週末や長期休暇に、家族で別荘地を訪れる……。そんな生活に憧れを抱く人は多いでしょう。最近では、さまざまな価格帯の別荘があり、別荘を購入する人が増えてきています。一方で、無計画に別荘を購入したがために後悔してしまうケースも。今回は、別荘購入で後悔しないためのポイントを解説します。
別荘を購入して後悔する人の3つの特徴
まず、別荘を購入して後悔する人の特徴を順番に紹介します。大金を使って別荘を購入してから後悔しても遅いので、当てはまっていないかチェックしてみましょう。
別荘ライフへの憧れが先行している
「涼しい風の吹く避暑地で過ごしたい」
「綺麗なビーチを満喫したい」
「質のいい温泉を心ゆくまで堪能したい」
「ウィンタースポーツを楽しみたい」
別荘を購入する目的は人によってさまざまです。しかし、憧れだけが先行した状態では、冷静な判断ができません。結果として、「思ったより使わなかった」ということにもなってしまいます。できることなら、自分が本当に満足できることにお金を使いたいものです。別荘購入を後悔しないために、購入後の現実的な面にも目を向けていきましょう。
具体的な費用をシミュレーションしていない
別荘を購入する時、物件価格を見て「これなら問題ない」と購入を決めたとします。しかし別荘を購入した後にも、維持費や修繕費などさまざまな費用が発生します。
特に「少し背伸びしてでも、別荘を買おうかな」「別荘を買うことで、富裕層との人脈を作れるかもしれない」といった動機の場合は、一度慎重に購入後の諸費用について検討する時間を取りましょう。別荘の購入は、ブランド品を購入するのとは訳が違います。購入後も維持管理費がかかるからです。
別荘の維持管理費は、別荘を所有している限り継続的に発生します。「いらなくなったら手放せばいい」と考えるかもしれませんが、すぐに買い手が見つかるとは限りません。もしかしたら、将来処分に困るケースもあることを念頭に置いておきましょう。
別荘を購入する前に、物件価格以外の初期コストや、別荘を所有することで発生する維持管理費を十分シミュレーションしておくことが大切です。あわせて、現状の収入を数十年先も維持できるかどうか、冷静に考えておきましょう。
「何とかなる」という楽観的な考え方
真の富裕層は旅先で気に入ったからと、現地の不動産を2つ3つ購入したりします。実際にそういう場面に遭遇すると、富裕層特有の大らかさに憧れを抱くかもしれません。
しかし「なんとかなる」という楽観的な考え方で別荘を購入し、実際に「なんとかなる」のは限られた富裕層だけです。見切り発車で別荘を購入しようとしていないか、特に、何らかの理由で急に世帯収入が伸びているような状況での決断は慎重に行うようにしましょう。
自分で思っている以上に人は影響されやすいものです。収入が増えると脳内に快楽物質が放出され、気持ちも大きくなります。ある意味、ハイになった状態です。そういったタイミングでの別荘購入は、特に綿密なシミュレーションをしておく必要があります。
別荘購入で後悔の多いポイント4選
続いては、別荘を購入したものの後悔してしまうポイントについて、具体的に解説していきます。現実的に別荘の購入を考えている人は、後悔ポイントを踏まえて別荘を選んでみてください。
(1)別荘を買ったけどほとんど利用していない
別荘を購入した人で意外によくある後悔ポイントが、利用頻度です。
「別荘に行ったのは、別荘を買って2、3年だけ。その後は飽きて足が遠のき、維持管理費だけが毎年かかっている」
「子どもが中学生までは別荘に家族で遊びに行っていました。でも高校になると家族で出かける機会は減り、大学進学で子どもがひとり暮らしを始めるとともに、全く利用しなくなりました」
「別荘を購入した頃は30代で体力もあり、数時間の移動は苦にならなかった。でも40代になると、別荘地までの移動を負担に感じるようになった。今では近場に出かけることが増えた」
こういった声が、意外にも多いのです。別荘を購入して後悔しないよう、別荘を使う機会や、自宅と別荘地との距離をよく考慮しましょう。
(2)別荘地での生活が不便で足が遠のいた
都心部で生活している人ほど、田舎の別荘暮らしに憧れるのではないでしょうか。最近では、サラリーマンでも田舎の古民家を別荘として購入し、週末に家族で自然を満喫するといった暮らし方を選択する人も増えてきています。
しかし、田舎暮らしは楽しいことばかりではありません。田舎暮らしを選択するなら、田舎暮らしのデメリットも知っておく必要があります。
