マネーロンダリングに関する世界的な規制強化が行われている。一方で、「カジノはマネーロンダリングの温床」といわれることも少なくない。そのような違法行為が、本当に世界中のカジノで行われているのか? カジノ特有のマネーを動きから、その可能性を考えていく。 (取材、文・三枝裕介 ZUU online magazine編集長)

(画像=Andrii Vodolazhskyi/shutterstock.com,ZUU online)

カジノ建設に関して、常に議論されるマネロン問題

「マネーロンダリング」で用語検索をかけると、「資金洗浄」というワードが浮かび上がってくる。警察白書によると、一般に犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関による収益の発見や検挙を逃れようとする行為とされている。2020年代半ばには、日本でもIR(カジノを含む統合型リゾート)が誕生する予定だが、ギャンブル依存症対策とともに常にマネーロンダリングの問題が議論されている。

さて、「カジノはマネーロンダリングの温床」といわれることがよくあるが、ほとんどの読者にとっては無関係なはず。映画や海外ドラマの中だけの話だと思っているかもしれない。しかし一方で、日本は「マネロン天国」と揶揄されることもあり、実際、2018年に全国の警察が摘発したマネーロンダリングは過去最高の511件と報告されており、わが国でも頻繁に行われている犯罪なのである。

では、カジノを使ったマネーロンダリングにはどのようなものが考えられるのか? その前に、まずはカジノでのマネーのやりとりを検証していこう。

たとえば、日本人顧客が海外のカジノでプレーする際、その資金はどのようにして現地に持ち込むのか? 資金が1万ドル相当以内(国によって異なる)の場合は、申告は不要でそのまま現金で持ち込むことができる。1万ドルを超えるようなケースでは、まずは日本の空港税関で持ち出しの申告を行い、海外の空港でも外貨持ち込みのための申告が必要となる。

仮に海外カジノで大勝ちした場合は、カジノ側に証明書を発行してもらい現地の空港で申告、日本に帰国後、確定申告が必要となる。なお、カジノで勝ったお金は一時所得の対象。経費を差し引いた利益が50万円以上なら申告の義務が発生することになる。

税金の申告はもちろんだが、気を付けたいのは大金を海外から日本に持ち込む場合。本来、申告しなければならない金額を「見つからないだろう」と決め込んで無申告で税関を通過し、これが職員に見つかってお金を没収されたという話もよく聞くからだ。

規制強化の中、カジノは現金を受け入れてくれる数少ない場所

一方、ほとんどのカジノVIPの場合は、金融機関の国際送金を使って事前にカジノに送金を行っているようだ。総資産数十億円を有する投資家であり、世界中のカジノのVIPでもある山下武夫氏(仮名)は言う。