年末調整を行うことで、原則として確定申告が不要となる。しかし、状況によっては確定申告が必要になることがある。この確定申告の要不要とはどのような仕組みで決まるのだろうか。

本記事は2022年3月の情報をもとに、最新の情報に更新し、公開しています。

年末調整と確定申告に関するQ&A

(画像=PIXTA)

年末調整と確定申告の概要については以下のとおりである。

Q


年末調整をするのはどういう人?

年末調整の対象となるのは会社員、バイト・パートといった給与所得者で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出した人だ。ただし、この書類を提出していても次のような人は年末調整から外れ、各自で確定申告を行う必要がある。

・給与収入が2,000万円を超えている人
・災害減免法で源泉所得税・復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けた人

年末調整の対象となるのは会社員、バイト・パートといった給与所得者で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出した人だ。ただし、この書類を提出していても次のような人は年末調整から外れ、各自で確定申告を行う必要がある。

・給与収入が2,000万円を超えている人
・災害減免法で源泉所得税・復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けた人


Q


給与所得者で確定申告をするのはどういう人?

上述の「年末調整の対象外となる人」に該当しなくても、以下に当てはまる人は確定申告が必要だ。

1. 医療費控除や雑損控除など年末調整で扱わない項目がある人
2. 給与所得以外の所得合計額が20万円を超える人
3. 年の途中で退職し、その年に再就職しなかった人
4. 複数の勤務先で給料をもらっている人
5. 年末調整に訂正があり、会社から確定申告するよう言われた人

上述の「年末調整の対象外となる人」に該当しなくても、以下に当てはまる人は確定申告が必要だ。

1. 医療費控除や雑損控除など年末調整で扱わない項目がある人
2. 給与所得以外の所得合計額が20万円を超える人
3. 年の途中で退職し、その年に再就職しなかった人
4. 複数の勤務先で給料をもらっている人
5. 年末調整に訂正があり、会社から確定申告するよう言われた人


Q


年末調整と確定申告の両方が必要なのはどんな人?

年末調整と確定申告の両方が必要になるのは、上記のQ「給与所得者で確定申告をするのはどういう人?」の3.以外の人だ。そのほか、以下に該当する人も両方必要になる。

・6つ以上の自治体にふるさと納税をした人
・日本赤十字社や政治団体に寄付をした人
・ふるさと納税でワンストップ特例を申請したけれど、副業による所得や医療費控除などがある人
・初回の住宅ローン控除の適用を受ける人

年末調整と確定申告の両方が必要になるのは、上記のQ「給与所得者で確定申告するのはどういう人?」の3.以外の人だ。このほか、以下に該当するときも両方必要になる。

・6つ以上の自治体にふるさと納税をした人
・日本赤十字社や政治団体に寄付をした人
・ふるさと納税でワンストップ特例を申請したけれど、副業による所得や医療費控除などがある人
・初回の住宅ローン控除の適用を受ける人


年末調整と確定申告どこが違う?

年末調整とは? ―― 源泉徴収した所得税の「過不足」を調整する手続き

年末調整は、会社(事業所)勤めの会社員に必要な手続きだ。毎月の労働の対価として受け取る給料には、所得税と住民税という税金がかかる。

会社から上記の書類を受け取り、必要条項を記入のうえ、会社に提出する。保険会社から届いた保険料控除証明書は、申告する保険料の支払額を証明する書類だ。対象となる生命保険に加入していると、請求することなく毎年10月ごろに自宅に届く。もし、11月に入っても届かない場合は、保険会社に確認し、再発行を依頼することをおすすめする。

このうち所得税は、毎月「概算」で算出し、源泉徴収される。しかし、個々の会社員には様々な環境の変化がある。例えば、家族数の変化による扶養環境の変更、控除対象となる生命保険料や社会保険料の最新状況などだ。そのため、年末(12月31日)のタイミングで最新の状況を報告することによって、所得税納付税額の「再計算」をするという流れだ。

ちなみに、住民税は前年の所得を基に翌年の6月に決定し、それを源泉徴収することになっているため、年末調整の対象とはならない点に注意したい。

とはいえ、年末調整は会社員にとってそれほど大変な作業ではない。

  • 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
  • 「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」
  • 「給与所得者の保険料控除申告書」