「ムカデやクモが家の中に出るのは当たり前。それに、都会の虫と比べて大きかったり、たくましかったり。防虫対策をしても、限界がある」
「自然が雄大で景観が綺麗な場所に別荘を買いました。でも、買い物に行くにも時間がかかるし、忘れ物をできないプレッシャーがあります」
「一度、別荘地で体調を崩し、病院やクリニックが遠いことに不安を覚えてから、めっきり足が遠のいた」
別荘を購入する時は、「毎日暮らすわけではないから」と、利便性よりも別荘のデザインや自然豊かな環境を優先したくなるものです。しかし、実際に数日間滞在するとなると、やはりある程度の利便性は確保しておいたほうがが後悔は少なくて済みそうです。
(3)別荘の維持管理費がかかり過ぎて家計が苦しい
家というのは、少し放置しただけで想像以上に手入れが必要になるものです。別荘は年に数回しか利用しませんが、利用しない間は放置してもいいというわけではありません。自分で清掃に行けない場合は、維持管理を業者に委託しておく必要があるでしょう。また、税金や光熱費の基本料金なども継続的に発生します。
別荘を購入したものの、維持管理費が家計を圧迫して後悔するケースは多くあります。毎月数万円だとしても、それが数十年続けば、数百万円にのぼります。別荘を購入することで発生する維持管理費については後述するので、参考にしてみてください。
(4)中古物件のリフォーム費用が想像以上に高かった
別荘を購入する時、中古物件から選ぶ人も多いのではないでしょうか。中古物件の中には、管理状態のいいお宝的な物件も存在します。しかし一方で、管理状態の悪い物件があるのも事実です。
「リフォームしようと壁紙をめくると、シロアリに柱がほとんど食われていて。それだけで300万円以上かかり、もともと間取り変更やデザインリフォームにあてようと思っていたお金が飛んでいきました。水廻りだけは、かろうじてリフォームで新しくしましたが、快適とはいえません」
「中古の別荘を購入してリフォームしたほうが、安くつくと考えていたんです。でもリフォームが終わってすべての費用を計算し直したら、新築の別荘を買える値段でした。もっとよく検討すればよかった」
中古の別荘を買ってリフォームした結果、予想以上に費用がかかって後悔したというのはよくあるケースです。中古物件だけに絞るのではなく、新築物件を見たり、リフォーム予算を考慮したりしつつ、幅広い選択肢から選んでいくようにしましょう。
別荘を購入する前にチェックしておきたいポイント
続いて、別荘を購入してからの後悔ポイントを踏まえ、購入前にチェックすべき具体的な内容をお伝えしていきます。
別荘のチェックポイント①立地
別荘を購入する時、自宅と別荘の距離はとても重要です。別荘を購入する前から、ウィンタースポーツのために毎年出かけている場合などは購入後も無理なく行けるかもしれませんが、そうでない場合には距離があり過ぎると足が遠のく原因になってしまうかもしれません。
自宅から別荘までの距離、移動手段、交通費を計算し、家族全員で向かう場合のシミュレーションをしておきましょう。
また温泉地などに別荘を購入し、子どもが独立してからも夫婦2人で別荘ライフを楽しもうと考える人もいるでしょう。一般的に、年齢を重ねるほど長時間の移動は負担になります。高齢になってからも別荘で過ごしたいと考えているなら、アクセスの良さにこだわりましょう。
別荘を将来的に売却したいと考えている場合や、短期的に所有して手放すことを想定している場合は、資産価値にも注目しておきましょう。人気のエリアなら、資産価値が落ちにくく、買い手がつく可能性も高くなるからです。一方、あまり人気のないエリアの別荘を購入すると、売却できないだけでなく相続税だけがかかるという「負動産」になってしまう可能性があります。
別荘のチェックポイント②維持管理費
別荘を購入するなら、維持管理費のことは避けては通れません。別荘を購入すると、次のような維持管理費がかかります。
・管理費
清掃や草刈り、除雪、定期巡回などを業者に委託すると、管理費がかかります。金額は場所やサービス内容によって変わりますが、月額1~5万円ほどです。
・固定資産税
毎年5月頃に固定資産税を払わなければなりません。土地建物の評価額に税率1.4%をかけて計算します。セカンドハウスと認められれば減額される可能性があります。金額は土地建物の評価額によって大きく変わります。年間数万~数十万円程度です。
・住民税
