投資先の銘柄を検討するうえで、「利回り」は重要な判断材料の1つです。配当利回りの高い銘柄への長期投資で、堅実に資産を増やしたいと考える人も多いでしょう。

この記事では、配当利回りの平均を紹介し、高配当銘柄に投資する際に必ず押さえておきたい注意点を解説します。銘柄選びのポイントも説明しますので、ぜひ自分に合った銘柄選びの参考にしてください。

目次

  1. 配当利回りとは
  2. 配当利回りの平均を知ることでわかること
  3. 国内企業の配当利回り水準
  4. 配当利回りを求めて投資をする際の注意点
  5. まとめ:配当利回り投資で資産をゆっくり着実に増やしていこう

配当利回りとは

(画像= Monster Ztudio/stock.adobe.com)

利回りとは、投資額に対する収益の割合を表す言葉です。一般的に、1年間の投資パフォーマンスを測る指標として利用されます。

配当を求める株式投資では、利回りのなかでも「配当利回り」に注目して銘柄を検討することになります。配当利回りとは、購入株価に対して、1年間でいくら配当金を受け取れるかを示す数値です。

配当を出している企業の株式を購入すると、投資元本に応じた配当金が定期的に受け取れます。受け取った配当金も再投資することで、配当金が出続ける限り資産は着実に増えていきます。

配当利回りの計算式について

配当利回りは、下記の式で計算できます。

配当利回り(%)=1株あたりの年間配当金額÷株価×100

たとえば、年間の配当金が10万円、現在の株価が250万円だとすると、配当利回りは4%です。仮に株価が同じであれば、配当金が大きいほど配当利回りは上がりますし、逆に配当金が同じなら、株価が低いほど配当利回りは上がります。

投資のリターンはインカムゲインとキャピタルゲイン

投資で得られるリターンには、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類があります。

インカムゲインは、投資期間中に継続して得られる利益のことで、配当金もこれに含まれます。インカムゲインを主眼に置いた投資は利益が予測しやすいので、着実な資産形成に向いています。日本企業の場合は半年や一年に一度の割合で配当金が支払われます。また、日本企業独自の制度である「株主優待」もインカムゲインの1つとされます。株主優待は、企業が株主に感謝の意を示す意味で自社商品や優待券などが贈られます。

一方のキャピタルゲインは、株式の購入金額と売却金額の差額で生まれる利益です。購入時よりも値上がりした時に売却すれば利益が発生する一方で、値下がりした時に売却すれば損失が発生するので、キャピタルゲインを主眼とする場合は、買付と売却のタイミングを見極めることが重要です。

またキャピタルゲイン狙いの投資では、短期間で大きな利益が発生する可能性もありますが、株価が思うように上がらなければ、売却の機会が訪れないまま月日だけが経ってしまうことになります。さらに、株価が下がった場合は「損切り」を決断せねばならず、場合によっては大きな損失を出す可能性もあります。

複利効果とは?

インカムゲインの特徴は、一度に発生する利益は小さくても、安定的に利益が得られ、着実に資産形成していけることにあります。

株式を保有し続けていて、企業が安定的に業績を上げている限り、毎年定期的に配当金を受け取れます。受け取った配当金を引き出すのではなく、再投資することで翌年は福利がついた分の配当金を受け取れます。利子を元本に組み込むことで利子が大きくなることを「複利効果」といいますが、配当金の再投資にも複利効果があるので、株を長期に保有することは、着実に資産を大きくしやすい投資手法といえます。

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配当利回りの平均を知ることでわかること

インカムゲインを求める株式投資では、配当利回りによって資産の増加ペースが変わります。配当利回りの高い銘柄ほど増加ペースも高くなりますが、どの程度の配当利回りがあれば「利回りが高い」といえるのでしょうか。

利回りが高いほうがインカムゲインで得られる利益は大きい

複利効果を利用した長期投資では、わずかな配当利回りの違いでも、投資期間全体で見ると大きな差が生まれます。

また、配当目的の投資家に長期保有されやすい銘柄は、値崩れしにくい傾向があります。売却時の株価が購入時の株価を上回っていた場合、売却すればキャピタルゲインも得られるため、数年に渡ってインカムゲインを得たうえでさらに売却益を上乗せできる可能性があります。

高配当銘柄の水準は4%

一般的に、配当利回りが4%を超える銘柄は、配当利回りが高い銘柄と判断していいでしょう。ただし配当金は、企業の業績に応じて増減する可能性があります。配当利回りだけに注目して銘柄を選ぶのではなく、減配・無配リスクにも目を向けることが大切です。

また、後述するように、配当利回りが高すぎる銘柄には注意が必要です。株式市場の平均配当利回りからあまりにもかけ離れている場合の購入は、慎重に検討する必要があります。

配当利回りが高い傾向の銘柄は?

