「億り人」は投資のスキルを極限までに高めた、いわば“投資の職人”。しかし、彼らは必ずしも投資だけに専念しているわけではない。サラリーマン投資家なら平日はサラリーマンとして働いているし、専業の投資家でも、副業に手を広げる人が少なくないのだ。億を超える資産を築いた投資家たちは、いったいどんな副業をしているのだろうか。「働き方改革」の先を行く、投資家とは異なる一面を紹介しよう。

元証券ディーラーのヤーマンさんは副業が実業に!投資家から美容室23店舗の実業家へ

(画像=shutterstock)

東証の高速取引システム導入で職場の規模が縮小

副業を始める理由は投資家によってさまざま。趣味が高じて副業となったケース、そもそも趣味のような感覚で続けるケース。一人一人によって背景や事情がある。ここで紹介するヤーマンこと山下拓馬さんは、副業に本腰を入れていくうちに「実業」になってしまったケースだ。そういう意味では、投資家の副業としてはややレアなケースかもしれない。

ヤーマンさんが個人トレーダーに転身する以前は、地場証券会社でディーラーを務めていた。いわば、“本格派”トレーダーである。

「2008年に入社して、いきなりディーリング部に配属されたんです。新卒だから、当時はファンダメンタルズもテクニカルも何もわからない。ただ、東京証券取引所に高速取引システムの『アローヘッド』が導入される前のことだったので、ディーラーが有利な時代でした。経済指標の発表やマーケットを左右する大きなニュースを一般の投資家よりも1~2秒早く見られたので、一足先に注文を入れて稼ぐことができたんです。

2010年にアローヘッドが導入された直後も、高速で自動売買を行うアルゴリズムトレードの性能がいまほど高くなかったので、ディーラーは戦うことはできました。ただ、これからアルゴリズムトレードの性能が上がって勝てなくなることは明白だったので、私が勤めていた地場証券は、同格の証券会社との合併を機にディーリング部を50人体制から10人へと大幅に縮小したんです。

私は営業部に回されて2年間だけ営業マンとして働いた後、個人トレーダーとして独立する道を選びました」

副業からヒントを得て投資に活かす!

2012年のアベノミクス相場が始まる直前に、ヤーマンさんは自己資金200万円で個人トレーダーへ。相場が活況だったうえに、昔取った杵柄もあって、着実に資産は増えていったという。

「当時は新興銘柄のスキャルピング(秒、分単位の超短期取引)やデイトレードばかりしていました。2012年11月にアベノミクス相場が始まってからはボラティリティ(価格の変動率)が大きくなったので、週単位で100万~300万円近く稼げることも少なくありませんでしたね。

資産を大きく増やすことに成功したのは、バイオ関連銘柄のトレードです。あるバイオ銘柄が急騰すると、すぐに関連銘柄に連想買いが入って急騰する傾向があったので、その傾向を利用してトレードをしていました。あまりにバイオ銘柄ばかりトレードしていたから、『バイオマン』と呼ばれていたこともあります(笑)。個人トレーダーとしてデビューして1年足らずで、3000万円以上稼ぐことができました」

当時よりは勢いがなくなっていはいるものの、現在もバイオ関連株は「ハイリスク・ハイリターン銘柄」の代表格として個人投資家の注目度は高い。もっとも、ヤーマンさんの現在のトレードスタイルは当時とは大きく変化しており、スウィングトレード(数日~数週単位の取引)で1日5万~6万円をコツコツと稼いでいるという。

当然、トレードする銘柄も様変わりした。注目する銘柄にも、現在の副業が大きく関わってくるようになったのである。