会社で証券ディーラーとして働いていました。個人投資家に転身するきっかけとなったのは、2013年に行われた信用取引の規制緩和でした。証券の世界にいたヤーマンさんですから、初心者が躊躇する、というよりも手を出すべきではない信用取引にも抵抗がなかったそうです。

(本記事は、投資術研究会編集の『カリスマ投資家たちの株式投資術』=KADOKAWA、2017年12月22日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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カリスマ投資家たちの株式投資術
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

証券ディーラーを経て個人投資家へ

ヤーマンさん プロフィール
居住地 大阪府/性別 男性/年齢 32歳/職業 美容室経営
投資歴 9年/運用資産 0万円(今は美容室経営に集中しているため)

カリスマ投資家たちの株式投資術
(画像=Webサイトより)

32歳のヤーマンさんは現在、美容室を経営する兼業投資家です。もともとは、とある証券ヤーマンさんは証券会社時代に株式投資を始めて今年で9年目。会社を辞めてからしばらくは個人投資家として株取引一本で生活していましたが、現在は株で得た資金をもとに美容室を経営しています。順調に業績を伸ばし、今では本店に加えて支店を2店舗を抱えるまでになっています。株式投資で得た経済の知識が、ヤーマンさんの経営手腕にいかんなく発揮されているようです。

「今は、(株は)時間があるときに少しイジるくらいですかね」

しかしそれでも利益は順調にあげていて、ネット上での株仲間との交流も続けています。

「今後も株式投資とは、お金を増やせるよいツールとして付き合っていくでしょう」

狙うべきは新興市場

株式投資を始めてからずっと同じスタイルを貫いてきたというヤーマンさん。その作戦は、狙う銘柄と株とお金をどう捉えるかという意識の部分にありました。

「ただし、すべての人に私の作戦が合うとは限らない。私の戦略の中で使えそうなものがあれば参考にして、自分独自のスタイルを作り上げてほしい」

人によって資金力や取引にかけられる時間は様々ですし、トレード環境もまったく同じという人はいません。だからこそ、そっくりそのまま真似をするのではなく、自分で考えて成長していかなくてはいけません。ヤーマンさんは、ジャスダックやマザーズなどの新興市場を中心に取引を行っています。

「新興市場のほうが値動きが大きいので、デイトレードの場合は利益をあげやすいからです。市場が賑わい始めたときが自分の動くときです」

特定の銘柄が騰あがるとそれにつられて一緒に騰がる銘柄があることに気がついたヤーマンさんは、そのような銘柄を発見しだい、買い入れを進めていくようにしています。特定の業種にこだわらず、騰がり始めたら買うのがヤーマンさんのスタイルです。

お金は数字として捉える

そしてもうひとつのポイントは、相場に臨むときの心構えです。

「どうしても買い入れるときの抵抗感が消えない人は多いのではないでしょうか。そんな人の解決策は、お金を数字として認識することです」

10万円のソファは抵抗なく買えるのに、10万円の株券を買うことに抵抗を感じるのはなぜでしょうか。ソファなら買ってしまえばそれまでで、むしろ時がたつにつれて徐々に価値を失っていきますが、株券はひょっとすると何倍にも価値が騰がっていくかもしれません。手持ちのお金でもっと大きなお金を買っているんだと思えば、買い入れることにそこまで抵抗を感じなくなる人もいるのではないでしょうか。

「それでもダメなら、お金をお金と思わないこと。単なる数字を扱っているんだと自分に言い聞かせることで、取引の際のプレッシャーが軽減します。すると冷静に取引ができるため、よい結果が期待できるでしょう」

ゲーム感覚で取引するのは危険ですが、取引の際の緊張は少しでも抑える必要があります。そのための、一種の自分に対する心理作戦ですね。どうしても重圧から抜け出せない方は、一度試してみる価値があるでしょう。

板読みで買い入れる

ヤーマンさんが買い入れるときは、主に2つのパターンがあります。ひとつは、多くの人が行っているであろうチャートを用いた方法。もうひとつは、板読みと呼ばれる少しレベルの高い方法です。チャートを見て買い入れる方法は、他の投資家の方々もよく使っている定番の方法ですね。しかしながら、チャートを見ずに板を見るだけで買い入れる投資家も一定数いるのです。チャートは値動きを表したものですから、これを見ないなんて、と思う方もいるかもしれません。実際、板読みは、チャートに比べて少々難易度が高いといえるでしょう。ですが、デイトレードにおいて板読みはとても大事なテクニックになるのです。

まず板読みの「板」というのは、買い方がいくらで買いたいのか、売り方はいくらで売りたいのかを表にしたものです。ここに並んでいるそれぞれの数字を読み取り、今後、その銘柄がどの程度の値になるのかを予想して買い入れるのが板読みです。買い入れたいという人が多くいるなら、その銘柄は高騰することが予想できますね。板にはその時点での注文状況が表示されることになるので、これを監視し、変化をいち早く察知することでチャートの動きを予測できるようになるというわけです。

見せ板には注意

ただし、「見せ板」と呼ばれる状態が発生することがあるので注意が必要です。これは、実際には売買の意思がないにもかかわらず、発注・取り消しを繰り返して活発な取引が行われていると見せかけて、他の投資家に取引させようとする行為です。これを行うのは、高値を維持させて売り抜けようとする他の投資家です。

ただ、他の投資家とはいっても、その正体は機関投資家である場合が多いのです。個人投資家からすると、資金的体力にものをいわせて個人投資家を食い物に稼ごうという非常に卑劣な手口といえるでしょう。また、大量の注文を行ったというだけでは見せ板であるということを立証することは難しく、放置されてしまっているのが現状です。ごくまれに、潤沢な資産を持つ個人投資家が相場操縦で逮捕されることがありますが、それは本当にレアケースといっていいでしょう。また、取引の流動性を高めるためにあえて機関投資家が行う見せ板行為については、黙認されているという見方も存在します。そのため今後、見せ板行為がなくなる可能性は低いといえます。

