「分散投資をしている筈なのに全然パフォーマンスが良くないのは何故ですか?」「○○証券のラップ口座を解約しようかと思うんだけど、どう思います?」筆者が主宰するFund Garageにはそんな相談が寄せられることがある。

前回は2つの視点から「アセット・アロケーション」について再考した。多くの投資家がアセット・アロケーションの重要性を理解していると思うが、読者の中には上記のような疑問を抱いている人も少なくないことだろう。

そんな疑問にひと言で答えると「預けた先が悪い」ということになる。要は「手数料が高い」か、純粋に「運用が下手」かのどちらかだ。手数料水準に注目する人は多いが、売買執行の巧拙について着目する人は意外と少ない。最近は数千億円、或いは1兆円を超えるような投資信託も珍しく無いが、筆者は巨大なファンドの誕生をあまり好ましいとは思っていない。どんなに銘柄選択に神がかりな能力があろうと、巨大ファンドの運用には卓越した売買執行能力が欠かせない。また日本市場だけでは多くの資産クラスで流動性が足りない。結果として、投資家だけでなく、資産運用業界そのもののレピュテーションにも傷をつけかねない。

2000年当時「1兆円ファンド」が話題となったが、傍から見ても運用は四苦八苦していた。あれから20年、何か市場が変わったかと言えば何も変わっていない。今回はそんなことも踏まえて、アセット・アロケーションの変更、組入比率の調整のあり方について考察を加える。

国際分散投資のアセット・アロケーションの変更

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(画像=Trueffelpix / shutterstock, ZUU online)

下図はFund Garageが提案する「リスク許容度中程度のモデルポートフォリオ」のパフォーマンス推移だ。2007年4月1日をスタートとして、リーマン・ショックで一旦はへこむものの、その後は右肩上がりとなり、直近も短期間にドスンと下がった後、既に半分強戻している。

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実はこの13年の間、基本アセット・アロケーションは一切変更していない。それでも投資信託で言うなら、先週末の基準価額は1万6581円だ。リーマン・ショックと新型コロナウイルス災禍の今を含めて13年間でこの数値、べた褒め出来るとは思わないが、アセット・アロケーション変更の頻度など、多くの喧しい議論へのひとつの答えがあるように思う。アセット・アロケーションの変更、組入比率の変更には、メリットもある代わりにデメリットもある。

SAAとTAAの意味と実際の運用例

前回、SAA(戦略的アセット・アロケーション)とTAA(戦術的アセット・アロケーション)について頭出しをした。また一番単純なアセット・アロケーションの変更とは、株式ファンドの組入比率の変更だともお伝えした。SAAは大局的な見地から長期投資をする為の基本アセット・アロケーションであり、TAAは短期的な変動の中にも収益機会を見つけようとするアセット・アロケーションだ。

筆者がファンド・オブ・ザイヤーを獲得した「三井住友SD日本株オープン(旧 さくら日本株オープン)」では、TAAをパフォーマンスの源泉の一つとした。目論見書では次のように説明した。