収益の安定した「ディフェンシブ株」は、配当利回りが高い傾向があります。

ディフェンシブ株とは、生活必需品やインフラなど、景気に左右されにくい産業の株式です。成熟産業の銘柄が多く、株価が安定しています。成熟産業の企業の中には、大規模な設備投資等の必要がない企業も多く、収益を配当金として株主に還元する傾向があります。

株価自体の急激な上昇こそ期待できませんが、インカムゲインを求める投資には適した銘柄といえるでしょう。

国内企業の配当利回り水準

購入する株の利回りとの比較対象となるのが、国内の主要な株価指数ごとの平均利回りです。

国内の主要な株価指数を紹介

国内の主要な株価指数の特徴は、下記の通りです。

・日経平均

日本を代表する225社の株価を平均したものです。東証一部上場企業の中から、業種のバランスを考慮して選ばれています。この指標の動向を見ることで、日本の株式市場全体の大まかな動きを把握できます。

・JPX日経400

「投資家にとって魅力的な400社」から構成される指数です。経営スタンスなどのグローバルな投資基準を満たす銘柄で構成されています。

・日経300

東証1部上場銘柄の主要300銘柄が組み込まれた指数です。市場の状況を的確に反映させるために、少ない銘柄数に絞られています。銘柄は時価総額の大きさを基準に選定されています。

・TOPIX東証一部全銘柄

東証市場第一部に上場しているすべての銘柄を対象とする株価指数です。毎日の時価総額と基準日の時価総額を比較することで算出されます。

・東証二部株価指数

東証市場第二部に上場しているすべての銘柄を対象に、TOPIXと同様の方式で算出された指数です。

・ジャスダック・インデックス

ジャスダック市場に上場している全銘柄を対象とする指数です。

主要株価指数の平均配当利回りは?

2020年12月16日に日経新聞が公表したデータによると、各指数の平均配当利回りは下記の通りです。

▽国内の主要株価指数と平均配当利回り
株価指標 平均配当利回り率
日経平均 1.91%
JPX日経400 1.54%
日経300 1.78%
東証1部全銘柄(加重) 2.14%
東証2部全銘柄(加重) 1.58%
ジャスダック(加重) 1.33%

各銘柄の利回りを評価する際には、上記の平均値が目安になるでしょう。

配当利回りを求めて投資をする際の注意点

配当利回りが高い銘柄が有利とはいえ、利回りには根拠があります。銘柄を選ぶ際には、利回りの数字の根拠を必ず確認してください

配当利回りが高すぎる場合

配当利回りが高い銘柄は、一見すると好条件に見えるため、投資家の注目を集めます。しかし、高い配当利回りの要因が、株価の下落を受けて、購入を誘引するために配当を高くしているケースがあります。

業績悪化や不祥事など、不安材料によって、株価が下がっている場合は、購入後に株価急落や低迷の可能性があり、購入にはリスクがともないます。また株価に対して配当を出しすぎている企業は、減配や倒産の恐れもあります。

今後、どこまで株価が下がるか予測がつきにくい局面では、購入を控えておくことをおすすめします。

また、企業の業績が予想を下回る場合には、期中であっても配当金が減額される可能性があります。年間配当金の予想値と異なる結果となるケースもあり、そのリスクを組み込んだ運用計画を立てることで、長期的な投資が可能になります。

財務体質のチェック

配当利回りが一定であれば、銘柄の保有期間が長いほど複利効果も大きくなりますが、その銘柄が配当利回りを維持できるかどうかは企業の経営状況しだいです。財務体質をしっかりチェックすることで、減配や無配となるリスクを小さくすることが重要です。

企業の財務体質は、財務数値で知ることができます。配当利回りが高い銘柄で、財務数値に以下のような特色があるものは、減配リスクが低い傾向があります。

  • 時価総額が大きい
  • 自己資本比率が高い
  • 流動比率が高い
  • 売上総利益率が高い
  • 経常利益率が高い

ネット証券などの「スクリーニング機能」を使えば、たとえば「配当利回り●%以上」「時価総額●万円以上」など複数条件の掛け合わせで銘柄を検索できるため、投資先選びを効率よく行うことができます。

まとめ:配当利回り投資で資産をゆっくり着実に増やしていこう

配当利回りを狙う投資は、時間をかけて堅実に資産を増やすのに適した手法です。配当金の再投資による複利効果を活用すれば、資産をさらに大きくすることも可能です。

ただし配当利回りは、高ければ高いほどいいわけではありません。安定して資産を増やし続けるには、減配リスクや無配リスクに備える必要があります。スクリーニング機能などのツールを有効活用し、企業の財務体質を常にチェックすることが重要です。

文・緒川 棗

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