上級の個人投資家になると、むしろ、機関投資家が行っていると思われる見せ板を見抜き、自分の利益になるように動くという人もいますが、初心者のうちは、なにかおかしいという雰囲気を感じたらさっさと遠ざかってしまうほうが無難でしょう。見せ板は相場操縦に当たる可能性があり、法律で罰せられます。いうまでもなく、自分から行うのは絶対にやめましょう。

買い方により、売り方も異なる

「私は、チャートを見て買い入れたのか、板読みから買い入れたのかにより、売り方が異なります。チャートの場合、株価が上昇トレンドラインを割り込んだ瞬間に売ります」

上昇トレンドの流れに乗って株価の上昇を期待することが順張りですから、そのトレンドの勢いを失った銘柄をいつまでも持っている必要はありません。その場合は潔く売ってしまうことです。また、順張りは高値づかみをすることがよくあります。そもそも買い入れた段階で、すでにトレンドラインを大きく超えた値だったという可能性も十分あります。そんなときのために、買値から〇%より下回ったら売る、という自分独自の閾値を決めておくことも大事です。利益を得るために株を買ったのに、損をしていては意味がありません。失敗したときは思い切って売ることも、大切な戦略のうちのひとつです。

ヤーマンさんは、短期トレードにおいてのルールとして、3日以内に取り戻せないであろう負けをしないために明確に損切りするというボーダーラインを引いています。かつて、一度の取引で1000万円ほどの資産を一気に失ってしまったことがあったそうです。

「そのときに、取引はもうやめようかとも思いました。でも、失敗から学べばさらに成長できると考え直し、何がダメだったのか、自分に何が足りなかったのかを研究しました。自分のミスを正しく認識して解決策を考えられるなら、投資家として成長できるでしょう」

このような大きな損失を出すのは、信用取引を行って失敗した結果である場合が多いようです。まだ取引に慣れないうちから信用取引に手を出すと、大やけどしてしまうこともあるのです。失敗から学ぶことはとても大事ですが、まず行動を起こす前に「見えている地雷」を踏まないようにすることもまた同様に重要なことなのです。

情報はネットのみ

取引で失敗しないためのひとつの手段として、ヤーマンさんはTwitterを挙げています。テレビや新聞などよりも速報性の高い情報が常に流れ込んでくるため、最新の情報を入手するには最適のツールです。自分の視点だけでは、情報は偏りがちになってしまいます。ひとつの情報でも、他者の視点からはまた違った見解がなされるでしょう。自分以外の視点からの意見は、入手した情報を分析する上でも役に立つはずです。ヤーマンさんの場合、「情報源は基本的にほぼTwitterだけ」です、といわれていました。

Twitterは登録したアカウントの情報が自動的に入ってきますから、黙っていても情報が手に入るのです。最近ではニュースサイトなどが公式アカウントを開設してニュースを配信しているので、非常に便利です。ただ、すべてのニュースサイトやマスメディアがTwitterアカウントを持っているわけではありませんから、少し不満に思う人もいるでしょう。その場合は「RSSフィード」を利用することで解決する場合があります。Twitter同様に、スマートフォンの専用リーダーアプリで確認することが可能です。RSSのURLはウェブサイトで公開されていて自由に追加することが可能です。Twitterのような双方向のコミュニケーションは望めませんが、より多くの情報ソースを手に入れることが可能です。

自分に合ったスタイルと環境が大事

「今から株式投資を始めるなら、まずは自分のスタイルを確立することが重要です。デイトレードなのか、それとも配当金や株主優待目当てなのかは、時間的余裕や向き不向きによっても変わるでしょう。それを考慮して自分にはどんなスタイルが合っているのかを考えた上で、今後の戦略やそのスタイルで勝ち上がる方法を検討しましょう」

デイトレード専門のヤーマンさんに、デイトレードの場合にとるべき戦略についてお聞きしました。

「今後の相場がどうなるかなどはあまり考えていません。デイトレードにおいて大事なのは、今後どうなるかではなく、今の相場がどうなのかを見極めることです。もし、デイトレードを専門に株式投資を始めるならば、そこは押さえておいてほしい」

短期取引ではどうしてもチャートなどから目を離せず、取引中は常に気を張ってなくてはいけません。ですから、ストレスリリーフも株を続けていくためにはとても大事なことです。ヤーマンさんもやはり負けが続くと気持ちが暗くなるといっています。気持ちを切り替えるための策を聞くと、こう答えられました。

「そんなときの対策は『寝る』ことです」

かつて、ヤーマンさんは「株式投資で稼がなくては」というプレッシャーもあり、だいぶ負けが込んだときにはやめたいとまで思い詰めたこともあったそうです。当時は専業投資家だったということもあり、今以上に株に対するプレッシャーが重かったのです。

「そんな精神状態で取引してもしょうがないので、無理やりふて寝して気分を切り替えていました」

ヤーマンさんは寝ることでストレスを解消していますが、自分が気分を切り替えられることならなんでもいいでしょう。心を落ち着けて相場に臨むことが大事です。ストレスリリーフが必須であるのは、投資家の間では常識といえるのでしょう。ヤーマンさんからのアドバイスです。

「自分に見合ったスタイルと戦略を用意すること。それから、自身を常に冷静な状態に保つこと」

今から株式投資を始める人も、すでに始めている人も、一度自分のスタイルや環境を見直してみるといいかもしれません。