新型コロナウイルスが収束しそうにない。感染者数は相変わらず増加傾向で、経済的な被害も拡大している。そうした時代、富裕層は資産運用についてどのように考えているのだろうか。連載「富裕層の資産運用マル秘テクニック」では、富裕層が実際に行っている資産運用に関する具体的なノウハウを紹介している。ナビゲーターを務めるのは、「ウェルスパートナー」代表の世古口俊介氏。日本、米国、スイスのプライベートバンクに11年間在籍し、独立後は富裕層の資産形成サービスを手掛けている。今回は、多くの資産を分散する必要がある富裕層が、密かに行っている「実物資産投資」について見ていこう。
>>>【PR】コンシェルジュが生涯伴走! あなたにあった資産アドバイザーを無料紹介
メリットが大きい資産の分散とは
金融界では、資産を大きく「コア資産」と「サテライト資産」に分類している。コア資産とは、最初にしっかりと築き上げておくべき土台となる資産のことをいう。一方のサテライト資産とは周辺資産と言い換えることができる。つまり、コア資産をしっかり構築した後に取り組むべき資産という位置付けだ。
具体的には、コア資産は預金や株式、債券、そして国内不動産など。これに対しサテライト資産は、海外不動産やヘッジファンド、金や銀などのコモディティ、そしてその他の実物資産のことを指す。
このコア資産とサテライト資産の配分割合について、世古口氏は「コア資産が8割に対してサテライト2割くらいが最適だと考えているが、好みにもよるので7対3くらいでもいいと思う。ただ、さすがに6対4くらいになってくると、サテライト資産が過剰だと思う」と解説する。そして富裕層たちは、そのサテライト資産で行っているのが、実物資産投資である。
では、実物資産とはどのような資産なのだろうか。実物資産の種類は多岐にわたるが、世古口氏曰く、富裕層が保有している代表的な実物資産として太陽光設備投資と絵画があげられるという。そこで今回は、この2つについてご紹介しよう。
太陽光設備投資の知られざる効果
太陽光設備投資は、簡単にいうとソーラーパネルと発電装置を購入し、太陽光で発電された電力を電力会社に買い取ってもらうというシステムで成立している。つまり電力を買い取ってもらうことで得られるのが、インカムゲイン(定期収入)になるという投資だ。
2011年の東日本大震災で原子力発電所が稼働しなくなった際、不足した電力を補うために太陽光のようなクリーンエネルギーを増やそうと、国の方針として太陽光設備投資に対して優遇措置が設けられた。
その優遇措置が固定価格買取制度(FIT)である。これは、発電された電力量をあらかじめ決められた価格で20年間、電力会社が買い取ってくれるというもの。つまり予定通り発電ができれば、安定したインカムゲインを得ることができるということだ。20年が経過した後は価格が保証されず、時価で買い取ってもらうことになる。電力価格がゼロになることはないので、20年後も一定のインカムゲインを得ることは可能だと考えられている。
太陽光設備投資のメリットは「2つある」と世古口氏。1つは述べたとおりインカムゲインを得ることができること。そしてもう1つが所得税の「タックスメリット」だ。
世古口氏は次のように解説する。太陽光設備は17年間で設備価格を減価償却できる。それを定率法という一定の比率で毎年償却すれば、投資してしばらくは大きい所得上のマイナスを作ることができ、所得税を引き下げることができるのだ。こうした節税法を使えば、現役で収入が高いときには所得をマイナスにして節税し、退職などで引退して収入が低くなったときには所得をプラスにすることができるというわけだ。
なぜ富裕層は絵画に投資するのか
絵画は、アート作品の中でも代表的な投資対象だ。なぜ富裕層は絵画に投資するのか。世古口氏は、「2つ大きな理由がある」と指摘する。