テスタさんが株式投資に出会ったのは、大学を卒業した後のことでした。両親はどちらも公務員。親が毎日、満員電車に揺られて働きに行く姿を見続けて、自分は違う生き方をしたいと感じるようになったそうです。

(本記事は、投資術研究会編集の『カリスマ投資家たちの株式投資術』=KADOKAWA、2017年12月22日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

フリーターから一流投資家へ

テスタさん プロフィール
居住地 東京都/性別 男性/年齢 30代/職業 専業投資家
投資歴 12年/運用資産 15億円

(画像=Webサイトより)

「会社勤めの選択肢をなくすとしたら、会社を立ち上げるか、投資でも始めるか、とボンヤリと考えていました。2005年頃、大学を出てフリーターをしながら暮らしていたある日、株についての本を手に取りました。折しも株ブームで、各出版社から株で稼ぐためのハウツー本が続々と刊行されていた時期。『デイトレードなら企業知識はいらない、業界研究は必要ない』という本の宣伝文句に魅了され、これなら自分でもできるんじゃないか、これで暮らせるだけのお金が稼げるならとても楽じゃないかと思い、やってみてダメだったら別の道を探せばいいやと軽い気持ちで始めました」

初めの頃は失敗も重ねましたが、今では資産10億円を数える成功を収めています。初めのうちこそ本の謳い文句通りに無知識でトレードしていたそうですが、経験から培われた理論をお聞きすることができました。

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ルールはいずれなくなる

テスタさんは自分の投資方法について、今は特に動き方を決めているわけではない、といいます。というのも、「相場に慣れると意味がない」こと、「ルールがないのが理想の状態」であるということを体感したからなのだそうです。

「株式投資初心者は、自分の行動の方程式を作り、それに当てはめて行動をしがちです。相場が〇〇になったら買い、〇〇になったら売る、何ティックでどうなるというふうに、動き方をガチガチに決めて行動してしまいます。昨日から株を始めたようなまったくの初心者にはルールを作って投資していくことは大事であり、否定するわけではありませんが、いつまでも意識するものではないでしょう。なぜなら、相場に慣れるとルールは意味がないからです。人間はルールを守れない生き物ですからね」

実際にテスタさんも、初心者の頃は自分で作ったルールを守れないことが多かったそうです。

「自分の基準に達したので損切りしようとしても、騰がるかもしれない期待感から損切りできずに、結局、損失を被ることはよくありました。でも、何年も投資を続けていくうちに、最初の頃に作ったルールを無意識のうちに守りながら行動していることに気づいたんです。その時点で、もうルールなんて無駄で意味がないと思い、あえて確認することもなくなりました」

もし、全財産をつぎ込んで投資した企業が倒産してしまったらどうなるでしょうか。不祥事の発覚や倒産などが発生した場合、もしかするとその企業の株は紙クズと化す可能性も十分に含んでいるのです。自分で騰がりそうだと思った企業に投資するのはいいとして、失敗した場合のバックアッププランを常に頭の中に入れておかなくてはいけないということです。

初心者の頃に作ったルールを意識することがなくなったときが、投資家としてのひとつの到達点であるとテスタさんは考えています。自分の頭の中だけで状況や情報を分析できれば、あえてルールを作ろうとは思わなくなるでしょう。ある程度、基本を押さえているなら、時にはそれを無視したり、戦略に柔軟性を持たせることも可能です。ただし、投資の時間軸によってとるべき手法が異なっているということは、テスタさんも言及していました。

「短期、中長期、長期といろいろな時間軸がありますが、自分がまだ手を出したことのない時間軸にチャレンジするときは、一度初心に返って、守るべきルールを確認してから行動を起こすようにしましょう。資金力に応じて時間軸を変えてきましたが、それは共通のルールや作戦が通じることはまずなかったからです」

わかりやすいものに投資するのがおすすめ

「短期の場合であれば、その時間軸が短ければ短いほど、今騰がるだろうという銘柄を買うことが大事です。『今この瞬間に騰がる』と思える銘柄なら、そのとき騰がったにせよ騰がらなかったにせよ、すぐに売れるので時間効率がよく、大きな利益も狙いやすいので、資金的体力があまりない初心者にもおすすめです」

今、テスタさんが注目するのはゲーム株です。その理由は「わかりやすい」からです。

「ゲーム会社だと、その会社のゲームソフトの発売日、またはライバル社の製品の発売日や、どの程度の人気になっているのかがすべてインターネットで検索すると出てきます。これがゲーム業界の一番の魅力です」

これが例えばネジの製造会社だとすると、新商品のネジがいつ発売されて、それがどのくらい売れるのかという情報は、その会社の決算が出ない限りは把握することが難しいでしょう。ゲームは一般の人に売り出すものなので、特殊な業界や製品を扱う業界に比べて情報がつかみやすいのがメリットです。その中でもおすすめはゲームを専門に取り扱っている企業です。シンプルにゲーム専業なら、これくらい売れればだいたいこれくらいの決算になるというのがわかりやすいためです。