会社から上記の書類を受け取り、必要条項を記入のうえ、会社に提出する。保険会社から届いた保険料控除証明書は、申告する保険料の支払額を証明する書類だ。対象となる生命保険に加入していると、請求することなく毎年10月ごろに自宅に届く。もし、11月に入っても届かない場合は、保険会社に確認し、再発行を依頼することをおすすめする。

年末調整の手続きを完了した会社員は、確定申告手続きが不要だ。

会社に勤めていると、基本的にはこの年末調整の対象となる。ただ、年収2,000万円を超過している人などは対象外となるので、会社に直接問い合わせてみよう。また、年内で「転職」をした人は、その年の12月31日時点で勤めている会社が年末調整の窓口となる。

確定申告とは? ―― 会社勤め関係なく、所得のあるすべての人が行う手続き

一方の確定申告は毎年2月中旬から3月中旬にかけて、管轄の税務署に確定申告書を提出する手続きだ。税務署の担当は1年間の所得金額や控除額を知らないため、所定の書類に必要書類をすべて記載して税務署に赴くこととなる。郵送やインターネットを活用した提出も可能だ。

自営業や会社の役員が主な対象者だが、前項の「年末調整の対象とならなかった人」も確定申告を行う必要がある。また、住宅ローン控除の適用となる人も、初回の適用を受ける際には確定申告で行う必要がある。

逆に所得があっても、合計所得金額が48万円以下の場合は確定申告不要となる。なぜなら、所得控除(基礎控除)48万円が適用されるため、課税所得金額は0円となるからだ。

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類がある。青色申告を行えるのは、開業届を提出し、さらに青色申告承認申請書を提出した人に限られる。そして、要件を満たせば最大65万円の青色申告特別控除の適用を受けることができる。

給与所得者は原則年末調整が必要

会社員や派遣社員、バイト・パートはほぼ全員、勤務先(派遣社員は派遣元の会社)で年末調整を受ける。

●給与所得者とは

年末調整の対象は給与所得者だ。給与所得者とは、会社で働いてお金をもらっている人だけではない。雇用契約に基づいて給料や賞与を受け取る人も含まれる。この他、会社と締結する委任契約に基づいて役員報酬を受け取っている会社役員も給与所得者である。

所得が給与所得か否かは源泉徴収票で判断する。「給与所得の源泉徴収票」と書かれていたら給与所得だ。

●年末調整はこの書類の提出が必須

年末調整を受けるには「扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要だ。この提出があって初めて年末調整の対象となる。複数の会社に勤務しており、この書類の提出を求められていないのなら、その会社では年末調整は行われない。

年末調整で必要な書類4つ

年末調整で必要になるのは次の4つだ。

  1. 扶養控除等(異動)申告書
  2. 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  3. 保険料控除申告書
  4. 住宅借入金等特別控除申告書

1.は年末調整を受ける全員が提出する。2.は基礎控除や配偶者(特別)控除、調整控除を受けたい人が提出する。3.は生命保険料や地震保険料、iDeCoなどの所得控除があるときに必要だ。4.は住宅ローン控除2年目以降の人が提出する。

1.から3.は会社から交付されるが、4.は初回に確定申告を行った際、その年の10月ごろに税務署から残りの控除適用年分が一括まとめて送られてくるため保管しておき、都度、利用する。

給与所得者でも年末調整がいらない人

給与所得者でも次のいずれかに当たるなら年末調整の適用外となり、いずれも確定申告しなくてはならない。

  • 給与年収が2,000万円を超えている
  • 災害減免法で源泉所得税・復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けた
  • 2カ所以上で働いていて、他の会社に扶養控除等(異動)申告書を提出した
  • 扶養控除等(異動)申告書を会社の期限までに出していない
  • 非居住者、日雇い労働者

年末調整をしても確定申告をすべきとき

年末調整をしても、確定申告しなくてはならない場合がある。次のようなケースだ。

  1. 年末調整で間違いがあり、会社から確定申告をするように言われた
  2. 2つ以上の会社で働いている
  3. アフィリエイトや副業による所得が20万円を超えている
  4. 自宅などの不動産を売却した
  5. 離婚で持ち家を元妻に渡した

1.は、会社での年末調整のやり直しが間に合わない場合の対処だ。それ以外をまとめると「収入がひとつの勤務先からの給料だけではない」ときは確定申告の可能性を考えたほうがよい。

