会社員に年末調整はつきものだ。テレワークが増えてきた昨今、会社の恒例行事に疎くなりがちだが、あっという間に年末調整の時期はやってくる。抜け漏れがないよう、今から年末調整の基本を確認しておこう。

鈴木まゆ子
税理士・税務ライター
中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。

「年末調整は誰もがする」とは限らない

(写真=PIXTA)

「会社で働いていたら年末調整をするもの」と思う人が多いが、実は全員が年末調整をするわけではない。年末調整をするには、ある書類の提出が必要だ。仮にこの書類を提出しても、状況次第では年末調整がされないケースもある。

●年末調整に必要な書類とは

「正社員やアルバイト・パートで働いて年越しをすれば年末調整を受けられる」というのが一般的な認識だが、実際は何もなしで自動的に年末調整が行われるのではない。勤務先で年末調整を受けるには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しなくてはならない。

この書類は、個人の状況を確認するために非常に重要なものだ。主に次のような項目がある。

 勤務先の名称・法人番号・所在地
 正社員やアルバイト・パート本人の氏名・マイナンバー・住所・生年月日
 世帯主の氏名および本人との続柄
 配偶者の有無
 配偶者や扶養親族の氏名・続柄・生年月日・本年中の所得の見積額・住所など
 本人や家族が障害者・寡婦または寡夫・勤労学生に該当するかの確認

このような項目から配偶者控除や扶養控除、障害者控除や寡婦(寡夫)控除、勤労控除といった属人的な控除が適用されるかどうかが判断される。

●それでも年末調整をしない人とは

ただ、この「扶養控除等申告書」を提出しても年末調整されない人もいる。以下のどれかに該当する人だ。

 給与年収が2000万円を超える人
 災害減免法により給与から天引きされる源泉所得税の徴収猶予や還付を受けた人

海外転勤や死亡退職、うつや病気を理由にそのまま退職した人などは、年の途中であっても出国や退職をした日をもって年末調整を受ける。会社で働いたまま年越しをし、「扶養控除等申告書」を提出して年収や災害減免法といった特殊な要件に該当しないなら、通常は年末調整を受けることになるのだ。

【参考】年末調整の対象となる人(国税庁)

年末調整しなくても確定申告は必要

年末調整をしないから何もしないでよいわけではなく、確定申告は必要だ。副業があれば納税することもあるが、1つの会社に勤務しているだけなら多くの人は所得税の源泉徴収によって「税金を納め過ぎ」の状態になっている。適正な納税はもちろん、払い過ぎた所得税の還付を受けるためにも確定申告は必要だ。

●確定申告の期限

所得税の確定申告は通常、翌年2月16日から3月15日(土日祝日のときはその次の平日)までに行う。ただし税金の還付を受けるためだけの確定申告なら、翌年1月1日から提出可能だ。納税なら3月15日までに税務署や金融機関で納付しなくてはならない。還付なら申告から1ヵ月~1ヵ月半後に本人口座に還付金が振り込まれる。

還付申告は納税する確定申告と異なり、申告対象となる期間の末日の翌日から5年間行うことができる。とは言え、遅い申告はやめたほうがよい。住民税で損をするからだ。

確定申告した所得や各種控除の情報は住民税の計算のベースになる。住民税は所得税と異なり、市区町村が税務署から年末調整や確定申告のデータをもらって4~5月に計算し、6月上旬には納税者に納付税額を通知する。確定申告をしなければ翌年の住民税が高くなるかもしれない。だから還付申告も3月15日までに済ませたほうがよい。

なお2019年分については新型コロナウイルス感染症の影響により、申告期限が3月16日から4月16日に延長された。コロナ禍の影響で申告が間に合わない場合、個別に申告期限を延長する手続きをとれば、4月17日以降であっても期限内申告として扱われる。手続きは申告書の第一表の右上に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と一言書けばよい。

しかし、この個別延長手続きは永遠にできるわけではない。コロナ禍が終息すれば2ヵ月以内に提出を促される可能性がある。

【参考】申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ(国税庁)

