拡大する年金格差、解決策は自助努力

現在の70代以上の親世代に対して、30代、40代の子供世代は同じような年金給付を受けられない……。よく耳にするフレーズだが、その現実を理解している人は少ないのかもしれない。周知のように、現在の公的年金制度というのは、現役世代が納めた年金保険料を原資として年金受給者に年金を支払っている。

自分自身が蓄えた資金を、自分が老後になった時に使うという仕組みではないわけだ。そこで問題になるのか少子高齢化で、30〜40代が60〜70代になった時には、その世代を支えてくれる世代の人口が少なすぎて支えてくれない。これが、30〜40代の現在の現役世代の大きな課題と言える。そもそも、運用環境も大きく異なる。現在の70歳以上の親世代の企業年金の運用は原則として年5.5%の運用利回りを保っていた。ゼロ金利が導入されている現在からすれば夢のような運用利回りだ。

では、どうすればいいのか。そこで注目したいのが前述の「DC(確定拠出年金)」だ。「DB(確定給付型年金)」は、将来の年金給付金額を約束するために、運用難や会社経営に問題が出てくれば対応できない。しかし、企業が給与の一定割合の金額を約束するDCであれば、あとは従業員個人の運用能力の問題となる。

問題は、将来のインフレ率や経済成長率、物価上昇率などによって大きく変化するため、現在の現役世代が将来的にどの程度の年金を受け取れるようになるのか……。それを予想するのは非常に難しいということだ。

やはり「自分の年金は自分で作る」という発想をベースにしたDCが、将来を考えると必要となるだろう。退職金は将来どうなるか分からない、公的年金のようなDBも将来どうなるのかわからない……。とすれば、自分の年金は自分で運用して形成するDCでの運用も取り入れておくことが肝要だ。

実際に、2017年1月からは、これまで自営業者と企業年金のない会社の従業員にしか加入条件が与えられていなかった「個人型DC」が、すべての現役世代が加入できる制度に生まれ変わる。

DBがすでにある会社の従業員は無論のこと、企業型DCがある企業の会社員でも、今回の改正により個人型DCに加入できるようになった。専業主婦、公務員といった企業年金とは無縁の人たちも、個人型DCを利用することができるようになる。

個人型DCのメリットは、退職金を自分でプランニングして、運用管理機関(金融機関)を自分で指定し、金融商品も自分で選択できる。まさに、オーダーメイドの年金を作ることができるわけだ。そのためには資産運用の勉強をして、自分の運用能力を高めなくてはいけない。場合によっては、資産運用によって大きなマイナスになってしまう可能性だってある。そういう意味では、メリットも大きいがデメリットもある。きちんとこの制度を理解して進めることが大切と言える。

退職金、年金、どちらにしても節税効果あり

さて、その新たにスタートするDCだが、やはり大きなメリットの一つが「税制優遇措置」が大きいことだ。まず積み立てるときに「掛金」全額がその年の所得税や住民税から控除される。

さらに、運用期間中の配当や利息などに掛かる運用益に対しても、通常であれば20.315%の税金が源泉徴収されるのだが、これらもすべて非課税になる。そして、何よりも大きなメリットがDCを受け取るときにかかる税金だ。60歳になると受け取ることが可能になるのだが、受け取り方には2種類あって、次のようにそれぞれ税金を減らす効果がある。

1. 退職金として受け取る
税制上は「退職所得」として計算されるため、加入期間に応じて最高で1,500万円までは非課税になる。(加入期間30年の場合)

2. 年金として受け取る
年金で受け取る場合には「公的年金控除」の対象となるために、公的年金の合計額は年間70万円(65歳未満、65歳以上は120万円)までは非課税になる。他の年金と合わせてだが、税効果は高い。

退職金として受け取るか、それとも年金として受け取るのかは、将来の状況によって決めればいいのだが、退職金も年金も、両方とも将来の受取額は減少して行く可能性が高い。DCを使って減少して行くリスクをヘッジ(回避)しておくのは、ある意味非常に賢い方法と言えるだろう。(提供: 確定拠出年金スタートクラブ