ほとんどの人が5.を不思議に思うだろう。離婚した際に相手に財産を渡すことを財産分与というが、その財産が土地や建物だった場合は譲渡所得の対象となる。そのため、持ち家を元妻に渡した日を基準にして譲渡所得金額を算出し、それに対して所得税が課税されることになる。

年末調整しても確定申告したほうが得なとき

「確定申告しなければいけない」だけでなく「したほうが得」なときや「しないと損」な場合もある。次のようなケースだ。

  1. 住宅ローン控除の適用を受ける初回の年
  2. 医療費がざっと10万円を超える
  3. 自宅財産が災害や盗難の被害に遭った
  4. ふるさと納税を行ったがワンストップ特例が使えない
  5. 赤十字や認定NPOに寄附をした
  6. 課税所得900万円以下で上場株式などの譲渡益や配当益がある

1.は住宅ローン控除1年目のケースだ。住宅ローン控除を最初に受けるときは、借入金の状況や実際に自宅を購入し入居したかの証明で多くの書類が必要になる。そのため初回は確定申告が必要だといえる。ただし2年目以降は年末調整で済ませられる。

2.は医療費控除の目安としてよく言われるものだ。ただ、正確には実際に支払った年間の医療費から保険金などで補填される金額を差し引き、10万円(総所得金額等が200万円以下の場合はその5%)を差し引いた金額が医療費控除の額となる。

4.はふるさと納税に関するものだ。寄附先の自治体が5団体以下ならワンストップ特例を使えば「寄附金額-2,000円」が翌年6月からの住民税から控除される。ただし年末調整で完結することが前提だ。副業や医療費控除で確定申告をするなら、ふるさと納税における寄附金控除もあわせて申告が必要となる。ちなみにワンストップ特例は確定申告を行った時点で無効となる点も覚えておきたい。

6.については後述する。

住民税の確定申告に注意

ここまで触れてきた確定申告の話は、所得税に関するものだ。実は、住民税にも確定申告がある。状況によっては、所得税とは別に住民税の確定申告をすることがある。

●所得税と住民税はルールが違う

所得税と住民税それぞれに確定申告があるのは、ルールが違うからだ。 所得税は国の税金の一つだ。納める先は国だ。ルールは「所得税法」という法律で決められている。一方、住民税は都道府県や市区町村に納める税金で、「地方税法」という法律で規定されている。そのため所得税とは別に、住民税の確定申告が必要になるケースがある。

●住民税の確定申告が必要になるとき

所得税の確定申告が不要でも住民税の確定申告が必要になるときがある。「給与所得以外の所得の合計が20万円以下のとき」だ。副業による所得金額が1万円なら所得税は確定申告しなくてよいが、住民税は1万円でも申告が必要だ。

●住民税の確定申告をした方がよいとき

逆に所得税と住民税両方で確定申告をしたほうがいいときがある。それは課税所得金額が900万円以下の人で上場株式等の譲渡益や配当益があるときだ。大抵は特定口座での源泉徴収で完結する。しかしこのケースは「所得税は確定申告する、住民税は申告不要」とすることで節税できる。

ただし「住民税は申告不要」とするなら住民税も申告しないといけない。所得税だけの確定申告だと、住民税の税率は5%よりも高い総合課税の税率7.2%が適用されるのだ。住民税の確定申告書の備考欄に「上場株式等の譲渡所得について申告不要制度を選択する」旨の記載をし、市区町村に提出すれば申告不要の扱いになる。

確定申告に必要な書類とは

確定申告には次の書類が必要となる。

  1. 確定申告書
  2. マイナンバーに関連する書類
  3. その他添付書類

1.には確定申告書AとBがある。Aは主に給与所得者や年金受給者が利用するシンプルな構造だ。Bはすべての所得に対応している。どちらか迷ったらBを選ぼう。なお、2023年1月からは確定申告書Aは廃止となり、確定申告書Bに統一されることになっている。

2.は「マイナンバーカード」か「通知カード+身分証(運転免許証など)」のどちらかだ。税務署に直接提出なら原本を持参すればよい。郵送するなら「マイナンバーカードの表・裏両方のコピー」か「通知カード・身分証両方のコピー」の添付が必要だ。

3.は申告内容で異なる。e-Taxでの申告なら添付書類はPDFで送るが、省略できるものもある。なお、紙の申告でもe-Taxでも給与所得の源泉徴収票と医療費控除のレシートの添付は不要になった。

