の額を決めて運用された「確定給付型年金(以下、DB=Defined Benefit Plan)」が主流だったが、2001年に導入された「確定拠出年金(以下、DC=Defined Contribution Plan)」が伸びている。企業型DCを導入している企業は、全体の54%に達する。

DCとは、企業が拠出する金額をあらかじめ確定させたもので、その拠出された資金を運用して行くのは加入者自身、つまり従業員が運用する年金制度だ。企業や従業員によって格差が拡大してしまうのは、ある意味で時代の流れと言えるのかもしれない。

とはいえ、確定拠出年金は2017年1月からさらに制度改正されて、退職金が減少して行く現実を自己責任でカバーできる制度に生まれ変わろうとしている。税制面でのメリットもあり、新しく制度変更されるDCの詳細な情報を見てみよう。