住民票を移さなくても、別荘を購入すると均等割を支払わなければなりません。金額は年間5,000円程度です。また場所によっては、別荘に対する自治体独自の税金が存在している場合があります。
・火災保険料
別荘は不在期間の方が長いので、必ず加入しておきましょう。
・水道光熱費
別荘を利用しなくても、基本料金が発生します。別荘はプロパンガスが多く、使用しなくても数千円程度のガス代が発生すると思っておきましょう。トータルで、月額1万円程度が目安です。別荘が吹き抜けだったりすると、滞在中の水道光熱費が想像以上に高くつくケースがあります。
・修繕費用
家電や水回り設備の入れ替え、外壁塗装や屋根の補修、給湯器交換など、別荘を購入すると必ず修繕費用が発生します。その他に、クロスやタイルの張り替えなどもあります。定期的な出費に備え、修繕金を積み立てておくことが大切です。目安は月額1万円程度です。
こうして維持管理費をピックアップすると、最低でも年間50万円程度は負担が発生することがわかります。年間50万円でも、20年経てば1,000万円になります。これだけの維持管理費を支払ってでも別荘を購入したいかどうか、よく検討しましょう。
別荘のチェックポイント③利便性
後悔のない別荘地選びをするためには、景観だけでなく利便性もチェックすることが大切です。買い物できる施設があるか、医療機関へのアクセスはどうかといった点をチェックしましょう。
また、混み具合や騒音も気にしておきたいポイントです。せっかく別荘を購入したのに、人が多すぎて静かに過ごせないといった後悔事例もあります。
別荘のチェックポイント④メンテナンス状況や設備
中古の別荘を購入する場合は、メンテナンス状況や設備状況を注意深くチェックしてから購入しましょう。購入前にメンテナンス不足を発見すれば、それを指摘して価格交渉をしたり、売買契約成立までに設備を交換してもらったりできる可能性があります。
チェックポイントには、たとえば下記のようなものがあります。
- 目立つひび割れがないか。
- 外壁やデッキが腐っていないか(押してみてやわらかくないか)。
- 屋根の状態はいいか。
- 水道管は問題ないか。
- 給湯器や暖房機はいつからあるか。
- ドアの開閉はスムーズか。
- 屋根裏や床下に異常はないか。
別荘を購入するならどんな初期コストがかかる?
別荘を購入する時には、物件価格以外にもさまざまな初期コストが発生することを想定しておきましょう。別荘を購入する場合の初期コストには、次のようなものがあります。
・仲介手数料
不動産会社に支払う仲介手数料です。仲介手数料は物件価格ごとに、法律で上限が定められています。物件価格200万円以下は5%、200万円超400万円以下は4%、400万円超は3%です。
・固定資産税の精算金
売り主が既に1年分の固定資産税を支払っている場合、購入後の固定資産税分を買い主が日割で売り主に支払います。売り主か不動産会社が計算してくれます。金額は土地建物の評価額によって変わります。
・登記費用
登記を司法書士に依頼する場合、司法書士報酬を支払わなければなりません。金額の目安は8万円程度ですが、地域や物件価格、司法書士事務所によって違います。また、法務局に書類を持ち込んで自分で登記申請を行うこともできます。
・登録免許税
登記の際に発生する税金なので、登記費用とあわせて司法書士から請求されることが一般的です。税率は原則2%です。
・不動産取得税
不動産を取得した時に一度だけかかる税金で、土地建物の評価額に対して原則4%をかけて計算します。セカンドハウスと認められれば、税金が優遇されます。
・消費税
物件価格は税抜き表示になっていることも多々あります。意外と見落としがちなので、消費税も含めての予算を想定するようにしましょう。
・印紙代
契約書に貼る印紙代が発生します。物件の購入価格によって、数百~数万円まで変化します。
初期コストをすべて含めると、数百万円になることも少なくありません。別荘を購入する時は、初期コストと維持管理費の双方を考慮し、シミュレーションすることが大切です。
別荘を購入して後悔した事例
続いて、別荘を購入して後悔した事例を紹介します。
別荘の維持管理に時間を奪われ、購入を後悔
ご主人が田舎好きだったことから、下の子が小学生に上がる頃には別荘を購入したAさん。使い勝手を考慮し、自宅から「ドアtoドア」で1時間の距離にある中古物件を購入しました。