●確定申告の必要書類

確定申告には確定申告書Aまたは確定申告書Bが必須だ。このほか、「マイナンバーカード(プラスチックのカード)」か「通知カード(紙のカード)+運転免許証などの身分証」が必要になる。税務署や確定申告会場で直接提出するなら提示すればよいが、郵送ならばコピーの添付が必要だ。e-Taxならばこういった提示や添付は不要になる。

従来、サラリーマンやアルバイト・パートといった給与所得者が確定申告を行う際、給与所得の源泉徴収票の添付が必要だったが、2019年分以降は不要になった。これ以外の添付書類は申告の内容によって異なるのでその都度確認してほしい。

●年末調整も確定申告もいらない人もいる

中には年末調整も確定申告もいらない人がいる。それは年収103万円以下の給与所得者だ。アルバイトやパートの多くは月々の給料から天引きされている税金がないため、年末調整をしてもしなくても所得税は0円なのだ。

ただし、複数の勤務先でアルバイト・パートをしている場合、1ヵ所からもらう給料が103万円以下でも確定申告は原則として必要になる。

年末調整をしなかったときに生じる2つのデメリット

もし年末調整をしないでいると、次の2つのデメリットを被ることになる。

●税金を払いすぎの状態になる

年末調整をしないと、税金を払いすぎの状態を放置することになる。多くの会社員は毎月の給料から一定の所得税が源泉徴収されているからだ。源泉徴収では、少し多めの所得税が天引きされている。

一方、年末調整は1年間の所得額や所得控除を確認して本来あるべき所得税の額を算出し、天引きした所得税を精算する作業だ。天引きが多ければ還付されるし、少なければ年の最後の給料から徴収される。

なお、年末調整では月々の源泉徴収では考慮されない生命保険料控除や社会保険料控除といった各種控除が加味される。大抵のサラリーマンは年末調整の結果、納めるべき所得税はぐっと少なくなる。年末調整をしなければ還付される税金が戻ってこない。

また、過払いになるのは所得税だけではない。既述のとおり、住民税は市区町村が所得税の所得や各種控除の情報を受けて計算し、個人に納税額を通知する仕組みだ。年末調整で一切所得控除がされなければ当然翌年6月以降の住民税の計算にも影響し、高い税額が算出される。

年末調整の無視は2つの税金の損を招くのだ。

●確定申告の手間が面倒

「年末調整しなくても確定申告をすればいいや」と思う人もいるかもしれないが、確定申告は手間のかかる作業だ。自分で各種控除を計算しなくてはならない。特に2020年分以降は配偶者特別控除だけでなく、配偶者控除の計算が複雑になっている。会社の総務や経理が処理するなら5分で済むところ、素人が手計算したら1時間かかるかもしれない。年末調整をスルーすると確定申告にかかる時間の分だけ損をするのだ。

書類を確認して控除漏れを防ごう

年末調整で損をしないためには、控除漏れを防ぐことが肝心だ。すべての所得控除・税額控除が年末調整の対象になるわけではないが、かなりの部分が年末調整で控除することができる。次の控除に漏れがないかどうかを必ずチェックしよう。

  1. 配偶者控除(年齢・所得額・障害の有無の確認が必須)
  2. 配偶者特別控除(所得額の確認が必須)
  3. 扶養控除(年齢・所得額・同居の有無の確認が必須)
  4. 障害者控除(障害の程度と同居の有無の確認が必須)
  5. 寡婦(寡夫)控除(所得額や子どもの有無により異なる)
  6. 勤労学生控除(所得額や就学状況の確認が必須)
  7. 生命保険料控除
  8. 地震保険料控除
  9. 社会保険料控除(通常は会社から社会保険料天引き、別途加入しているときは自己申告)
  10. 小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなどが対象)
  11. 住宅借入金等特別控除(2年目以降)

これらのうち、6.から11.は会社に控除証明などの書類を添付する必要がある。1.から4.に関しては、配偶者や親族が国外に住んでいるなら送金証明書類の提出が求められる。

国税庁では毎年、年末調整の担当者向けにチェック表を作成している。こちらで確認をして抜け漏れがないようにしておこう。

【参考】令和元年分 年末調整チェック表

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