(本記事は、加谷珪一氏の著書『あなたの財布に奇跡が起こるお金の習慣』かんき出版、2014年12月15日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

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お金を出して時間を買うか、お金をもらって時間を売るか

(画像=VGstockstudio/shutterstock.com)

私たちは、時間は平等であり、時間は皆に等しく分け与えられていると思っている。

確かにそれは事実であり、お金持ちでも貧乏人でも、一日は24時間である。だが実際には必ずしもそうとは言い切れないのである。

時間には値段が付いている。そして値段が付いているものは、実は市場で売買することができるのである。

時間の売買とは具体的にどういうことなのだろうか。

例えばレンタカーを考えてみてほしい。レンタカーで自動車を借りると、コンパクトカーなら一日5000~6000円で借りることができる。

レンタカーを借りた利用者は、1時間5000円を払って、自動車を使う時間を買っているのである。逆にいうと、レンタカーに付いている時間の値段は1時間5000円ということになる。

これをお金にあてはめるとどうなるだろうか。

クレジットカードでキャッシングすると、カード会社によって幅があるが年間5~15%くらいの利子を取られる。ここでは利子は5%だと仮定しよう。

利子という言葉になっているが、実際には、10万円分のお金の利用料として年間5000円を支払っているのと同じことである。つまり、10万円のお金に付いている時間(1年)の値段は5000円なのだ。

10万円のお金に5000円の利用料。あまりピンとこないかもしれないが、お金持ちは、このあたりの感覚がズバ抜けている人が多い。

10万円を人に貸せば、理屈上、利用料として年間5000円をもらうことができる。逆に自分がローン会社から10万円を借りれば、年間5000円を支払う必要がある。

これはどういうことかというと、ローン会社から5000円を払って時間を買っているのである。5000円を払わなければ、10万円はすぐに返さなければならないが、5000円を払えば1年間待ってくれるのである。つまり1年間を5000円で買ったわけである。

世の中にはせっせとお金を出して時間を買っている人と、お金をもらって時間を売っている人がいる。どちらが有利なのかは一目瞭然である。

一日時間は皆に平等というのは本当なのだが、実際にはその時間が売り買いされており、時間を上手に売った人は大きく儲けているのだ。

以上のことから、人からお金を借りるということが、何を意味しているのか、少しは理解していただけただろうか。

この話を応用すると、人からお金を借りてよいのは次のようなときだけであることが分かる。

それは時間を買ったほうが、さらに有利になるときである。具体的にいえば、値上がりが予想できる不動産を買うときなどがこれに相当する。

ある物件が将来1.5倍に値上がりすると思うのであれば、今、その物件を買って持っておけばよい。今、現金がなくても問題はない。なぜなら、ローン会社にお金の利用料(利子)を支払っても、さらに利益が得られるからである。

ローンを組んで物件を購入したり、事業を始めるというのは、将来の利益が予想できるので、お金を払って返済を待ってもらう行為。つまり賢く時間を買う行為ということになる。

逆にいえば、この条件に合致しないときは決して人からお金を借りてはいけない。

上司からの指示を「時間軸」で考える

時間のムダを極力なくすことが重要なのは分かったが、読者の中にはヒマな時間などそうそうなく、時間を切り詰めることができないという人もいるだろう。だが諦めてはいけない。

仕事中にも大きなムダは発生している。これを取り除くことができれば、ヒマな時間をなくすことよりも大きな効果が得られる可能性がある。

筆者がまだ若い頃、ハッとさせられる経験をしたことがある。筆者の上司の行動が絶妙だったのである。

あるとき、筆者の上司のO課長は、部長からある案件について社名リストを作成してほしいと頼まれた。O課長は当時部下だった筆者に対して、すぐにリストを作成するように指示した。

筆者がリストの作成に取りかかって15分くらい経過しただろうか。O課長は筆者に聞いた。

課長「リストの状況はどう?」
筆者「まだできていません」

筆者としてみれば、まだ15分しか経っていない、リストなどできているわけがないという感覚だ。

課長「全部で何社くらいになりそうなの?」
筆者「やってみないと分かりません......」
課長「もちろんそんなこと分かってるよ。でも1000社になるわけはないでしょ?逆に5社しかないってこともないでしょ?だいたい何社になりそうかを聞きたいんだ」
筆者「50社くらいでしょうか?」

課長「今30社くらいってところかね?じゃあ、あと10分で50社分揃えて」
筆者「それはちょっと無理です」
課長「完全じゃなくていいんだ。社名だけでいいから50社分は絶対揃えて」
筆者「分かりました」

部長から「さっきのリストだけど......」とO課長のところに電話がかかってきたのは、筆者がラフな社分のリストをO課長に渡した1分後だった。O課長は「大ざっぱな状態ですが、すぐお持ちします」と部長の部屋に消えた。

O課長は、部長が何か頼みごとをすると30分くらいでどんな状態かを知りたくなるというせっかちな性格を熟知していたのだ。ラフな状態であってもそのときにリストがあるのとないのとでは雲泥の差となる。

筆者は何も考えず、O課長から言われるままにリストを作っていたわけだが、O課長は部長から指示された段階ですでに時間軸が明確になっていた。この違いは極めて大きい。すべての仕事がこの調子だからO課長の仕事にはまったくといってよいほどムダがない状態だった。

O課長はその後、社内でめざましい出世を遂げた。サラリーマンなのでそれほどのお金持ちにはならなかったが、独立すれば、大変な成果を上げたことだろう。相手の立場に立って仕事をするというのはこういうことを指している。相手の立場に立つことで、逆に自分の時間を一気に何倍にも増やすことができるのだ。これは一種のマジックである。

筆者はこの経験で仕事の仕方に関する考え方が180度変わった。筆者はこの方法論を社内の出世のためではなく、独立の準備のために活用した。そして独立してからは、ビジネスに全面的に応用し、お金持ちになった。

加谷珪一(かや・けいいち)
東北大学卒業後、ビジネス系出版社に記者として入社。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。現在は、ビジネス、経済、マネー、IT、政治など、多方面の分野で執筆活動を行う一方、億単位の資産を運用する個人投資家でもある。著書に『お金持ちの教科書』『大金持ちの教科書』(以上、CCCメディアハウス)がある。

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