初心者のうちは、何をやっているのかがわかりやすい会社を調べて投資していくとうまくいきやすいので、必然的に自信がついてきます。ただ、わかりやすい会社・業界は、それだけにライバル投資家も多くなりがちです。そのため、単純にわかりやすいから勝ちやすいといえるわけではありませんが、それでも有効な方法です。もし、これから投資を始めるあなたが特殊な業界の知識がある、または特殊な業界の出身者であるというなら、それだけで他者より一歩有利な立場にあります。ライバルが少なく、読みにくい業界の知識は、投資の世界できっとあなたを助けてくれるでしょう。

危険な賭けには出ないこと

テスタさんは、買うときにあらかじめ売るタイミングを想定して買っています。しかし、自分が思ったほどその会社の商品が売れていないなどの不測の事態が起こった場合、その時点ですぐに売るそうです。とにかく、期待はだいたいの場合、無駄に終わります。損切りするときは思い切って売ってしまわないと、いずれ大きな損失として自分に跳ね返ってくる可能性大です。

「最も怖いのは、最近の神戸製鋼所のようなケースです」

データが改竄された同社製のアルミや銅製品が自動車や航空機、防衛産業など多くの分野で使用されていたことが明るみに出て以降、同社株の時価総額は1800億円弱減少しました。

このような企業による不祥事はいくら決算書を見たところで予測できるものではなく、会社内部の人間しか知りようがありません。投資家からすれば、どうあっても避けられない紛れもない不測の事態なのです。一つひとつの企業単位で見ると、このような外部では知りようがない不測の事態を予期することは不可能ですが、発生することを見越して行動することは可能です。

実際、これまで神戸製鋼所に限らず、東芝、シャープやライブドアなど昔から似たような出来事は繰り返し起きていました。自分が株を持っている会社にも同じことがいつでも起こりえると肝に銘じておくことが大事で、そうなっても自分が破産しないような立ち居振る舞いを心がけておくことで、生き延びる確率は高くなります。

最もダメなのは、ある特定の1社にだけ全力信用買いして、自分の全財産よりも大きなお金を一点に集中してしまうことです。よくないこと、突拍子もない事態は避けることができません。そうなったときに生き残れるポジションをキチンととれているのかをいま一度確認して、今後のリスクマネージメントを充実させていきましょう。

一度でも勝つと味をしめてしまって、どうしても欲が出がちです。しかし自制をきかせて堅実に投資を重ねていくことが、最終的な勝ちを得るためには必須の策といえるでしょう。熱くなりがちな性格の持ち主であればなおのことそうです。今、勝っているにしても負けているにしても、熱くなっているなと思ったら、少し画面から離れてみることも大事です。

市場全体には目を向けない

「基本的に市場全体の予測はこれまでにしたこともないし、これからもすることはないでしょう。厳密な意味での市場予測は不可能であり、意味がないからです」

明日の相場を予測するものとして、例えば今なら、北朝鮮の動向、アメリカのトランプ大統領の発言などが考えられます。しかし、明日にも東京で大地震が起きたなら、どうでしょうか。現段階で立てている予測はすべてが無意味なものとなりますね。地震が起きなかったとしても、アメリカと北朝鮮が戦争を始めたらどうなるでしょうか。それによっても株価は影響を受けることになるでしょう。

「相場全体に影響を与える事象の一つひとつに目を向けるのは事実上不可能ですし、むしろ相場全体は見ないほうがいいでしょう」

相場全体の情報に気をとられてそちらにポジションを傾けていては、あまりよい方向に行かないだろうとテスタさんは指摘しています。重要なことは、今自分が持っている会社の株を自分でキチンと予測できるかどうかであって、決して日経平均がどうなるかではありません。多数ある情報に踊らされないで、自分に必要な情報を選択入手することができるかどうかが大事になります。

これまでにもリーマンショックをはじめとして、数多くの〇〇ショックが市場を襲いましたが、予測できないところからくるからショックなのです。予測できるとしたら徐々に下がっていくので、それは肌で感じることもできるでしょう。

「結局のところ、相場全体のことはどうせ予測できるものではないので、気にしないことです。騰がるのか、下がるのかを考えるのではなく、騰がったらこうする、下がったらこうすると考えて投資したほうがいいでしょう」

最後にこんなアドバイスをもらいました。

「株式投資で一番重要なのは、最後に勝つことです。1年目、2年目で勝っても3年目に〇〇ショックがきて全財産を失いましたでは、株をやっている意味がありません。株をやめるときというのは、だいたいが、大きく負けたときです。1億円貯めたらやめよう、と思っていても、そのときにはきっと毎月何百万円もの収入を得ているはずです。この状態でやめる人はまずいませんし、ずっとこの生活を続けられたらいいと思うでしょう。そのためには今勝つことを考えるのではなく、将来勝つことを考えましょう」

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