しばしばマネー雑誌でも取り上げられる高配当銘柄。魅力は何といってもキャッシュによる還元です。ただし、高配当銘柄の不安材料は「将来にわたって増配や配当維持が保証されていない」点です。そこで注目したいのが、連続増配銘柄です。とくに米国株投資においては、企業の配当への意識も高く高配当傾向であること、そして25年以上と長期に渡り連続増配を続ける銘柄も数あることから、注目を集めています。

今回は、米国株においておすすめ銘柄を紹介しつつ、連続増配銘柄とは何か、メリット・デメリット、さらには連続配当の見つけ方について解説します。

目次

  1. 連続増配銘柄とは?その魅力、価値について
  2. 連続増配銘柄に投資するメリットとデメリット
  3. 米国株の半世紀を超える連続増配銘柄12選
  4. 連続増配銘柄はどうやって見つける?
  5. 連続増配銘柄はなぜアメリカに多く日本には少ないのか
  6. まとめ:連続増配銘柄への長期投資で堅実な資産形成を

連続増配銘柄とは?その魅力、価値について

(画像=beeboys/stock.adobe.com)

連続増配銘柄とは、一年間に出される1株当たりの配当金が、毎年増え続けている銘柄です。この章では、連続増配銘柄の特徴や高配当銘柄との違いについて解説します。

連続増配銘柄の特徴

長年にわたり配当金を増やし続けている連続増配銘柄は、米国企業に数多く存在します。なかでも25年以上の長期にわたり増配を続ける銘柄は「配当貴族銘柄」と呼ばれます。

米国株を投資対象とするインデックスファンドの指数である「S&P配当貴族指数」は、S&P500構成銘柄の中から25年連続して増配を続けている企業を抽出し、株価や配当金推移を測定しています。この指数に組み込まれている銘柄が「配当貴族銘柄」です。さらに、50年以上連続して増配を遂げた銘柄を「配当王銘柄」と呼ぶこともあります。

連続増配銘柄を支えるのは、安定した業績と財務基盤です。安定した業績を出し続けられる企業なら、連続した増配も可能でしょう。とはいうものの、一時的に業績が落ち込むこともあります。そんな時でも、財務基盤がしっかりしている企業なら、増配を途切れさせないこともできるわけです。

高配当銘柄との違い

高配当銘柄とは、株価に対して配当額が高い銘柄の総称です。明確な定義はありませんが、配当利回り(=1株当たりの年間配当金額÷株価×100)が3%を超えるなら高配当銘柄と呼んでも差し支えないでしょう。

ちなみに、東証一部全銘柄の平均配当利回り(2021年1月18日現在:加重平均・予測値)は、1.90%です。

高配当銘柄の最大のネックは、将来の減配です。この点が、連続増配銘柄との大きな違いです。最近は国内でも、自動車や総合化学メーカーなど高配当で人気の高かった銘柄が、業績悪化で減配に追い込まれています。

連続増配銘柄に投資するメリットとデメリット

ここからは連続増配銘柄に投資するにあたって、投資家が期待できるメリットと、気をつけたいデメリットを解説しましょう。まずは3つのメリットを確認します。

連続増配銘柄のメリット1:インカムゲインとキャピタルゲインを狙える

増配が連続すれば、配当面での魅力が増すので株価も上がります。つまり、配当金(インカムゲイン)だけでなく株価上昇による売却益(キャピタルゲイン)も狙えるわけです。

連続増配銘柄のメリット2:配当利回りが年々増加する

増配が連続すれば、配当収入も毎年加速度的に増えていきます。例えば平均10%の増配が5年続けば、配当額は当初の1.6倍に膨らみます。

連続増配銘柄のメリット3:株主を大切にする経営方針の企業に投資できる

連続増配企業の多くは、有価証券報告書などのレポートに配当政策を開示し、株主への利益還元方針を明確に示しています。投資家は、連続増配企業の掲げる方針やビジョンを通じ、持続的成長と企業価値向上、安定した利益還元を掲げる銘柄を選ぶことができるのです。