書類の添付の要不要の詳細は、以下のリンクを確認してほしい。

【参考】
申告書に添付・提示する書類(国税庁)
イメージデータで提出可能な添付書類(国税庁)
e-taxでの確定申告における添付省略制度について(国税庁)
源泉徴収票等の添付不要について(国税庁)

ふるさと納税に関する手続きの簡略化

以前は、ふるさと納税の利用を申告する際には、各自治体から送付される「寄付金受領証明書」を基にして、手作業で入力しなければならなかった。

しかし、2021年(令和3年)年分の確定申告から、特定事業者(国税庁が認めたふるさと納税サイト)を利用すれば、簡単に申告できるようになった。

具体的には、e-Taxを使って確定申告する際に、特定事業者のポータルサイトから「証明データ」をダウンロードして、そのデータを国税庁が提供するQRコード付証明書等作成システムで読み取る。そして、これをプリントアウトして、確定申告書に添付すれば、手続きは完了だ。

なお、特定事業者は、ふるなび、さとふる、楽天ふるさと納税などである。詳しくは、国税庁のHPで確認できる。

(参考)国税庁:令和3年分 年末調整のしかた所得税(確定申告書等作成コーナー)>令和3年分の確定申告からふるさと納税(寄附金控除)の申告手続が簡素化されます

住宅ローン控除の期間延長・要件緩和

従来、住宅ローン控除の期間は、10年間が原則だった。しかし、2019年(令和元年)10月からの消費税増税(8%から10%)を受けて、控除の期間が13年に延長される特例が施行された。ただし、これには「2020年末の入居」までという要件があった。

しかし、新型コロナウィルス感染症による住宅需要の減少を鑑みて、この特例措置をさらに2年間延長するように税制が改正された。

この特例の内容を整理すると、まず注文住宅は「2021年(令和3年)9月末まで」、分譲住宅は「2021年(令和3年)11月末まで」に契約を完了しておかなければならない。さらに、「2022年(令和4年)12月末まで」に入居しなければ、控除の対象とならない。

さらに、従来の適用要件の一つであった「床面積50㎡以上」が、「床面積40㎡以上」に緩和されることになった。この要件緩和により、今まで住宅ローン控除の対象外だった小規模住宅が、注目されることになる。 ただし、床面積の算定方法に注意が必要だ。それは、戸建住宅とマンションなどとでは、床面積の測り方が異なるからである。

「不動産登記規則第115条」によると、建物の床面積は「各階ごとに壁その他の区域の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」とされている。しかし、区分建物(マンションなど)については、「壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積」とされている。

つまり、戸建住宅は、「壁の中心線(壁芯)」で床面積を計測するのに対し、マンションなどは「壁の内側の線」で床面積を計測するのである。つまり、マンションなどの方が、やや狭く計測されることになる。

通常の確定申告の期間と納付方法

通常の確定申告とは「納税の必要があるとき」である。この場合の申告期間と納付方法は次のようになる。

●確定申告の期間

申告期間は申告年の翌年2月16日から3月15日までだ。申告期間の始まりの日と終わりの日が土日祝日にあたるなら、その翌営業日(平日)が期日 となる。

●確定申告の納付方法

税務署や金融機関の窓口で現金納付できるほか、コンビニ決済やクレジットカード決済が可能だ。ただし、コンビニ決済は納税額30万円以下に限られる。事前にQRコードの準備も必要だ。クレジットカード決済は、納税額に応じて手数料がかかる。詳しくは、以下のリンクを参考にしてほしい。

【参考】
クレジットカード納付の手続(国税庁)
コンビニ納付(QRコード)(国税庁)

このほか、口座振替も可能だ。ただし事前に届出が必要になる。

還付の確定申告は期限に注意

還付のための確定申告(還付申告)の期間や手続きは、納税のときと少し異なる。

●還付申告の期間

還付申告は翌年1月1日から5年間行うことができる。還付もれがあった場合でも、5年間は遡って申告できるというわけだ。

●還付を受けるには

還付を受けるには、確定申告書第一表の右下にある還付先口座に、銀行名、本店・支店名、口座の種別、口座番号を記入しなくてはならない。郵便局で受け取りもできるが、振り込みにするのが一般的だ。

なお、還付される時期は、申告してから1カ月から1カ月半後となる。納税者本人の口座以外では受け取れないので、注意しよう。

公開日:2020年11月12日
更新日:2022年3月11日

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