「信託期間」は投資信託を購入するうえで、極めて重要な項目の一つだ。しかし、現実には運用方法や手数料体系に比べ「信託期間」を気にする人は意外と少ないかもしれない。そこで今回は「信託期間」に焦点を当て、その重要性を論じたい。

結論を先に言えば、筆者は非パッシブ運用の投資信託の「信託期間」は有期限、すなわち5年間とか、10年間とか、或いはそれ以下の短い期間に設定されているものをお勧めする。それこそ「ファンドマネージャーとしての職人気質」の部分が筆者にそう言わせている(「つみたてNISA」など長期の積立運用を推奨する金融庁に怒られてしまいそうな発言だが)。実際、運用現場の人間の感覚からすれば、通常「信託期間無期限」という非パッシブ運用は有り得ない。なんでそんな発想が出来るかと寧ろ不思議だ。

一番簡単な理由をお伝えしよう。それは「主担当運用者、つまりメインのファンドマネージャーは不死身でも無いし、彼(彼女)が転職しない理由はどこにもない」ということだ。これは定量分析を利用した運用でも、アルゴリズム取引のものでも、今現在のAI(人工知能)を投資判断ツールとして使う運用方法でも、すべて同じことが言える。主運用担当者が変更になるリスクが担保されていないということだ。

非パッシブ運用の世界で、主たるファンドマネージャーが交代したら、間違いなく「それまでの運用を複製することは絶対に不可能」だ。これについては実例を敢えて上げるまでも無いだろう。

AIに関しては「コンピューターは不死身だし、転職もしない」と異論を唱えられそうだが、AIを投資判断のツールに使う運用方法こそ、信託期間は有期限の方が良い。なぜなら、前回お伝えしたように、現状のAIは自律システムではなく、他律システム、すなわちAI自らが自律的にプログラムを書き換えたりはしないので、必ずお世話役が必要だからだ。もう一つ言えば、日進月歩のITの世界において、50年後になっても2020年頃に作られたAIに投資判断を委ねるなど「計算尺に頼った分析を今現在も使っている」のと同じようなものになるからだ。アンティーク化したAIに運用を任せるだろうか?

信託期限無期限が主流となったのは銀行の「投信窓販」が始まってから

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(画像=shutterstock, ZUU online)

実は歴史を紐解くと、1998年12月に銀行での投資信託の窓口販売が解禁になる以前は、殆どの投資信託の信託期間が「有期限」となっていた。

一般的には単位型投資信託の信託期間は4年から5年間、追加型投資信託は10年間というのが普通だった。前者単位型は新規投資信託の募集時しか資金を集められなかったので、設定からヨーイドンで運用が始まってから、概ね3年間程度が真剣な運用期間で、残りの約1年間は償還に向けた流動化対応(保有株を上手に売っていく)というのが普通だった。

相場(市場テーマ)の一般的なサイクルは約3年間と言われているので、その意味では極めて理に適った信託期間の設定である。