このようにメリットも多い連続増配銘柄への投資ですが、その特徴からなるデメリットもあります。主な2つを紹介します。

連続増配銘柄のデメリット1:短期的に大きな利益は狙いにくい

キャピタルゲインを狙った成長株や新規公開株への投資なら、一気に3割、4割のキャピタルゲインも狙えます。

一方で連続増配銘柄は、安定した増配に軸足を置いています。インカムゲインは、キャピタルゲインと違って短期間で大きな利益は狙えません。長期間保有し、じっくり投資をするスタンスではない投資家に、連続増配銘柄は向かないかもしれません。

連続増配銘柄のデメリット2:減配や株価が値下がりするリスクも

今まで連続して増配してきたからといって、未来の増配が約束されているわけではありません。連続増配銘柄だからと安心し切るのではなく、さまざまな指標をチェックして、減配リスクを予見しておかなければいけません。長期的な企業研究と動向の定期的なモニタリングが求められるといえます。

米国株の半世紀を超える連続増配銘柄12選

米国株は、日本株に比べ連続増配銘柄が多いことで知られます。とくに50年以上にわたって増配を続ける「配当王銘柄」について、銘柄例を挙げて解説します。

ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)

57年にわたり、連続増配を維持しています。米国の医療・ヘルスケア企業であり、目薬・胃腸薬などのOTC(一般医薬品)に加えて、循環器・向精神薬などのETC(医療向け医薬品)を展開しています。

シンシナティ・フィナンシャル(CINF)

57年にわたり、連続増配を維持しています。損保・生保事業を展開するアメリカのホールディング・カンパニーで、独立系代理店も展開しています。

プロクター・アンド・ギャンブル(PG)

63年にわたり、連続増配を維持しています。アメリカの日用品メーカーで、スキンケア・洗剤・ヘアケアなどをグローバルに展開、多くの分野でトップシェアを握ります。

ロウズ・カンパニーズ(LOW)

56年にわたり、連続増配を維持しています。全米2位の大手ホームセンターチェーン企業で、メキシコ・カナダにも展開しています。

コカ・コーラ(CO)

58年にわたり、連続増配を維持しています。ノンアルコール飲料で世界トップシェアを誇ります。

ノースウェスト・ナチュラル・ガス(NWN)

62年にわたり、連続増配を維持しています。オレゴン州・ワシントン州・カリフォルニア州を主要拠点とする、天然ガスやガス機器の供給会社です。

パーカー・ハニフィン(PH)

63年にわたり、連続増配を維持しています。窒素発生装置・CO2発生装置などのモーションコントロール製品を生産・物流施設などに供給しています。

エマソン・エレクトリック(EMR)

64年にわたり、連続増配を維持しています。世界各地に生産拠点を構え、計測機器・無停電電源・電気モーターなどを供給しています。

スリーエム(MMM)

62年にわたり、連続増配を維持しています。米国の化学・電気素材メーカーですが、最近はヘルスケア部門で医療用テープ・創縫合製品などを展開、大きく業績を伸ばしています。

ジェニュイン・パーツ(GPC)

64年にわたり、連続増配を維持しています。「NAPA」ブランドを中心に、自動車交換部品、工業用消耗品(ベアリング・バルブなど)、オフィスサプライや電気パーツ(磁気ワイヤー・ケーブルなど)を供給しています。

ドーバー(DOV)

65年にわたり、連続増配を維持しています。総合工業製品メーカーとして、通信機器・掘削用ドリルからゴミ収集車まで幅広いプロダクツを供給しています。

アメリカン・ステイツ・ウォーター(AWR)

66年にわたり、連続増配を維持しています。カリフォルニア州で水道の浄水・供給や電力供給事業を展開しています。

連続増配銘柄はどうやって見つける?

