9月に入って反発が続いている米国の株式相場。現在は、米中の貿易協議再開やFRB(連邦準備制度理事会)による追加利下げへの期待が相場を押し上げているようだが、米中貿易問題についてはこれまでも似たような展開から一転して「合意ならず」となり、相場が急落した経緯がある。岡三証券のグローバル株式戦略グループのグループ長、忍足眞理氏に今後、米国の景気や相場はどう動いていくのかについて話を聞いた。

忍足眞理
忍足眞理(おしだり まり)
岡三証券グローバル株式戦略グループ・グループ長、シニアストラテジストとして外国株の調査・分析を担当。2004年に岡三証券に入社し、証券情報部(現投資戦略部)や米国・欧州情報グループ、アジア情報グループで経済や相場、個別銘柄の分析を手掛ける。2011年、香港のグループ会社に出向した後、2015年より現職。グローバルな視点を武器とした鋭い切り口が人気。日経新聞や日経QUICK、ブルームバーグへのコメントや寄稿などメディア出演多数。(撮影=倉部和彦)

経済成長率は減速も個人消費は堅調、企業業績は改善へ

米国株特集#3
(画像=ZUU online編集部)

9月以降、米国の株式相場は上昇基調を強めている。米中の通商協議の再開やFRBによる追加利下げへの期待が主な理由とされるが、背景には金利低下によって債券よりも株式のほうが相対的な魅力が高まっていることもありそうだ。FRBによる利下げについては後ほど触れるが、債券の運用担当者は頭を悩ませていることだろう。

相場上昇の最大のネックである米中貿易摩擦については、10月初旬に交渉が再開されるなど協議が進展することに対して期待感が広がっているが、直ちに全面的な解決とはならないだろう。5月にもやはり同様に協議進展が期待されたが、結局は物別れに終わった。株式相場にとって協議再開がプラスの材料であることは確かだが、この問題は来年11月の米大統領選挙に向けた票集めの材料の一つでもあり、いわゆる“選挙マター”であることは念頭に置いておきたい。

自国の景気が悪化してトランプ政権への不満が高まれば、真剣に落としどころを見つけにいくだろう。しかし、現状ではトランプ大統領がそのように動く理由は希薄である。それを考えると、今後も10月に劇的に解決に向かうことはなく、米中の協議は引き続き行われるものと捉えるべきだ。

貿易問題が長期化すればするほど、米国経済への打撃は避けられず、経済成長率は減速となる可能性が高い。ただ、株式相場はすでにそれを織り込んでいるほか、企業業績も市場が警戒するほど悪化はしないだろう。確かに、今7-9月期の企業業績が弱含みとなる公算はあるが、10-12月期以降は改善に向かい、来期に向けて増益基調が続くと見ている。

もう一つ、米国経済が底堅く推移するとの予想の根幹にあるのが個人消費だ。周知のように、米国のGDPの6割程度は個人消費が占めている。足元の個人消費は底堅く推移しており、それが米国経済を下支えするだろう。その点で、1年間で最大の消費イベントである年末商戦の動向には注目しておきたい。

「市場とFRBの綱引き」を背景とした相場展開が続く

ここまで述べたことを踏まえつつ、年末から来年にかけて米国の株式相場の展開を考えてみたい。