岩谷産業 <8088> を知らなくても、カセットボンベを知らない人はまずいないだろう。岩谷産業がカセットボンベとカセットこんろを商品化したのは1969年のことで、今ではカセットこんろで国内市場の約80%、同じくカセットボンベで約60%のシェアを誇る最大手である。その岩谷産業の株価が株式併合の考慮後で約30年ぶりの高値を付けている。新型コロナ禍の外出自粛で、家族だんらんの食事をする人が増えたほか、キャンプブーム、さらには世界的な「脱炭素社会」の実現に向けた取り組みも追い風となっているようだ。

今回は岩谷産業の最新動向をお届けしよう。

圧縮水素で約70%、液化水素で100%のシェア

(画像=ささざわ / pixta, ZUU online)

岩谷産業は1930年創業の燃料商社の老舗だ。同社の売上の柱は2つある。一つ目の柱は総合エネルギー事業で全体の46%(2020年3月期)を占めている。総合エネルギー事業は家庭用LPガス、工業用LPガス、カセットこんろ、カセットボンベ、LNGなどが中心だ。LPガスは全国約320万世帯に供給しており、販売量は卸売りの国内シェアで約4%、小売りで約13%と業界第1位、同じくカセットこんろで約80%、カセットボンベで約60%のシェアを誇る最大手だ。

2つ目の売上の柱は、全体の28%を占める産業ガス・機械事業である。産業ガスで売上の大半を占めるのが液化空気から製造されるエアセパレートガスだ。冷却、燃焼、洗浄、溶接といった用途で、鉄鋼、機械、半導体、化学、医療など様々な分野で使われる。さらに注目されるのが「水素」である。水素は主にエネルギー源として使われ、岩谷産業は圧縮水素で約70%、液化水素で100%の圧倒的シェアを握っている(詳細は後述)。

カセットこんろの出荷量を4倍に拡大

11月9日、岩谷産業が発表した2021年3月期第2四半期累計(4〜9月)決算は、売上が前年同期に比べて11.9%減の2846億円、営業利益は同9.5%減の7528億円と減収減益だった。しかし、直近四半期(7〜9月期)については売上が8.0%減の1456億円となる一方で、営業利益は59.9%増の45億円と大幅増益に転じていた。