「坊主丸儲け」という言葉を、誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。この言葉の語源は、「お坊さんは他の商売と違い、元手をかけず利益がそのまま手に入る」という意味だ。現代だと、「お寺は税金がかからないから儲かる商売」というふうに受け取られるだろう。実際のお寺の税金の仕組みはどうなっているのだろうか。

基本、お寺に税金はかからない。その理由とは?

(写真=PIXTA)

一般に、お寺として建物や土地を有し、宗教事業を行っているところは「宗教法人」という法人格を有していることが多い。宗教法人は、民間企業とは異なった考え方で課税が行われる。理由は、「宗教には公益性がある」と判断されているためだ。

一般に、宗教法人は、古くからの伝統や慣習を引き継いでいくという役割がある。また、寺社仏閣には、国宝や重要文化財が多数保管されており、これらを維持管理していくには多額の費用がかかる。さらに、憲法20条では信教の自由が保障されており、宗教法人の宗教活動はこれに資するものとみなされている。つまり、宗教法人の事業は、それ自体の利益を追求する営利目的ではなく、広く国民や文化を保護するための公益事業だと考えられているのだ。

それゆえ、その公益事業の保護や育成を行うべく、ここから生じた所得については原則として課税を行わないこととされている。

非課税となるお寺の所得とは

では、実際に非課税となるお寺の運用所得はどのようなものだろうか。主なものは次のようになっている。

法人税・事業税・住民税:収益事業以外の事業から生じた所得
所得税:受取利子、受取配当金、利益の分配並びに報酬及び料金
登録免許税:境内地及び境内建物の取得登記など
関税:神仏の像や絵画、その他祭具等
印紙税:金銭及び有価証券の受取書
不動産取得税、固定資産税:境内建物及び境内地など
都市計画税:固定資産税の非課税の土地家屋

初詣の際のお寺へのお賽銭やお寺のお守りは非課税であることは多くの人が知るところだろう。これは、お賽銭やお守りの購入の背景に信仰があると考えられるためだ。この他、法事や墓守、檀家からのお布施など、お寺の公益事業に係るものについても非課税となっている。

お寺でも払わないといけない税金

ただ、課税しないのはあくまでも「公益事業から生じる所得」だけだ。公益事業を行うお寺であろうとも、収益事業から生じた所得には課税される。ここでいう収益事業は、法人税法施行令第5条に規定されている。ここでは細かい説明を省略するが、例をあげると次のようなものがある。

さきほど、お寺のお守りの購入は非課税であると述べたが、お寺であっても、絵ハガキやカレンダー、ろうそくや先行、お花など、一般の民間のお店で売られているようなものを販売している場合には法人税が課税される。また、仏前婚の儀式そのものは宗教行事であるため非課税だが、その後の披露宴は宗教行事ではなく、民間のホテルや結婚式場の収益事業と競合するため課税対象となる。

この他、月極で駐車場の提供を行った場合の使用料、檀家以外の者に対し、お寺の僧侶が出席しない形での告別式のために本堂を使用させた場合の利用料も課税対象となる。

この収益事業云々が問われるのは、あくまでもお寺という宗教法人そのものが稼得した所得についてだ。収益事業を一切行っていなくても、法人の理事や従業員である僧侶に支給した給与などについては個人の所得税が課されるため、お寺は源泉徴収や年末調整などを行わなくてはならない。この「一雇用主としての義務」については、民間の法人や個人事業主と変わりがない。

「お寺だから」税務署のチェックが厳しい

さらに、昨今は「お寺だから」こそ、税務的には厳しい環境におかれている。つまり、税務署のチェックが厳しくなっているのだ。理由は宗教法人の特殊性にある。

「収益事業を行っていたら課税」とはいえ、それでも民間企業に比べればかなり税制上優遇されているのが宗教法人だ。そのため、これを抜け穴とした脱税が行われるケースも中には存在する。そのため、税務署もこの摘発に躍起になっている。

お寺の宗派とは関係のない、または関係があるとしても過度に趣味性の高い資産は課税の対象となる。相続税法においては、原則として仏像や仏画など、儀式に使用する仏具については非課税とされるが、それが儀式のためではなく、個人の趣味とされた場合は相続税か課されるのだ。また、こういった品々を頻繁に売買していた場合には、その公益性が疑われることにもつながりかねない。

さらに、お寺で使う車についても、国産の中級車レベルならまだしも、メルセデスやポルシェなどの高級車など不相応なものである場合には、合理的な理由がないならば課税の対象になる可能性が高い。

さらに、お寺そのものに脱税の意がなくても、周囲の人間が脱税に利用しようと考えることもある。たとえば、檀家がお寺を相続税逃れの手段にするケースだ。「菩提寺への寄附」と偽って現預金を隠し、課税を免れようとするものだ。実際の寄附が行われていないので、ちょっと調べればすぐにバレてしまうようなものなのだが、高齢者の中には「お寺は税金的に特別扱い。だから税務調査は入らない」という先入観を持ち、名義預金のような課税逃れを考える人も珍しくない。

こういった背景から、年々、税務署の宗教法人に向けるまなざしは厳しくなっている。2000年以降は政府においても宗教法人課税について頻繁に議論されるようになったため、なおさらだ。特に多額の寄附が行われた場合、通常の宗教事業とは別に新たに飲食店経営など収益事業を開始した場合は、税務署のチェックが入りやすい。

観光名所となっているような一部の大寺院を除き、多くのお寺は、限られた予算の中で儀式を行い、仏具や仏閣、土地を管理していかなくてはならない。日本人の宗教離れが叫ばれる昨今、台所事情は尚更苦しいだろう。加えてこの税務署な厳しさだ。「坊主丸儲け」と世間でささやかれるほど、現実のお寺運営はラクではないのである。

鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。現在、外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、数字に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、経済的DVにまつわる心理についても独自に研究している。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。ブログ「 税理士がつぶやくおカネのカラクリ

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