(本記事は、加谷珪一氏の著書『あなたの財布に奇跡が起こるお金の習慣』かんき出版、2014年12月15日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

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あなたの財布に奇跡が起こるお金の習慣
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

「投資」とは、より大きなお金を生み出すための支出

お金持ちになるための重要なキーワードのひとつに「投資」というものがある。これと正反対のキーワードは「貯蓄」である。

お金持ちになった人のほとんどが、何らかの形で投資を行い、自身の資産を何倍、あるいは何十倍にも増やしている。

筆者はコツコツと貯蓄することを否定しているわけではない。貯蓄はお金持ちになるための重要な第1ステップである。なぜなら、投資をするためには、まとまった額の資金が必要だからである。つまり「貯蓄」は「投資」をしてお金持ちになるための、軍資金なのである。

投資というと、多くの人は株や不動産を思い浮かべるかもしれない。確かに株や不動産も投資のひとつだが、ここでいうところの投資はこれだけに限った話ではない。会社を設立するということは、自分が作った会社への投資にほかならないし、お金持ちになるためのスキルを磨くための支出は自身への投資である。

より大きなお金を生み出すための支出はすべて投資であり、お金持ちになるためには、投資の継続が何よりも不可欠なのだ。

お金持ちに「貯蓄好き」はいない

筆者はお金儲けとはすべて投資であるという原理をかなり後になって知った。だが、もし最初からこのことを知っていれば、筆者の行動はもっと合理的でムダのないものであったかもしれない。

逆に言えば、この言葉の意味を行動する前に知ることができた読者の方々は、ラッキーかもしれない。この仕組みを理解することができれば、お金持ちへの道のりをかなり短縮することができるからだ。

一方、これとは正反対の行為が貯蓄である。

日本人は基本的に貯蓄好きだといわれる。だがお金持ちになった人で、いわゆる貯蓄好きという人はまずいない。理由は簡単で、ただ貯蓄ばかりしていては、小さなお金を作ることはできても、より大きなお金を作ることができないからである。

多くの人にとって、お金持ちと呼べるような大金ということになると、やはり1億円からではないだろうか。

だが、よく考えてみてほしい。コツコツと貯金しただけでは、1億円を貯めるのは現実的にはほぼ不可能なのである。

仮にあなたの年収が600万円だったと仮定しよう。日本の平均年収は450万円くらいだから、年収600万円の人はちょっとリッチな部類に入る。しかし、独身で仙人のような暮らしをするのならともかく、年収600万円の人が、毎年300万円も400万円も貯金するのはかなり難しい。

そうなってくると現実的な貯金の額は、がんばっても年間100万円くらいということになるだろう。わざわざ計算するまでもないが、年間100万円の貯金で1億円を作るためには、100年という気の遠くなるような時間が必要になる。

「いや、私は年収1000万円ある」という人もいるだろう。しかし人間とは贅沢なもので、年収が上がっていくと、それにつれて支出も上がっていくものなのである。年収1000万円の人と年収500万円の人で、年間の貯蓄額が大して変わらなかったというのはよくある話だ。

年収が1000万円あったとしても、それなりに支出してしまうと、年間200万円程度しか貯蓄できない。だが200万円を貯蓄したとしても、1億円を貯めるには50年かかってしまう。やはり現実的な期間とはいえないことがお分かりいただけるだろう。

追い討ちをかけるようで恐縮だが、無目的の貯蓄には、さらに怖い現実も待ち受けている。それはインフレである。

インフレとは物価が上昇し、持っているお金の価値が下がっていく現象のことである。今年何とかやりくりをして100万円を貯めたとしよう。だが30年後、その100万円にはもはや100万円の価値などなくなっている可能性が高い。それは物価が上昇し、100万円で買えるモノの水準が年々低下するからである。

日本では長くデフレが続いたので、多くの人が物価は上がらないと考えている。だが歴史的に見ても、また全世界的に見てもデフレが20年以上も続くことは、極めて珍しい現象である。しかも今はアベノミクスと量的緩和策で、政府が意図的にインフレにしようとしている。今後は物価が継続的に上昇すると考えたほうが自然だ。

では物価が継続的に上昇するとどんなことになるのだろうか。

日銀では2%の物価上昇目標を掲げているので、毎年物価が2%ずつ上がると仮定しよう。2%の物価上昇ということは、100万円のモノは来年には102万円になっているということを意味している。

だが再来年は104万円になると思ってはダメである。再来年は2%の2%、つまり複利になるので、実際には104万400円である。これが毎年継続することになる。30年後には、値段は何と約1.8倍の180万円になっている計算だ。せっかく100万円を貯めても、使おうと思ったときには、約半分の価値しかなくなっている。

お金はただ持っているだけでは増えないどころか減っていくのである。より大きなお金を作るための投資を続けていかないと、この経済原則に負けてしまうのだ。

筆者が貯蓄ではなく投資と力説しているのは、このような理由からである。

投資によって大きな資産を作ろうと思っている人にとって、まとまったお金というものは、より大きなお金を動かすための原資である。

資本金1000万円の会社は、1000万円のお金を動かしているわけではない。資本金が1000万円でも売上高が10億円あれば、10億円のお金を1年間に動かしているのだ。そしてその会社が10億円で売れれば、所有者の手元には10億円が転がり込んでくる。最初の1000万円は10億円を動かすための軍資金になっている。

貯蓄をすることがあっても、それは軍資金として必要な額が貯まるまでの話である。最終的には投資という形で支出することが大前提だ。

加谷珪一(かや・けいいち)
東北大学卒業後、ビジネス系出版社に記者として入社。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。現在は、ビジネス、経済、マネー、IT、政治など、多方面の分野で執筆活動を行う一方、億単位の資産を運用する個人投資家でもある。著書に『お金持ちの教科書』『大金持ちの教科書』(以上、CCCメディアハウス)がある。