すでに数十年にわたり増配を続ける銘柄はすぐに見つかりますが、デメリットで紹介したように、配当貴族銘柄や配当王銘柄は市場からの評価も高く、株価も高値安定の傾向があります。投資家としては、これから長期にわたり増配を見込める銘柄を探せることも重要でしょう。そこで、ここでは、連続配当銘柄を見つけるためのポイントを3つ、解説します。

ポイント1:連続増配年数

最初のポイントは連続増配年数です。日本において連続増配銘柄は少数派ですが、最近は少しずつ増えてきました。一方アメリカでは連続増配文化が根づいており、半世紀、四半世紀と増配を続ける銘柄も珍しくありません。まずは、四半世紀といかずとも、10年以上増配を続ける銘柄をスクリーニングして、銘柄に目星をつけてみましょう。

ポイント2:配当利回り

連続増配銘柄の配当利回りは、単年度で評価するのでなく、将来の増配も見込んで今後5年間から10年間の配当収入と配当利回りを予測しましょう。今の配当利回りが平均程度でも、増配を織り込めば高レベルの配当利回りが期待できるはずです。

ポイント3:10年間のCFPS、EPS

CFPS(一株あたりキャッシュフロー)やEPS(一株当たり利益)が潤沢でない企業は、増配を続ける余裕がありません。EPSに対する配当の割合である配当性向は、配当余力を測るバロメーターです。配当性向が30~40%なら増配を続ける余裕が充分あると見込めます。逆に配当性向が60%を超えている銘柄では、持続的な配当に疑問符がつきます。

連続増配銘柄はなぜアメリカに多く日本には少ないのか

配当王銘柄・配当貴族銘柄がずらりと並ぶアメリカに比べて、日本企業はあまりにも見劣りします。この差はどこから生まれてくるのでしょうか。

アメリカにおいて連続増配銘柄が多い理由

アメリカでは「会社は株主のもの」とする考え方が根強く、「物言う株主」が普通です。配当に対する関心や株主還元意識も高く、経営陣も株主からの要望に応えざるを得ません。もし会社提案の配当に株主が不満なら、増配の株主提案を起こされかねません。実際にアメリカにおいて、公的年金基金やアクティビストによる株主提案は日常茶飯事です。

つまりアメリカでは、成長投資に回してもなお利益が余るのであれば、配当に回すのが当たり前なのです。だからこそ連続増配を掲げる企業も少なくないのです。

日本において連続増配銘柄が少ない理由

日本企業の多くは、株主還元にあまり積極的ではなく、利益の多くを内部留保に回してしまう、とされてきました。日本企業が内部留保を蓄積する理由は2つあります。

ひとつは、リーマンショックのような不測の事態に備えて、内部留保を蓄積しておくためです。もうひとつは、将来の事業拡大資金として利用するための内部留保です。ただし最近の日本企業は、成長投資に資金を投じることも減ってきました。

つまり不測の事態に備えるために内部留保をキャッシュとして蓄積してきましたが、こうした経営姿勢を見る株主の眼も最近は厳しくなっています。株主総会で反対票を投じる機関投資家も、最近では少しずつ増えています。

日本企業も、アメリカ型の株主還元重視型にかじを切る時期に来ているのかもしれません。

まとめ:連続増配銘柄への長期投資で堅実な資産形成を

ここまで、連続増配銘柄について、その魅力や、半世紀を超えて連続増配を続ける米国の配当王銘柄12選などを紹介してきました。連続増配銘柄は、じっくり運用するタイプの個人投資家に最適の投資商品です。連続増配銘柄を長期投資商品のひとつに組み込んでみてはいかがでしょうか。

文・N.ヤマモト
都市銀行にてファイナンシャルプランナーとして主に、富裕層の資産形成・運用相談を担当。投資信託や保険商品・債券・外貨預金の販売に携わる。その後はWEBライターとして、投資や資産形成についての情報を発信。子供の学費や老後資金作りのため、自らも20代から資産運用を続けている

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