消費増税を受け、キャッシュレス決済利用によるポイント還元制度がスタートした。さらに、さまざまな企業から「〇〇Pay」がリリースされ、国内にもキャッシュレス化の波が押し寄せている。本特集ではキャッシュレスの普及とニューペイメントの発展に取り組む「NCB Lab.」代表の佐藤元則さんに、キャッシュレスの現状や今後について教えてもらう。

世界中で広がりを見せるキャッシュレス決済。日本も経済先進国として乗り遅れることは許されない状況であることがわかったが、急速な普及を受けて、不正利用防止などの環境整備が追いついていない印象も受ける。キャッシュレス化にはどのようなリスクがあり、対応策があるのだろうか。(取材、文・藤堂真衣 全5回)

佐藤元則(さとうもとのり)さん
NCB Lab.代表。1952年生まれ。1989年にカード・決済専門コンサルティング会社の「株式会社アイエスアイ」を設立。日本初の自由返済型クレジットカードや国際ブランドつきデビットカードなどを開発。1997年に日本カードビジネス協会(現NCB Lab.)代表に就任。キャッシュレス社会の普及とニューペイメントの発展に取り組み、NCB Lab.として年間600回以上のセミナーを開催している。著書に『金融破壊者たちの野望』(東洋経済新報社)などがある。https://www.ncblibrary.com

不正をなくす唯一の手段は「本人確認の厳格化」

キャッシュレス化の波を読む#4
(画像=Production Perig/shutterstock.com,ZUU online)

──モバイルキャッシュレスにまつわるリスクといえば、2019年7月に「7Pay(セブンペイ)」の不正利用問題が記憶に新しいですね。急成長した分野であるがために対策が追いついていないような印象もあります。

私は、不正をなくすためにはただ一つ、本人確認の厳格化しかないと考えています。スマートフォンを使った決済であれば、それを今まさに利用しようとしている人物が本人である証明を求めることでもあります。

現金には匿名性があります。目の前にある千円札は、お店のレジに入ってしまえば誰が使った千円札かはわかりません。ですがモバイルキャッシュレス決済ではその「1000円」を誰が使ったのかを全て管理するのです。

例えばクレジットカードであれば、署名や暗証番号の入力がその役割を果たします。カードの持ち主によって行われた決済であることは署名で判断できるわけです。

一方、スマートフォンによるキャッシュレス決済の場合には、アプリ上で決済を行うまでには利用者の認証がありません。そのスマートフォンを起動させるためのロック解除によって代替的に本人確認が行われています。

利便性との両立は可能か

──本人確認の厳格化というのは、具体的にはどのような?