ご主人が不動産関連の仕事だったこともあり、中古物件の不備を事前にしっかりチェックし、価格交渉に成功。当初より数十万円価格が下がり、その分をリフォーム費用にあてることができました。
子どもたちが小学生の間は、週末に家族で別荘に行き、程よい田舎暮らしを満喫しました。自宅より自然豊かな環境ということもあり、子どもたちも伸び伸びと楽しんでいました。
しかし子どもたちが中学生にあがる頃には、週末も友達と出かけたいと言ったり、ゲームをしたりするようになりました。子どもたちが乗り気でないことから、自然と家族みんなで別荘に行く回数は、年数回にまで激減しました。
そうなると、困るのが清掃や点検です。自宅から1時間という距離なので、業者に委託するのはもったいないと考えたAさんは、1ヵ月に数回、別荘を訪れて清掃や点検等を行うようになりました。
ところが清掃に行くようになって、数週間あいただけでも、ここまでホコリが積もるものかとAさんはがく然とすることになります。夏には草が伸び放題、秋には落ち葉がデッキを埋め尽くします。
週末に別荘に行って家事をすると、今度は自宅の家事が追い付きません。その分、平日にしわ寄せがいきます。
別荘の買い手が見つからず、手放せないという不安
子どもたちが就職し、一人暮らしをするために家を出る頃になって、Aさんはとうとう夫に相談しました。年を経るに従い、1時間の移動が負担になっていたということもあります。
夫婦で相談し、別荘を手放すことを決めましたが、建物の劣化等を考慮し、不動産会社が提示した金額は、購入時と比べはるかに低い金額でした。やむを得ずその金額で売りに出したものの、今度はなかなか買い手が見つかりません。
メンテナンスを怠れば、買い手はさらにつきにくくなります。自分たちの時のように、価格交渉をされるかもしれない。そう思ったAさんは、あとちょっとの辛抱だと、別荘の清掃や管理を続けました。
ようやく、別荘を購入したいという人が現れ、別荘の売却に成功し、Aさんはほっと一安心。しかし振り返ってみると、家事に追われてばかりだったと別荘の購入を後悔したといいます。
価格交渉に成功し、家族で週末の田舎暮らしを楽しみ、滑り出し順調に思えたAさんご夫婦の別荘ライフ。しかし、維持管理の負担が重くのしかかり、買い手を見つけることにも苦労し、納得のいく買い物とはいえませんでした。
目的やライフプランを踏まえてよく検討することが大切
別荘を購入するなら、目的を明確にし、ライフプランを踏まえて慎重に検討しましょう。
例えば、子どもたちが小さい間だけ利用するなら、売却しやすい人気の別荘地が適しています。子どもたちが中学生・高校生になった頃、すぐに買い手を探し始めれば、物件価格の下落による影響もそこまで大きくありません。
また、自分たちも若く体力があるうちに利用することになるので、ニセコや石垣島など多少遠方を選んでも大きな負担にはならないでしょう。
一方、子どもたちが独立したあとも、ご夫婦2人で別荘ライフを満喫したいと考えるなら、自宅からさほど遠くない別荘地が適しています。年を経てからも負担のない移動ができるよう考慮しましょう。子どもも大人も楽しめるとなると、避暑地や温泉地などが適しているかもしれません。
将来まで保有するとなると、出口戦略も重要です。子どもたちに相続の意志を確認したり、どのタイミングで売却するかを考えたり、売却しない場合は相続税のシミュレーションをしたり。子どもたちのことを思いやり、できる限りの備えをしておくことが大切です。
別荘を購入する目的や利用法が決まったら、続いてライフプランを作成します。年収や昇給率、将来受け取れる年金などを考慮し、生涯所得を計算しましょう。出費に関しては、毎月の生活費に加え、家電買い替えなどの突発費用、子どもたちの教育費用や両親の介護費用なども考慮する必要があります。
しっかりライフプランを作成して、別荘の維持管理費を問題なく負担できるのか、物件の購入費用と初期コストにどのぐらいの予算を割けるのかを検討しましょう。
ここまで準備すれば、別荘購入後に後悔してしまう可能性は限りなく低くなります。
別荘を購入するなら事前によく情報収集を
せっかく別荘を購入したのに後悔する状況になってしまうのは、大変もったいないことです。憧れの別荘ライフを満喫するためにも、これまで購入者が後悔したポイントを参考に別荘購入の目的を見つめ直し、情報収集したうえでしっかりシミュレーションを行っておきましょう。
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