世の中には「お金持ち」になるための情報があふれているが、実際にお金持ちとはどういった人を指すのか、あるいはお金持ちになるためにどうしたよいのか、具体的かつ客観的に記したものは少ない。
「お金持ちになる絶対的な法則は存在しない」としつつも、「お金持ちになりやすい行動パターンやお金が逃げていくパターンを知ることで成功する確率を上げることはできる」と語るのが経済評論家の加谷珪一氏だ。ベストセラー『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス (2014/1/29))の著書であり、億単位の資産を運用する個人投資家でもある加谷氏に「資産1億円の教科書」と題して話を聞いた。(聞き手:押田裕太)
特集第2回は、「お金持ちのお金の使い方」について。
「お金を持っている人ならでは」のお金の使い方
――富裕層のお金の貯め方、使い方についてはどのような特徴があるのでしょうか?
お金を貯められる人、資産を増やせる人は使い方も上手です。これは成功した人のほとんどに共通することですが、使い方にメリハリがあります。少し難しくマクロ経済的に言えば、消費ではなく、投資に可能な限りお金をつぎ込むことが資産家への近道になります。
ここでいう「投資」についてわかりやすく説明すると、将来何かしらのリターンを期待して投じるお金のことを指します。消費、特に浪費は目先の快楽を求めて払うお金ですね。経済学的には効用といいますが、それを求めてお金を払うのが消費です。そうではなく、できるだけ投資にシフトしたお金の使い方をした人がお金を貯めることができるのです。
例えば、自分の娘がおんぼろミュージシャンと駆け落ちしそうになったらどうしますか?
普通は無理やり引き離すとか説教するとか、いろいろやりますよね? 結局、大半は無駄に終わります。しかし、私が知る、ある夫妻は違いました。そのミュージシャンの卵に海外留学する費用を全額プレゼントして時間を与えたのです。海外留学をして戻ってきても気持ちが変わらないのであれば、2人を認めようというわけです。結局、そのミュージシャンは海外に行ったら浮気をしてしまい、2人は別れてしまいました。
これは、道を踏み外しそうになったお嬢さんが、自分たちの元に戻ってきたという話で、ネガティブな状態を元に戻しただけともいえますが、それでも宝物のお嬢さんを取り戻したという意味では、大きな投資の効果があったと言えます。
こういうお金の使い方が富裕層はできるのです。お金を持っている人ならではの使い方といえるでしょう。世間では、お金がなくても別に困らないという人がいますが、こんなことができるという話を聞いたら、どうでしょう。「やはりお金は必要だ」と思いませんか。
「自分は今、何に対してお金を出しているのか」ということを常に明確にすることが大切です。
例えば、「今日、飲み会に来ないか」と誘われて、二つ返事で参加する人がいますよね。でも、これではいけません。なぜ、飲み会に参加するのか、理由をしっかり考えて明確にすべきなのです。何か得ようと思って行くのか、ストレス解消になると思って行くのか、それとも仲間外れにされないために行くのか。飲み会に行くという行為は同じですが、この3つは全然違います。
わからなくなったら比較してみましょう。例えば、ストレス解消のため、5000円を払って参加するとします。しかし、ストレス解消ならディズニーランドに行った方が投資効果は高いのではないでしょうか。そう考えると、無理して行く必要はないと思えてくるはずです。「仲間外れにされるのがなんとなく怖い」というのであれば、参加する意味はありませんが、「今このタイミングで仲間外れにされると、何かと支障がある」との判断があるのであれば、必要なコストだと思って参加するという選択肢もあります。つまり、自分が何を求めてお金を支払うのかが明確になっていれば問題はないのです。
逆に言えば、そうした考え方ができるようになると、お金の使い方にメリハリが出てきて、お金が貯まりやすくなります。お金の使い方が上手くなると、お金で時間を動かすという感覚がわかってきます。これができると、劇的にお金の使い方が変わってくるはずです。
お金持ちの金銭感覚を身に付けたければタクシーに乗る
――「お金で時間を動かす」とは、具体的にどういったことでしょうか?